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11, あの犬やブロックは、止められない、のか?

 魔の者たちより散々な評価を受け続けている、この地の神々やらは、どこで何をしているのだろうか。……、今日も一人、深々と頭を下げておりました。いつもの日常、何よりでございます。


「このような処遇……、私のようなものに、このような最高な機会を授けてくださり……。」

「もうよいぞ。よろしい、頭を上げよ。」


 厳粛な雰囲気の中、それでも深々と頭を下げ、身動き一つすらしない。


「……。ほほう。なるほど。何か、頼みたいのだな? よかろう。申してみよ?」


 頭を下げたまま、そのまま、ひざまずく。


「一つ、ございます。まず理由から述べます。調査によりますと、我らのしもべとなるべき存在……『精霊』の一部が、こともあろうに、魔の側につくという事例が報告されております。我らへの抗議のつもりなのか、反抗したつもりなのかは存じ上げませんが……、注視していました。次に、要望です。このような反抗は一切認められません。注視の結果、すぐに処分すべきという結論に至ります。しかし、相手は民ではなく精霊です。力ずくとなると、それ相応の予算が必要となりますので、なにとぞ、ご考慮いただけますと幸いでございます。」

「民ではなく、精霊か。今、天の使いがおれば、考える間もなく処分できたのだが、残念だな。」

「現在、天は魔の者が仕切っております。なぜあのような者たちに……とても残念でなりません。」

「あれは仕方がない事情というものだ。ほら、いつも同じ時の流れでは暇だろ? 我が、遊び心で、民の『間引き』をしてみたら、ついついやり過ぎて制御不能になってのう、民からの信仰心が失われる前に、魔に全責任をなすりつけて、一時的に天から身を引いただけだ。」

「そのようなご事情が……。大変、し、失礼しました! なんという不躾なことを……。」

「ほほう。別に気にすることはない。なぜなら、この状況も楽しんでいるのだからな。これは、そう……、我らに対するご褒美、数百年に一度の祝祭だな。」

「ありがたき、幸せでございます。学びの少ない私のような者にまで、手を差し伸べてくださる、民から寵愛されるべき、雲の上の存在です。」

「……。そなたのその忠誠心、誠に見事なり。惚れ惚れとしてしまう。天については、そのうち、魔を壊滅させて取り戻すから安心しなさい。我らが持つ高潔の鉄槌は、どんな障壁でも打ち砕く。基本的な理論を遂行するだけだ。」

「天については、魔の者が仕切っている点は残念ですが、天の使いを除けば、ただのお飾りなことも事実です。民の信仰心は今でも余裕に我らにありますし、あの魔の者……、なぜか天を取ったにも関わらず、活動すらしないみたいで、さすがは、クズの寄せ集め、魔の者です。」

「ほほう。魔には『なすりつけ先』という、素晴らしき利用価値はあるのだから、そういう呼び方は感心しないのう。我らすら頭が下がる創造の神は、みな平等に役割の機会をくださる。」

「……。失礼いたしました。」

「もちろん、クズ自体は存在する。たしか……我が、天を一時的に去る直前だったか、ご提案だか何だか知らないが『確率』にやたらとこだわっていた者がいた。あれこそが……クズだ。我らが絶対、そう、すべて、だ。我らに確率など存在しないのだからな! あの瞬間だけは虫唾が走った。」

「提案だなんて……。そのような信じがたいクズ、本当に実在するのですね。勉強になります。」


 それから、なごやかに話が進み、例の精霊の件に関する予算の割り当てが……なんとまあ、この瞬間……で決定いたしました。


「まさか、瞬時に、ご予算の割り当てが決まってしまうとは……。」

「特段、気にすることはない。余っていた分を割り当てただけだ。」

「ああ……、ありがとうございます。」

「たしか、そうだった。あれは余ってしまってもしょうがないという予算だった。そうそう、民の食糧事情を大幅に改善するため、だったな。」

「えっ! そっ! それは確か……」


 ついうっかり、下げていた頭を上げてしまい、言葉を詰まらせる。


「おや? 心当たりでもあるのかな?」

「あっ、いえ、それはその……。」

「たしか、そうそう、調べたらだったな。あんな巨額を投入しなくても、特に深刻な状況ではなく、途中で引き上げる形となって『余った予算』だった。そして、一度組まれたものは、戻すことはできないから、こういう形で活用する。そういう習わしなのは、承知だろう。当然ながら、民は心から感謝していたぞ。」

「か、感謝ですか……?」

「おや? どうされた? ああ、そうか。そういうことか。我が、先ほど意気揚々と述べた民の『間引き』の詳細が、気になるのだな? 気になるのなら、その詳細を話してやってもいいぞ。ただし、よほど精神面に自信がないと、すぐに卒倒するかもしれないぞ。それなりの覚悟が必要だぞ?」

「す、すみませんっ! 私のような学びの少ない者には、間違いなく耐えらえません。」

「……。よかろう。ところで、我の予算を受け賜わる方法については、当然、熟知しているな?」

「……。当然でございます。それが行使できないのなら、この場におりません。」

「何の迷いもなく、その解を述べるとは。では、我に忠誠を尽くす良きはからいの精霊たちが、空腹に耐えかねて可愛い口を開けて待機しているから、そこからの『取引』をよろしく頼む。」

「ありがたき幸せ……、必ず、成功させます。」


 そうつぶやくと、ペンと紙をポケットから取り出して、その場で予算配分の計算を始めました。


「さすがだな。ところで、その紙は、この後、確実に処分するもの、だな?」

「当然でございます。それどころか、この部屋からも出しません。ここの数値をご確認いただき次第、すべてを私の頭の中に瞬時に叩き込んで、この場で、しっかり処分いたします。なおさら、この処分のためといっても過言ではないでしょう……、例の、強固な破壊に関する手法です。あのような仕組みは、このような状況下に最適ですね。」

「……。実に頼もしい。ただし! 一部の信じがたい管理者についてだが……、外に漏れ出さないように強固に縛ったにも関わらず……、なんとそれが確実ではなく、一部がはみ出て大変なことになったらしい。そんなことは、絶対にないな? そんなのが『頭のおかしな妖精』に漏れたりしたら、我すら無傷ではいられないからな?」

「そのはみ出しの件、十分に承知しております。もともと、安全性が期待できない管理者に、大切な情報は任せません。だいたい、心臓部にそのような脆弱が放置されていること自体が問題ですので。そういう事情もありまして……、本当に重要な場面では、その手法すら信用はしません。私は、これらを好んで使います。」


 うっすらと笑みを浮かべ、そして誇らしげに、ペンを回して、それをアピールする。


「なるほど。ペンと紙なら、問題ない。すばらしい。」

「ありがとうございます。紙と記憶の組み合わせが、最強の秘密保持を生み出します。」

「完璧な手法だな。そして、その美しき過程を終えたら、今日は……そうだな。海の幸をふんだんに使った創作料理と、わざわざ酒専用に栽培された穀物を利用して作られた美酒でも、思う存分、ふるまおうではないか!」

「ありがとう……ございます。」

「おや? どうされた? ……、新鮮で甘酸っぱい果実も、ついでにいくか?」

「あっ、いえっ!」

「……。ここで一つだけ、今後を左右するかもしれない、重大な確認事項がある。」

「そ、それは……、どのような内容でしょうか?」


 ここまで、滞りなく話が流れていたので、ずっしりとくる唐突のこの提案に、少々尻込みする。


「たしか、妹だったか……、あの黒髪の?」

「あっ、それはミィーのことでしょうか? ……?」

「そうだ。その者……、『例の犬』に手を出しているという噂があってな、一応の確認だ。」

「例の犬って……。ブロックと呼ばれるものに価値を埋め込んで、それを流通させ、一定の価値を大多数で保持させるという、なぜそんなものが動いてしまっているのか、と、噂されるものですよね?」

「……。はじめはどこかの『精霊』どもが、興味本位でやり始めたらしいな。まったくもって、嘆かわしい。最も言うべき特色については、この犬には、秘密保持という概念がまったくない! まさか、すべての取引内容を公開だと? これだからな……、元々、精霊は信用できないんだ。この際、我らに対して忠誠心が高い精霊以外は、すべて切ってしまおうか。」

「……。魔の者につく精霊もいるくらいですからね。ただ、それなりの数の精霊を味方に付けませんと、ご予算の行使が……。」

「ははっ! そうだったな。それは困る。とても困る。非常に困る。まったくもって困る。」

「うまくやりますので、ご安心ください。精霊関連は、ぜひ、お任せください。」

「もちろん、信用しているぞ。だからこそ、そのミィーについて、吉報を待っているぞ。」

「……。犬の件ですね。」

「これは正直な話なのだが……、あの犬やブロックは、止められない、のか?」

「……。それは難しいと思います。実は……私も、その犬についてかなり調べております。何やら、精霊たちで生み出しておきながら、すでに精霊自身でも制御できない状況になっているとか……。」

「……。なんとも無責任な……。迷惑、極まりないな。」

「こうなった以上、この犬と、付き合っていくしかないですね。」

「いや、できる限りの排除が必要だと考えている。そうだな、ミィーとやら……その『腐りきった犬』に今でも染まっているようなら、そろそろ『間引き』が必要になってくる時期だ。どうだ?」

「ま、間引き!?」


 身の毛がよだつ提案に、全身の力が抜け落ちる。


「どうされた? 何を動揺している? これは忠誠を示すのに最適だと考えないのか? 我にとって、最高の忠誠になるぞ? 我も、そこまで示せるのなら、相応なものを贈ろうではないか。」

「いや……。」

「これは、この先、間違いなく訪れない最高の機会だぞ? これを逃す選択肢は、考えらえないぞ。何を迷っておられる?」

「ここでの間引きというのは……、コミットなんとか……ではないですよね?」

「なるほど。迷われているのか。ただ、意図は理解できているようだな。」

「すみません……。」

「まあ、落ち着け。それは、あくまで今もなお、犬に染まっている場合だ! すでに足を洗っているのなら、無問題だ。我は、過去については問わん。安心しなさい。」

「あっ、ありがとうございます! では、配分が決まり次第、今日は失礼いたします。」


 万一、犬に染まっているようなら、すぐにでもやめさせないと! 焦りから、その気持ちが先行してしまい、足早に去ろうとしていた……。


「そうか。それなら……、本来は持ち出しが禁じられているが、今日は特別に許す。ふるまう予定だった美味なもの、すべて持っていけ。」

「……。よいのですか?」

「もちろん。そして、ミィーを思う存分、楽しませてやれ。そしてそれが、最後の……にならないことを祈る。我々にも慈悲はある、そこは留意せよ。」


 最後の……、この言葉で、何かが吹っ切れた。


 なぜこうなった? ここは一旦、落ち着くんだ。たしかにミィーは、価値のある例の犬に興味を示していた。しかし、手は出していないだろう。これは、決まった訳ではない。まだ未確定だ。そう、未確定。


 だいたい、フィーという者が悪い、いや、悪すぎるだろ。あんな者を拝め初めてから、ミィーはおかしくなった。私だってさ、このような神々の相手は、本当に、本当に疲れているんだ。それでも、ここで頑張らないと、いよいよ餓死者すら出しかねない緊急事態なのは、十分に掌握している。厳しい状況だが、何とか、切り抜けてみせる。

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