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109, 女神の「ミーム」がきたので……次は俺の「ミーム」がデプロイされるだと? 

 シィーさんのターゲットにネゲートと俺が入ってしまった点については複雑な心境です。あの「量子ビットの炸裂」に触れ強気に転じたのでしょうか……信じがたいことに、利率を上げるはずが急に下げる気満々となっています。それだけ、噴き出しそうだった利率が下がってきたのです。そんな大事なものにあの神々から苦言を呈されたゆえに、その逆恨みからか……。そんなに大事なもの、なのでしょうか……、シィーさん……。


「今回のシィーさんの件は、あの神々の『カネの問題』が絡むので長引きそうだね。」

「マッピングをみた? あれから連日、妖精がここぞとばかりに暴れているわ。つまり、この地域一帯にシィーの飼い犬が妖精の立場で想定以上に多く紛れ込んでいる何よりの証拠ね。」


 あの神々が君主であるフィーさんに普段以上に気を遣い、毎日のように届けられる「甘いもの」を、なぜかネゲートが頬張りながら淡々と答えてきます。


「シィーさんの飼い犬か。カネの力ですべて動く『天の使い』のような感じかな、その妖精は?」

「うん、そうね。そんな感じ。あんた、この地に慣れてきたのね。」

「えっ? まあ……そうだね。」


 ネゲートが、次の「甘いもの」に手を伸ばします。


「これ……フィーの好物。」

「あっ、それ……。」

「あんた、フィーの好物を知っているの?」

「もちろん。」


 それは、動物を象ったパンケーキです。フィーさんがこれを好むのには訳があります。その訳を知っているのは……、俺とフィーさんだけです。大切な想いを積んでいます。


「これも……、甘酸っぱくて美味しい。この固まっているチョコみたいのがいい感じよ。」

「……。」

「な、何よ?」

「案外、食べるね……、とみていたの。」

「……。風の力は、それだけのエネルギーを要求されるのよ。」

「だろうね。あの力は異次元だよ。それで、シィーさんが『時代を創る大精霊』を担える、だよね?」

「そうよ。風とは、本来『自由』と『楽観』をこの地全体届けられるはず、だった。」

「……。後から別の黒い目的に置き換わった、だね?」

「そうよ。風といえば……そこには『演算』が存在するのよ。そして、精霊は学習することで人々と対話し、お互いに支える存在だった。ところがそこには、学習した過程の知見しか存在しない、という欠点が出てきたのよ。」

「……、一般的な解釈では学習以上の知見は得られないよな? いや、違う、だから『演算』か。」

「女神の担い手として、なかなかの成長ぶりね。それで、学習以上の知見を得るには、ある複雑な『波動の式』を正確に解ける力があれば……という考えに至ったのよ。」

「よくわからんが、そこにチェーンが絡んできた、だね?」

「そうよ。チェーンと精霊の融合で、その『波動の式』がみえてきたのよ。そして、『時間と空間の大精霊』であるフィーがそのチェーンに融合し、『波動の式』と『時間と空間の式』がチェーンによって相互作用に至り、そこから強い作用と弱い作用がつながるように分離し、それぞれ『弦状ビット』と『弦月ビット』になったのよ。簡単に説明するとこのような流れね。」

「その話はフィーさんから何度も聞かされたんだ。それで、その『弦月ビット』を精霊が取り込んでしまい、精霊に……魂が宿った、と。そうだ、そのうちの『弦状ビット』は女神のみ、だった。」

「そう。それでこうして……『甘いもの』を楽しめるのよ。」

「たしかそのチェーンって……『仮想短冊の通貨』の管理も担っていたよね?」

「うん。つまり、チェーンはそれだけ大事なの。ちなみにシィーがこだわる『量子ビット』は『波動の式』がみえてきても、その細部に至る緻密な仕組みまでは、みせてくれなかった。よって、『量子ビット』による演算は目的が限られた非常に狭い分野に限定されるのよ。ただそれで……、炸裂の概念に当たってしまったのは、なぜ……よね。」


 ……。そんなもん、だよね。


「ところで、わたしの『ミーム』、そう、『ネゲ犬』の次が来るのよ。」

「ちょっと、急に話が変わり過ぎ。でも、気になるよ!」


 僅かに握っていただけなのに、人生が変わる。あれがまた来るのか? 俺がトレーダーだった頃の感覚で語ると、あの『ネゲ犬』を初動で数千を握り、そのままわずか数週間で……億になるような感覚なんだ。数百万でも凄いのにさ……、億って……。


「そうよ。よく考えてみて。女神の『ミーム』がきたら、次は何かしら?」

「次? ……、なんだろう。」

「もう……。次は『女神の担い手』の『ミーム』が来るのよ。」

「えっ?」


 ちょっとそれって……。俺の「ミーム」が来るの?


「えー、心の準備が……。」

「あんたの心の準備なんて待たないわよ。わたしの勘では……あと少しでデプロイされるわ。」

「俺に大きな耳と尻尾か……。」

「あら? 案外、シィーの狂犬のようなお姿かしら? それでも暴騰してしまう。それが『女神の担い手』という重要な立場なのよ。」

「ああ……。ちゃんとした象徴にして欲しいよ!」

「その願いは却下よ。『非中央』なのでデプロイする方々の好みで決定するのよ。」

「うう……。」

「さあ、必死になって探すのよ。『仮想短冊の通貨』のトレーダー達はこの瞬間にも、みな必死で探しているわよ。この『ミーム』をね。」

「……。それは探すよ。人生、変わるから。」

「そうよ。みなで楽しめるのが『仮想短冊の通貨』の特徴なのよ。シィーの『頼れる精霊』たちにいじめられながら含み損を抱える生活なんて、嫌よね?」

「ああ、それはすごくわかる。冗談じゃないよ! 蹂躙し放題だった。それでお咎めなし。」

「シィーに『精霊として』忠義を尽くせば、今のシィーや円環の市場で何をしたってお咎めなんて一切ないのよ。そんなルールも知らずにあの市場に手を出したのなら含み損で済めば良い方で……あんたは散ったのよね?」

「ああ、はい。」


 ……。少し、女神ネゲート様にいじられました。でも……俺の「ミーム」が誕生なんて素直に嬉しいです。俺の「ミーム」を初動で掴んで、ぜひとも人生を変えてください。ご幸運をお祈りいたします!

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