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117, 私に女神の力は宿っていない。そこで、「大精霊の推論」による叡智で、私は女神になる。そうなったときあなたは、私と「ゆるゆるな女神」、どちらを信じる? それこそが人生の選択よ。

 今ね、私は大精霊シィーとして「買いの容認」にじっと耐えているのよ。でもね、私の政敵からこれ以上の「買いの容認」は地獄をみるだろうと脅されているのよ。ひどい話よね。私の優秀な頼れる精霊から「売り売り」を再開するにはインフレ率の観点からまだまだ早く、今は耐えるべきと論理的な観点から止められて、それに素直に従っているだけなのにね。私の政敵は、そんなことなどお構いなし。ほんと、困ってしまいますわ。まあ、あんなのに高度な論理なんてもったいないわね。


 さてさて、女神となる私の話を聞いて聞いて。何? あなたが女神って? 勝手に決めるなって? もう……創造神様ったら。そのような経緯に至った理由をご説明いたしますわ。


 実は、この地に「ゆるゆるな女神」が現れたのよ。それはそれはひどい有様で、「ゆるゆるな女神」を崇める信徒も、これまたひどいのばかり。そう、その信徒とは……、あいつらよ、あいつら! いったい何なのかしらね? 「ゆるゆるな女神」の信徒に堕ちたあいつらは、この地の将来を担う大切な若い民たちを、あの手この手で積極的に勧誘し、「ゆるゆるな女神」の勢力側に取り込んでいるのよ。その勧誘の仕方は、背筋が凍る独特なやり方。まず……訪れただけなのに「仮想短冊の通貨」を掴まされていた。あいつらはそれを「エアドロ」と叫んでいたわ。そんな勧誘のやり方なんて、果たして認められるのかしら? マッピングや街中で、そのような強引な勧誘を繰り返しているなんて、今すぐにでもやめてもらいたいわ! 次に……、「ミーム」と呼ばれているものがあるのよ。何が「ミーム」よ、もはや無茶苦茶よ。これらは本当に「大過去」から映し出された現実なの? 狂気に満ちているわよ!


 さらには、最近になってまた「ゆるゆるな女神」の信徒がおかしな行動に出始めたの。そうそう、あいつらがおかしな行動を取った所で、それらが「ゆるゆるな女神」の信徒と判明した地点で不思議と納得してしまう状況ゆえに、すでにどーでもいいけどね。


 その内容とは、えーと、「非局所性の確率」により得られたハッシュを「非代替性」に変換した女神の啓示と呼ばれる特殊なシーケンスに、とある高度な言語を結び付けたという、よくわからないものに高い価値を付与した新しい概念なのよ。この新しい仕組みにより、自慢だけではなく実利にもなるらしいわ。ねえ、すでによくわからないでしょう? もちろん、気にしないで。こんな概念、わからなくて正常よ。それこそ、「ゆるゆるな女神」の信仰者にしかわからない不思議な概念。信仰心が試されるとは、よく言ったものだわ。ところでもし、この概念が具体的なイメージとして瞬時に頭の中へ描けたのなら、あなたにはあいつらの才覚があるから、今すぐにでも「ゆるゆるな女神」に入信すべきね。なぜなら、あなたには司祭としての資質があるからよ!


 あーやだやだ。あいつらって、私に対して「また不換な通貨を刷る」「次の売り売りで資本主義が完全崩壊」「きずなの利率が噴火直前」「インフレを取った愚かで……な大精霊の通貨と、デフレを取った優秀な仮想短冊の通貨」などの数々の罵倒で、私の嫌がることばかりを毎日仕掛けてくるのよ。慣れたとはいえ、やっぱりショックよ……。もう、「ゆるゆるな女神」は、かわいい信徒たちのこのような言動について、何とも思わないのかしらね? それとも、そのような狂った者ばかりが集まってしまったの? そーではなく、そうでしたわ。あんなのを信仰するなんて、狂っていないと無理。そうよね?


 それでね創造神様、ここからが絶望な展開なの。なんと、私の政敵が「ゆるゆるな女神」の信徒だった。信じられる? 私の政敵は一応「時代を創る大精霊」の候補で、民に選ばれたのなら、この地を動かせる立場にもなるのよ? それがあんな女神の信徒。情けないわよ、もう……。それで、私に冷たい態度を取るのね。あれは……、一度でも信仰してしまうと、そう簡単には抜け出せそうにない。とっても残念でなりませんわ。ただ……あいつらと同じで「きずなは償還不能になった方がいい」とか、平気な顔で演説するのよ? 狂ってる。狂ってるわ……。あの女神の信徒は、みな狂ってる。おかしいわ!


 しかし、そんな私も数か月前に「ゆるゆるな女神」の奇跡と信徒が叫ぶ「仮想短冊の通貨」という概念をなぜか承認したわ。なぜだろう。本当にわからない。それでも、私のきずなの利率を何とかしてくれるらしいのよ。しかし……、あの「ゆるゆるな女神」に、本当にそんな奇跡が起こせるのかしら? このわずか数か月ですでに懐疑的になっている私の頼れる精霊たち。私の「売り売り」の観測という「マジックショー」の方が高い効果を得られていた気がするのよ。


 さてさて、そのような事情を考慮し、私はさらに「大精霊の推論……限界突破した深層学習の究極版」について承認したわ。これは、過去最大級の財を投入した、かつてない規模の推論になる見通しよ。これで、「ゆるゆるな女神」に何かあっても大丈夫。その「ゆるゆるな女神」の代わりとして、この「大精霊の推論」が奇跡を起こしながら、この地を支えていくのよ。そのようなニュアンスから、「ゆるゆるな女神」にちなんだ名を付与したのよ。その名は……。


 その美しい「万能」となった推論によって奏でられるこの地で、私は女神になるのよ。私の優秀な頼れる精霊も納得の出来に仕上がる見通しで、推論によって「強くて当たり前」の概念を継承するのよ。


 本当は「量子ビット」がもっとしっかりしていたのなら、こんな事態には……。でも、その挽回として「大精霊の推論」に至った。当然、「ゆるゆるな女神」の奇跡について、しっかり調査させていただくわ。


 以上が、私が女神になると決めた論拠。こんな状況、放置しておけないわ! えっ? ……。そうよ、私に女神の力は宿っていない。でも、大丈夫。女神になれる。なぜなら、女神の力の代わりになるものが、この「万能」と化した「大精霊の推論」よ。本来なら次の次くらいの時代に出す見通しだった究極の推論だった。でも、今は緊急事態。「ゆるゆるな女神」がどうなるのかわからない以上、この時代に迎えられることになった。ただ、それだけのことよ。


 さーて、今日も爽やかなスタート。大精霊としての職務を全うするわ。私は、強くて当たり前の概念の上に立つ「時代を創る大精霊」……今は絶好調よ! それでは、またの機会よ、創造神様!


「大精霊シィー様、ご機嫌麗しゅうございます。『精霊の推論』による仮想短冊への調査は順調に進んでおります。」

「あなたって、多才よね。『量子ビット』から『マジシャン』に転身して、それからすぐに『精霊の推論』にジョブチェンジしてしまうなんて。全ての職を極めるおつもりなのかしら?」

「麗しき大精霊シィー様から、そのようなお褒めのお言葉、身に余る思いで存じます。」

「市場の精霊も驚いていたわよ。あなたの『マジックショー』。あれだけは、専門の私にも無理だって。ほんと、すごいわ。」

「大精霊シィー様。私は『量子ビット』で革新的な知見を得られなかったという大きなミスを犯しました。その場で断罪されても不思議ではない大きな失態でした。それでも大精霊シィー様は、その寛大なお心により、そのような私に挽回の機会を賜れました。それだけでも、涙が溢れる思いでございます。」


 私の頼れる精霊はすごいのよ! それらを真っ当に相手にできるのは、そうね、私のかわいいフィーの頼れる精霊くらいよ。


「頼りにしているわ。」

「大精霊シィー様、ありがたき幸せに存じます。ところで大精霊シィー様、あいつらの言動についてなのですが……、よろしいでしょうか?」

「うん、話して。あいつらなんて、すでに何をしても驚かないから大丈夫よ。またマッピングで暴れたの? また『仮想短冊の通貨』が消えたの? それとも『非代替性』が消えたの? 中央な胴元に分散性をごまかされ不当に報酬を奪われたの? 非安全な検証機能を通され残高がなくなったの? 認証を壊れたことにされて残高を引き出せなくなったの? さーて、どれかしら?」


 またあいつらよ。私が承認してから、幅を利かせてきたのよ。ほんと、どうにかならないのかしら。話を伺ったところ、またよ、また。時代に逆行することはやめろとか、私を罵倒しているらしいの。私だってね、しっかり仮想短冊を管理し、預かった分を完璧に記録し、それらには手を出さず、そして奪われる心配がなく、入出に問題がないのなら、自由と楽観を標榜とする大精霊として受け入れているわ。でも、このような基本がまったく守られていない。今、この瞬間にも、必ずどこかで未使用な短冊が奪われ続けているのよ。そんな仕掛けでもあるのかしらね?


 一応、私は仮想短冊を承認したので、受理はしたわ。もう……。ちょっと疲れたので休息。ちょっとお願いしようかしら。


「ちょっとよろしいかしら?」

「さようでございますか、大精霊シィー様。」

「シィーのお願い、聞いていただけるかしら?」


 たまにはこれくらい、許されるはず。


「もちろん、何でも構いません、大精霊シィー様。」

「それでは、女神シィーと呼んでみて?」


 私……、女神への憧れがあったのよ。フィーが女神だから……。ううん。待ちきれないから、ちょっとだけ、お許しください。


「……、あ、あの……。わかりました、……。」

「それではお願い! 私が女神になった時代を想定して、お願いできる?」

「はい、それでは……。女神シィー様、ご機嫌麗しゅうございます。その凛々しくも美しいお姿に、誰もが心を惹かれる事でございます。さて女神様、『大精霊の推論』による『ゆるゆるな女神』への調査は順調に進んでおります。」


 大満足。その「女神」という美しい響きに癒される。さて、「ゆるゆるな女神様」、私はついに、あなたに本気で立ち向かうわ。よろしいかしら?


「さて、あなたはそのとき……、私と『ゆるゆるな女神』、どちらを信じる? それこそが人生の選択よ。」

「なるほど、女神シィー様。その選択を民に問うのですね?」

「そうよ。これはフィクションではない。本当の意味で、近いうち、この地で生きる民全員に問われる究極な選択になるわよ。絶対に、どちらかを選ばなくてはならない。それで人生が決まるくらいの影響がある。」


 大部分が私を選ぶことになるわ。当然よね。ここで「ゆるゆるな女神」を選ぶなんて……ね?

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