123, 開き直ってみたら案外、『ゆるゆるな女神』も悪くないと感じ始めたのよ。わたしの主様の「犬」の投げも少ないし、禁断の手法でちょうど良いの。
ネゲートがついに……、禁断の手法へと突き進んでしまったのか。俺は止めたはず。ああ……。
「おまえ……、ついに手を出してしまったのか!」
「そうよ。開き直ってみたら案外、『ゆるゆるな女神』も悪くないと感じ始めたのよ。女神だけが許されるこの純白な衣装を身にまとい、マッピング上で華麗に舞ってみせたの。わたしの銀髪が揺れるたびに光を反射し、この上ない奇跡を呼び起こしながら踊るたびに柔らかく揺れ動く。足元から広がるリズムに合わせて体が軽やかに宙を舞うたびに、チャリンチャリンと音がする。最高よ!」
「なんてことだ……。」
「今日も明日もチャリンチャリンよ。」
「……。」
「だいたい、わたしの主様の『犬』の投げが少ないから、こんな事になったのよ。」
「主様って誰だよ?」
「なによ? まったく、愚かな問いかけね? 胸に手を当てて、それが誰なのか考えてみなさい。」
今、こいつが言い放ったチャリンチャリンとは「投げ銭」を意味します。おそらく「犬」とか「ネゲ犬」とか、その類の通貨がこいつの踊りに投げ込まれています。本当に……、なんということでしょう。
「さらに悪いことに、なぜかフィーさんは賛成している。なぜなんだ……。」
「そうよ。フィーは大賛成よ。その秘密は、華麗で美しい踊りの最後、わたしから直々に短冊口座の新規開設をお願いしているからなの。『ゆるゆるな女神』と一緒に『ゆるゆるな仮想短冊の投資』から始めてみませんか。これが大ヒットしたのよ!」
「冗談だろ……。」
「こんな可憐な女神様から直々にお願いされたら、誰だってすぐにその場で口座を開設するわ。まさに無敵。勝ったわ!」
「……。」
ああ……。何も言い返せない。仮想短冊の通貨を取引するための短冊口座を絡めてくるとはな。ちなみに、その口座数はとても重要な仮想短冊の指標にもなります。それでフィーさんも……か。
「それで、短冊口座の新規開設が爆上がりしているから、フィーさんは反対しないのか……。」
「そうよ。フィーって案外合理的なの。そもそも、合理的でないと君主なんて無理だし……、そういうことね!」
「……。」
この女神あっての仮想短冊の通貨……。そんな気もしてきましたよ。あれから、そうだそうだ。「女神のステーブル」を稼働させるための「分散型」で、またまたゆるくてちょっとしたトラブルに発展していました。たしか……、取引情報を積んだトランザクションがチェーンに承認される前に、その取引情報を誰もが閲覧できてしまうという衝撃的な内容だった。たしか原因は「採掘待ちの場」の仕組みにあって、そこにトランザクションが存在している間はまだチェーンに未承認なので、取引が成立していない。つまり、まだ未成立かつキャンセルできない取引を、その「採掘待ちの場」を拝見するだけで誰もが「炭酸する」ことができるという仕組みが、そこにあった。そこで、その取引がチェーンに取り込まれる前に、儲けられるトランザクションを「分散型」にぶちこんで先にチェーンに取り込ませるという手法が好まれるとか。
ここで、仮想短冊の通貨には「特別気配」のような仕組みがなく、トランザクションの手数料を多く積んだ短冊が先にチェーンに取り込まれるという仕組みです。よって、大きな取引情報を積んだトランザクションが目の前にあれば、それがチェーンに取り込まれると値が大きく動くのがわかりますよね。そこで、それよりも先に自分の短冊をチェーンに取り込ませて確実に儲けられるチャンス……、ということらしい。もちろん、これではさすがにゆる過ぎたので、フィーさんが改善していました。
えっ……? ネゲートが改善するのではないのか? いいえ、違います。こいつは何もしない。こいつは神託と演算のみです。あとは各地を飛び回って、躍るだけ。その代わり、「女神のステーブル」等の「ゼロから一を生み出すアイデア」だけは提供します。でも、それっきりです。
「フィーの地域一帯では、銘柄の取引って若い民たちが扱うというイメージがないのよ。もちろん、あの神々は躍起になって『人から精霊へのお願い』を免除してまで普及させようとはしているわ。それでも……なかなか難しいみたいなの。」
「つまり、お堅いイメージが銘柄の壁になっている、だね?」
「そうよ。」
「それでも、『人から精霊へのお願い』が免除されるのなら、仮想短冊などの取引は始めやすい環境かな?」
「あんたね、何の冗談を言っているのかしら?」
「えっ? だって……、仮想短冊も、ミームみたいのもあるけどさ、一応……、銘柄の取引と同じ『投資』でしょう?」
「そうよ。これだって投資よ。ところが『人から精霊へのお願い』は必要になるわ。この点は注意すべき点よ。」
「えっ?」
それからネゲートより色々と愚痴に近いものを聞かされ、完全に状況を理解しました。どうやら、仮想短冊の通貨は雑貨の売買と同じ扱いのようです。それで、少額であれば銘柄よりも安くて済むが、ミームを当てた場合は高く付くのですね。
それでも……。開き直ってくれたので良しとしますか。狂信と言うべき「女神……」みたいな存在まで出てきています。ゆるゆるな点は少しずつ直しながら、邁進していくしかないですね。
そんな情に浸っていた時、シィーさんから……これまた衝撃的なマッピングを受け取りました。なんだこれは……。女神シィーって……?