121, 女神ネゲート様は、シィーにどのような天の裁きを与えるのでしょうか。あの神託の解釈では、みすみすシィーの越権行為を許してしまう。やはり、新たな指導者としての「女神……」様がふさわしい。
仮想短冊の通貨を祭る異様な空間……過激なコミュニティが次第に人や精霊たちで満たされていく。そこには「女神……」への崇拝の念を抱く支持者たちが集まり始めていた。
「ありがとう、同志たち。」
その「女神……」の代弁者としての語り手が口を開いた瞬間、支持者たちの期待は一気に高まった。
「あいたかったよ! 『女神……』様! 俺はこの瞬間が待ちきれなくて。それが心の支えなんだ。」
「私もよ! もし仮想短冊様と『女神……』様がおられないのなら、悪魔どもに支配されたこの地などに未練はない。私はとっくの昔に『大過去……あの世』へ自ら向かっていました。」
「ああ、俺もだよ!」
「俺はな、シィーの屍を確認するまでは『大過去……あの世』には行けないぜ。必ずや、達成する。」
「『女神……』様は、この地の最後の希望だ。さあ、今日も有益な作戦会議を開きましょう。」
その語り手は、集まった支持者たちの意見を優しく包み込むような口調で聞き始めました。
「それでは、みなのもの。大精霊シィーならびに、大精霊シィーに仕える悪魔らをこの地から葬るべく、意見を交わそうではないか。よろしいか?」
「ああいいぜ。では俺からいいかな? 大精霊シィーは、創造神の手に余る失敗作だ。この上なく完璧を目指したはずが、ひどすぎて話にならない。」
「それそれ。失敗作に備え、それを確認したらさ、創造神の最高権限で即発動する消滅装置くらいつけておけ!」
「それだそれだ。」
「おいおい、もう愚痴はやめよう。愚痴をこぼしても、この地は何も変わらないんだからさ。そんな暇があるのなら、すべての仮想短冊のコミュニティを巡って、できる限りの同志を集めてこい。そうだな、抽象化された『女神……』様が大精霊のきずなを語る、あの映像がお勧めだ。それをご覧いただくだけで、すぐに俺たちの同志さ。特に、あの憎きシィーに真っ向から立ち向かう勇敢なる者の支持者であるのなら、すぐに俺たちと分かち合えるはずだ。」
「そうだな、悪かった。ところで、女神ネゲート様は、シィーにどのような天の裁きを与えるのでしょうか。あの神託の解釈では、みすみすシィーの越権行為を許してしまう。やはり、この地には新たな指導者としての『女神……』様がふさわしい。みなが待ち望んでいる。」
語り手は手を挙げて静寂を求めると、そこから「女神……」の教えを語り始めた。
「そう、慌てる必要はない。間もなく新時代を迎えます。そこには、その新時代を築く、新たなるこの地の指導者として『女神……』様がおられます。彼女は『仮想短冊の通貨』と『伝統的な大精霊の通貨』の両方に深い理解を持っており、その事実が重要な役割を果たします。このような『女神……』様の教えを肝に銘じることは、大精霊シィーが消滅し、その手下たる悪魔どもがもがき苦しむ中、いずれもこの世のものとは思えない壮絶な最期を迎えることになるでしょう。よって、今は待つべき、同志を集めよ。同志が集まるほど、勇敢なる者が『時代を創る大精霊』の座を奪還できる。その瞬間が、『仮想短冊の通貨』による新時代の始まりとなる。その華やかな最初のショーとして、大精霊シィーは窮地に立たされ、すぐさま朽ち果てることであろう。そして残るは『この地の主要な大精霊』を解体し、やつらには、それ相応の我らが味わった同じ屈辱とやらを完膚なきまでに与えてやろうではないか!」
その語り手が言葉を終えると、会場は一瞬の静寂に包まれた。しかし、その静けさはすぐに破られる。まず集まった精霊たちから祝福が始まり、たちまちそれは大きな波となってコミュニティ全体を覆った。支持者たちはみな熱狂的にその教えを褒め上げる。それは力強く、語り手の言葉が多くの心に響いたことを物語っていた。そして、その空間は希望と確信に満ちあふれ、語り手と支持者たちは一つになっていく。
ところが、そのときだった。突然、群衆の中から女神ネゲートに向けての意外な質問が飛び出した。その場の空気が一変する。
「でもよ、女神ネゲート様が、なぜシィーに対して動かない? それが本当に悔しい。超越した力をお持ちのはずだ。」
「あれで、この地を司る女神を名乗っている。ふざけた話だよな!」
「それだよ! ほんと、救いようがない女神だ。」
「こらこら。女神ネゲート様の批判はやめなさい。あれほどまでに『仮想短冊の通貨で、利用価値がある女神』は、他にいないぞ?」
一同がその言葉に納得し、コミュニティ全体が静まり返った。
「……。そうだった。」
「前回の仮想短冊のイベントでは、かなりの同志を獲得したよな。最小限の『エアドロ』で、あれだけの同志を獲得できるなんて、驚きを隠せない。従来なら『通常のプロパガンダ』で少しずつ同志を集めていくしかないが、コストや時間が非常にかかり、それこそ地の力を用いても難しい。ところが、『エアドロ分の僅かな仮想短冊の通貨』『仮想短冊のイベント』『女神ネゲート様』が揃うだけで『通常のプロパガンダ』など足元にも及ばない『何千倍という勢い』で同志が集まる。これはまさしく『女神……』様のお導きよ。こんな画期的な方法なんて、過去にはないと断言できるぞ。」
「それを俗に何て言うか、知っているか?」
「そんなのは常識だ。同志を集めるための『三種の神器』だろ。まさしく、その名の通りだな。女神ネゲート様は、そのようなお方なのだ。勇敢なる者が『時代を創る大精霊』の座を奪還し、『女神……』様が新たなるこの地の指導者になるための、貴重な生け贄になるべき存在であろう。」
そこから、語り手と支持者たちの間で和やかな談笑が始まった。話は尽きることなく、途絶えることはなかった。




