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116, この「ゆるゆるな女神様」をよーくみてみましょう。あの神託は、仮想短冊のイベントに乗せられた勢いでしょう。でもそれが、俺がこいつの担い手としてこの地に呼び出された真の理由ですよ。

 重たい空気が漂う中、新たな推論が静かに開かれる。でもさ、そんな推論を実行するために、チェーン管理精霊だったフィーさんに「精霊の推論……限界突破した深層学習」なんて物騒な機構を許可させ、こんなタイミングで持ち出してくるなんてさ。俺が思うに「地のチェーンの件」以外に、本当の目的が見え隠れしている、そんな気もしてきました。


 そう解釈すると……そうだよ。妙にネゲートを護るかのような、先ほどのあの仕草すら……つまりあれらは巧妙な演技で、俺を信用させるために、かな? 実は、ネゲートの神託に対して「何であのようなものを……」など、不満を漏らしていた者が政にいたのを目撃していますからね。


「さて、女神ネゲート様、そして女神の担い手様。次の推論でございます。」

「なるほど。まだまだ直すべき箇所が存在するということですね?」

「さようでございます、女神の担い手様。」

「もう……。それはまた、チェーンのコアかしら?」

「さようでございます、女神ネゲート様。ところで女神様、『ワークアラウンド・オペレーションコード・ゼロ』をご存知でしょうか?」

「……。うん、もちろん知っているわよ。」

「なんだそれは……。『シグハッシュオール』よりも長いぞ……。それは、何かの作戦名かい?」

「あんたね……。『ワークアラウンド』よ? これには回避策というニュアンスがあるのよ。」

「回避策? ああ、そういうことか。つまり、何かしらの障壁を回避するための策が講じてあるということか。」

「そうよ。」

「でも……そのワークアラウンドな検証機構については、線形性を活用した新しい検証機構へとすでに交代したはずなの。それでも、何かあるのかしらね?」

「それがあるのでございます、女神ネゲート様。まず彼らは、線形性を活用した新しい検証機構へと交代させていました。しかしながら、そのワークアラウンドな検証機構は依然として有効です。なぜなら、その検証を必要とする『古い未使用な短冊』がチェーン上に存在するためです。つまり、新しい検証機構で『古い未使用な短冊』のトランザクションを検証することができないのでございます。古い短冊の検証には、非線形性の古い署名を束ねるしか……他に手立てがございませんので、そのまま残してある、そのような事情のことでしょう。」

「それで……、その部分から何が起きてしまうのかしら?」

「女神ネゲート様。『ワークアラウンド・オペレーションコード・ゼロ』の原因となった可変長の仕様から、非安全な検証機構を償還経由でチェーンに承認させることができるという問題です。」

「……。そのような抜け道が、まだあるのね。 そう……。確かにそれは、厄介かも……。」

「女神ネゲート様。いかがでしょうか? 『精霊の推論』によって、多くの問題があぶり出されています。やはり、このようなチェーンの機構には問題が多いと見受けられます。そこで、ご英断が必要になるかと存じます。」


 えっ? この方は何を言い出しているんだ? 英断って……なにさ?


「……。なによ……。」

「女神ネゲート様。我らは、このような事態に備え、女神の担い手様が存在すると考えております。その担い手には、精霊ではなく、必ずヒトから選ぶこと。そのような約束事がございます。この約束事の真意はわかりかねますが、このような非常な事態に備えたことだと、堅く信じております。」


 ほう。そこで女神の担い手である俺のご登場ですか。


「女神ネゲート様であっても、女神の担い手様の『決意』に逆らうことはできません。それがこの地のルールでございます。」


 どうやら、俺の決意で、この地の運命が決まるようではないか。


「もう……そんな問題なんて、フィクションであって欲しい。」

「女神ネゲート様、しっかりと地に足をつけ、『大過去』から映し出された現実を直視してください。ここでは、そうした感情は捨てていただく必要がございます。あなたは、そのような立場なのですから。」

「……、そうね。」

「おい。おまえさ……、そんな感覚で女神をやっていたのか?」

「な、なによ急に?」

「ああ……何でもない! 何でもないさ!」

「なによ、もう!」


 ああ……。何とかと何とかは紙一重だっけ? こいつ、そのままだったよ。覚えておこう。


「女神ネゲート様。フィクションと現実は大きく異なるものです。今ここで『光円錐の中をただ駆け巡るだけの人形』となった者を思い浮かべてみましょう。」

「光円錐ですって? もう、それがどうしたのかしら?」


 光円錐の中をただ駆け巡るだけの人形って……。なんだろう。


「女神ネゲート様。その者はもともと、人や精霊を楽しませる立場の精霊様でした。その後、ある舞台で大精霊役を演じ、それを見事にこなしました。意外にもそれは、民からの厚い信頼を得ることにつながり、実際に大精霊様へと昇格することとなりました。ところが、大精霊として犯した大きな勘違い……、それは、『大過去』から映し出された現実が、舞台のように筋書き通りに進むと考えたことでした。ところがその現実は……、フィクションのように甘くはございません。」

「待ちなさい。それは、簡単な問題ではないのよ。あのシィーだって大いに裏で絡んでいるはずよ!」

「女神ネゲート様。たしかに、大精霊シィー様の謀略ではないかと囁く声もちらほら聞こえます。ところが、よく観察してみる事です。最も基底に属する概念……通貨に対する価値の出入りについて、いかがでしょう? いったい何が衝突し合って、戦禍を引き起こしているのでしょうか?」

「……。この戦禍に、シィーは『大精霊の通貨による価値』を投入し、その一方でラムダは……『仮想短冊の通貨による価値』を投入している状況になっていると強く言いたいのね?」

「さようでございます、女神ネゲート様。もちろん、その状況については憶測の域を出ません。ただしこの推測が真ならば、このままでは……どちらかの通貨が『力尽きる』まで……あの戦禍は絶対に終わりませんよ?」


 ……。なるほど。どちらかの通貨が壊れるまで、血が流れ続けるということか。


「その観察は推測であっても現実に近い感触はあるかしら? 終わると言ったのに、また、くすぶり始めてを繰り返しているのよ。よって、ラムダが人を動かし始めた件は『この地の主要な大精霊の通貨』と『仮想短冊の通貨』の戦いになっている……、そう、わたしとこいつに強く主張したい。そうよね?」

「さようでございます。女神ネゲート様、そして女神の担い手様。このまま何も手を打たなければ……もはやこの地は……。そこで、どちらの通貨をこの地に残せば良いのか。ご理解くださると存じております。」

「それで?」

「あ、あの……。女神の担い手様? いえ、失礼しました。ご決意が固まったご様子ですね?」


 ちょっと強気に出ました。そうですとも、決意が固まりましたぜ。


「あんた、ちょっと……。あの神託は、その……。でも、わたしにとって特別なものなの。だから……。」

「仮想短冊のイベントに乗せられた勢いでしょう? 俺さ、マッピング経由で観てたからね。」

「……。」

「女神の担い手様。さすがは我ら君主である大精霊フィー様の介在を務め上げるだけはございます。これで、この地は救われ……女神ネゲート様、そして女神の担い手は、その功績により安泰でございます。」


 なんだ? 俺、まだ何も言ってないぞ。あとね、俺に安泰など無用です。すべてを吹っ飛ばしたけどさ、一応、全力買いの元トレーダーですからね。安泰なんて概念は、俺は必要としません。


「安泰か。」

「……、それで、安泰になるわけがないわよ。だからお願い……、あの決断だけは……。」

「それでは、女神の担い手様。ご決断を……。」

「そうだね。まずね、いいかな? 俺みたいのが女神の担い手なんて任されたのか。それがようやくはっきりしたので嬉しいです。」

「女神の担い手様……。それは、どのような解釈で……?」

「そうですね、この『ゆるゆるな女神様』と、すべてを吹っ飛ばしてすっきりした俺でないと、この難局は乗り越えられない。そう言いたいのさ。最高の組み合わせだな。それでさ、通貨の問題がこのような状況になるのを古の時代から軽く見越して観察していたフィーさんは……どう考えても圧倒的な大精霊だよ。『大過去』から、この状況に対して最適な俺を割り当てた。そんな感じがする。そしてそれこそが、俺がこの地に呼び出された真の理由ですよ。」

「ちょっと……。その『ゆるゆるな女神』ってなによ?」

「おまえのことだよ。『ゆるゆるな女神』でないとミームの『ネゲ犬』なんて、絶対に流通しないぜ。まったく、あんなのさ、初見では誰でもフェイクだと感じるはず。まさかあんなのが資産になるなんて。ははは! 笑っちゃうよな。」

「そ、それは……。うう……。」

「女神の担い手様。あなたがまともな方で、この地は助かりました。本当に、仮想短冊のミームには手を焼いております。なぜあのようなものに価値が宿ってしまうのか……。」


 ちょっと待て。この方は今、あなたがまともな方って、言ったよな? つまり……。それって。そこで、ネゲートの様子をちらっと伺います。……、ああ……これは、本気で怒らせたようですね。


「待ちなさい! 今のはひど過ぎるわ! こいつがまともで良かったって? それってつまり、わたしは何だって言うのかしら?」


 あらら。最後に、自慢の推論に溺れてしまった、そんな感じでしょう。あのような機構を万能だと勘違いしてのめり込むと、ろくな事がありません。そうだね、これから「深層学習」などの分野に手を出すのなら、それだけはまず、覚えておいて損はないです。あれ……、俺は誰に向かって……?


「た、大変申し訳ございません、女神ネゲート様……。どうか、どうか……。」

「やめて、ふざけないで。うっかり、とんでもない概念が飛び出たようね? つまり、わたしは……、そうよね?」

「それは違いますとも、女神ネゲート様……。」

「何が違うのかしら? うっかり飛び出る言葉ってね、普段から、わたしのことを……。つまり、わたしは……、そうよね?」

「……。」


 詰め寄るネゲート。ショックは大きかったようですね。


「ネゲート、その辺にしておきな。」

「……、そうね……。」

「それでさ、ネゲート。俺は決めたんだ。」

「決めた? ……。イベントの軽い乗りで仮想短冊の神託をこの地へ下賜したことは……、反省するわ。でも、余裕に直せる範囲よ。お願い、だから……。」


 なかなか素直ではないか。よしよし。


「それでは、俺の決意を述べるぞ。つまり、女神の担い手としての決意だ。よろしいかな?」

「……。」


 固唾を呑んで俺の勇姿を見守る女神ネゲート様です。


「それでは、発表です。それは『仮想短冊を限界突破させる』です。」

「そ、それは……、お待ちください! 女神の担い手様……、それは、それは……。あんまりでは……。」

「えっ! あんた……、それって……。」

「そのまま解釈してくれ。ちなみにチェーンを直すために『女神の演算』を用いる場合、その演算には因果律がひっくり返るリスクが存在したはず。だが、その点も心配無用だ。この俺を媒介して演算すればよろしい。それなら、因果律の問題は俺自身に生じるはずで、この地の問題には干渉しない。」

「……。それはありがたいけど……、その因果律の問題は『非局所性の確率』として『大過去』に作用するのよ。つまり、あんたが生涯を終え、生まれ変わった後にも影響が出てしまう、魂への作用になるわよ? もちろん時間の概念がない『大過去』への作用だから、あんたの過去に作用することだってあるし、その場合は……今のあんたが変わってしまう。それでも……いいの?」

「それくらい、構わないさ。そのリスクを平然と取れる魂が『女神の担い手』になるのだろう。それも、十分にわかったよ。そんでもって、そんなリスクを取れるのは……俺くらいだ。」

「あんた……。」


 これは……、決まったかな。


「女神の担い手様……。お考え直しください! 我らの話を参考にしなかったのでしょうか……。」

「それね、考え過ぎ。たしかに基軸通貨の覇権争いなのかもしれないけどさ、そこはバランスを重視する必要がある。俺はこうみえても、フィーさんの優しさについては全て記憶しているんだ。その中で最も強烈なのが『仮想短冊の通貨のおかげで隷属から解放され、人並みの生活を得た地域一帯も多い』と伺った点かな。どうやら、どこかの宗主な『この地の主要な大精霊』が、その地域一帯で採掘できる高価な天然資源等を安く強奪していたようで……ね? 俺が何も知らないと考えていたのなら、それは大きな勘違いです。」

「……、女神の担い手様……。こちらとしても、このままでは……。」

「とりあえず、落ち着いてください。結局、そのような事の発端の原因は、こいつがゆるいから。そこは十分に理解しております。」

「……。えっ、何かしら? わたしが『ゆるゆるな女神』だと……? まだ訂正しないのかしら?」

「ああ。仮想短冊のイベントの神輿の上に飾り付けするにはもってこいな女神だと、彼らに見透かされているようだ。」

「うう……。」

「ほら、何も言い返せない。」

「な、なによ……。あんたまで、わたしは……、と言いたいのかしら?」

「さあね。でもさ、少しくらいはそれを言いたくなる気持ちも汲まないとね。」

「……。」

「あ、あの、女神の担い手様、それでは……。我らにも民の生活がかかっております。」

「大丈夫です、ご安心ください。俺はここでフィーさんの介在を任されていますから、政での要点は叩き込まれています。この地の覇権を握るシィーさんの通貨の価値が回復しないと、そこに随伴する他の大精霊の通貨の価値が継続して流出する、ですよね? なぜならそれらを売ってシィーさんの通貨を買いますからね。ところがシィーさんの『売り売り』の影響は凄まじく、インフレ率の影響から、そう簡単には回復など見通せない。まずは、これを何とかしたい。もちろん、シィーさんに『買いの容認』中であっても利率を上げ続けても良いのかどうかを頼み込んではいるが、一向に首を縦に振らない。一応、急激に通貨を回復させるだけの余力はあるが、どうせ回復させるのなら、売りを仕掛けている者たちを一掃したい。こんな感じかな?」

「あら、あんたも頑張っているようね。しかし、それでは甘いわ。」

「甘い?」

「そうよ。そのような事象を考えるときは、常に共役となる事象の動きを掴むべきよ。それはね、シィーはこのまま『買いの容認』を続ける。そうすれば、その随伴する通貨は軒並み暴落し、その各通貨が支配する市場の銘柄や土地、商品などがシィーの通貨によって格安に買収し放題となるのよ。そして、そうなってからではもはや手遅れ。そうよね?」


 そういうことか……。そこまで考える必要がある、ですね。


「それでね、買収完了後にシィーは『売り売り』を再開し、それこそ無価値になるまで繰り返すかもね。それで『きずな』などがどうなろうとも……自分は抜け目なく裏で用意しておいた『セントラルバンク方式の仮想短冊』に乗り換えるのよ。そこで、その信用には、大量に買収しておいた銘柄や土地などを割り当てることで成立してしまうのよ。わたしはそれを『大精霊の管理下にある仮想短冊の通貨もどき』と呼んでいるわ。今のこの地の経済を立て直すより、そちらの方が早いと判断したのなら、ためらうことなく実行に移すのが、大精霊シィーという存在よ。」


 セントラルバンク方式? そんなのまであるのか。


「……。そこまで考えられるのにさ……、仮想短冊のイベントでは、あんな感じ。ははは。」

「ねえ……、ちょっとね? わたしはこの地で女神を任されているのよ。そう、わたしは女神。みてみて。」

「だから、そうやって調子に乗らない事。それでいつも……、ね?」

「……。でも、少しくらいは許してね。」

「……、わかったよ。」

「そういうことで、わたしは『大精霊の通貨』についても、しっかり考えているのよ。よろしいかしら?」

「女神ネゲート様、そして女神の担い手様。ありがたき幸せに存じます。」

「おお、『ゆるゆるな女神』から、話がまとまってきたな。」

「なによ……。でも、どうやら、あんたがわたしの担い手だったのは、この地の定めだったようね。このわたしが落ち込むなんて、あり得ない。『仮想短冊の限界突破』、さっそく始めましょう。いよいよ、わたしが女神としての実力を大いに発揮できる時代に突入よ。どうせ、わたしは……なのだから、その分、大いに暴れてやるわ!」


 わたしは……、か。まだ怒っているようですね。


「でもさ、シィーさんは『売り売り』をやめられない。インフレを気にかけたシィーさんの頼れる精霊から売りを止められたってね、景況が少しでも悪い方に振れたら、すぐに独断で『売り売り』するから。」

「ねえ、今のあんたは、本当にあんた、なの? そうね……。すでに『ノルム』は壊れているので、次のシィーの『売り売り』は、本当に……、まずいことになるのは理解したはず。ところが、このまま『買いを容認』の継続でも危ないのよ。その価値の流出の歪みに耐えられなくなったら、いよいよ『シィーのきずな』を売り始めるのよ。シィーってね、きずなを買わせるだけ買わせて売らせなかったから、みんな嫌でも『たっぷり持っている』いるの。」

「それって……、シィーさんの債務って膨大では……。」

「そうよ。それで、どんな相手であっても、己が管理する大精霊の通貨が壊れるとなったら、さすがに『シィーのきずな』を売ってくるわ。この状況はまさしく、インフレで壊れるか、それとも『きずな』の崩壊で壊れるのか、どちらかを選べになっているの。それで、そんな事になるのなら……シィーは『買いの容認』を継続し、大量の買収に走る。このわたし……女神による洞察はいかがかしら?」


 シィーさん……。そんな状況だったのか。


「その『ノルムは壊れた』だっけ。それも少しはわかってきたよ。利率を上げるはずだったのにさ、そんなことはせず、急にシィーさんの『売り売り』な観測だけで値が大きく動き始めた。あのような作用が……、それなんだよね?」

「そうよ。すでに実態なき領域で動き始めている。十分な論拠になるわ。それで、新しい時代……、そう、『仮想短冊の通貨』の出番ってわけ。でも、過信は禁物ね。今後、注意するわ。」

「女神ネゲート様、そして女神の担い手様。わかりました。それでは我らも協力を惜しみません。それでは、まずは仮想短冊の『クリプト』と呼ばれる部分にある、その用途が不透明な部分の取り除きから始めていきましょう。」

「クリプトって……? コアよりも深い場所に、そんな問題があるの?」


 コアよりもさらに深い場所って……おいおい、ラスボスみたいな存在かな。なんてね。


「さようでございます、女神ネゲート様。そこはまさに深層部……そこには『鍵』を操る者たちがおります。そして、仮想短冊に宿る価値が直接交換される場でもございます。よって、コアの問題までは是認できたとしても、クリプトだけは僅か一つの是認すら許されません。そこは、よろしいですね?」

「そうね。でも……、それって、後で使おうと思って残してあるだけではないの?」

「女神ネゲート様、その考えもこの場でお捨てください。それを許し、『チェーンの罠』を仕掛けられ、大量の『未使用な短冊』を悪意のある者たちに奪われ続けた件を忘れてはなりません。それで『取引の場』から大量の顧客の『仮想短冊の通貨』が突然奪われ、大騒動にもなりました。」

「ああ、それはダメだよ、ネゲート。わからないように仕込んでおいて、短冊の価値が十分に急騰したタイミングで一気に引き抜こうとする仕掛けだろう。仕掛けがばれると対策されるから、引き抜けるチャンスは一度のみ。よって、今は平静を装いながら何事もなく参加し、引き抜くタイミングを虎視眈々と狙っている。そうだよね?」

「さようでございます、女神の担い手様。さらによくないことに……、クリプトの問題は、そのような問題を調査して検出する『アンチウイルス』や『セキュリティ』などの仕組みで『検知できない』という問題が最も大きいのです。そのような機構で調査して問題がないのなら安心してしまいがちですが、検知できないのですから、そもそも意味がない。それで、気が付いたら『仮想短冊の通貨』を失っていた。そのような流れになるのでございます。」

「なるほど。ほんと、おまえって、ゆるいな。」

「……、なによ。直せばいいのよ。直せば! もう!」


 「仮想短冊の限界突破」で、やっと俺の決意が固まりました。頑張りますよ。さて、まずは精霊の推論から導かれた箇所から、さっさと直しましょう! そして……そうだよ。フィーさんとこの地で出会った頃に「犬」と一緒に預かった「鍵」があったよ。

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