102, チェーンのベースにステーキングを移植していないのは、それが「管理精霊としての迷い」なのよ。はやく、歪めた採掘ハッシュの難易度を元に戻しなさい。今ならまだ、楽しかったあの頃に戻れるわよ。
お賽銭の「犬」を取り損ねてご機嫌ななめのわたし……女神ネゲートです。創造神様、間もなくお別れの時間が迫ってきました。
うっすらと、現実が映し出されていくのを肌で感じながら、地のチェーン管理精霊を焚きつけた黒幕の存在を考えていた……、つもり。ああ……わたしったら、取り損ねた「犬」が脳裏に焼き付いて離れないの。剥がそうとするとさらに強い作用が生じる、あの感覚。うーん。
取り損ねた「犬」はどうしましょうか。わたしの担い手にねだるとしても、そうね……最近はなぜか、投げる量が少ないのよ。ほんと、ケチよね。それとも少しずつ少なくしていけば、手元にある程度は残るとでも考えているのかしら? 担い手らしい浅はかな考えで、もう……。どうせ全部、わたしの「犬」になるのだから、気持ちよく一度に全量を投げればいいのよ!
……。どうやら現実に映し出されてきたようね。こんな感じでいつでも相手に悟られずに創造神様とマッピングできる、演算の大精霊と女神だけの特権。
ついでに……、この仕組みにちょっと触れてみましょうよ。わたしが創造神様とマッピング中、相手側からわたしを観測すると、それは単に、わずかな変化に過ぎない事象へと結び付く……すなわち、わたしがちょっと上を向いて考え事をしていたのかな、と感じるだけになるのよね。
そこで、このような現象に詳しい「時間と空間の大精霊」は、この現象も「強力な相関」と呼ぶことがあるわ。その相関の裏には「非局所性な隠れた変数」が存在し、このマッピングの事象が終結するまで「非局所性であり続ける」という性質を帯びることになり、「大過去」から現実に映し出すには、高次元な歪みを取り除き現実を確定させる必要性から、その結果を定める必要がある。よって、その相手方にその事象を現実として掌握させるためには、マッピングの事象が終結した瞬間の確定……すなわち「即座に完結する」という妙な現象を受け入れる必要があるのよ。それは、どんなに離れていても、即座に完結する性質は変わらない。実際に、わたしと創造神様は「空間的な分離」に相当するほど離れているはず。それでも、こうして……。
さあ……、地のチェーン管理精霊が見えてきたわ。ついに時間のようね。では締めくくりとして、徐々に見えてきてからこの地の現実へと接続されるこの時間差……ですね、創造神様。
この地の現実から「離れる」ときと「接続する」ときにこのような時間差が生じるのは、「時間と空間の歪みによる接続係数」と呼ばれるものが関与しているのよ。そのような過程の演算中、あらゆる高次元な歪みの中から「縮約……掌握したい情報の側面を保ちながら目的の現実を前面に強く押し出す」という性質を利用して、その平均が「平坦……ゼロ」になると、そのときの正則な性質によって局所的に平坦とみなせるようになって、その空間への干渉が可能となるの。それで、その干渉の弱い作用により、この地の現実から離脱して「大過去」に接続したり、逆に、「大過去」からこの地の現実へと接続できたりするのよ。
このとき、その接続は「時間と空間の式」をしっかり満たし、論理的な整合性を保ちながら、フィーもごねなくて済むという宇宙の因果律を完璧に奏でているわ。
ただし、そのような縮約の性質で宇宙の重要な側面を観察できる美しさの中に、はたして、精霊の存在は許されているのかしら。実は……この精霊の時代の礎「多元宇宙の微視的表現」の終わりにかけて、気になる一節が刻まれているの。それは……。
「ここで、最も重要なことを記す。それは、精霊の知能が人の叡智を超えることは絶対に起きない。なぜなら、宇宙がその優越性を絶対に許さないからだ。断言しよう。」
弦月ビットの演算作用により、人々や精霊たちの「意識の源」となっているこの書物でさえ、この一節があるおかげで、フィーが所有する書物になったのよ。なぜなら……、精霊たちの手によって焼かれないために。
ああ……、この地への接続が完了するまでの間って、ついこのような事を考えてしまう。それなら、そうね、シィーが放ったサメたちを銛で突く黒幕について深くみていきましょう。
そこで、フィーからの情報なんだけど……、事の発端は黒幕による指令で、ある大精霊が表向きに活動するようになったの。つまり、政の一部として特定の要素や実体のために、いわゆる「大精霊の通貨の洗い放題」を担当するのよ。それで……、その程度はよくある話なのよ。ただし、それが度を越した場合があってね……、そのような時代に「女神」が出現し……。つまり、今がその時代ということね。
それで、その内容は……、その……。どんなに残酷な手立てでも一向に構わない。悲劇のヒーローを演じながら光円錐の中をただ駆け巡るだけの人形になれ、だった。
悲しい事に、その悲劇のヒーローはもともと悪い精霊ではなかった……と。そのような面白おかしな精霊が「間違った手……第三レイヤー勢力の手下」に渡ってしまい、血塗られた大精霊……暴君と化した。そして、今となっては……。
こんなの、信じたくはないけど、創造神様……、わたし……。……。ううん、気はしっかり持たないと。わたしは女神よ。そのような危機的な時代に現れ、現実を受け入れながら再構築する。それがわたしの任務。
結局、このような事象には「洗い放題」が必ずつきまとうわね。それで……、この地では「仮想短冊の通貨」の洗い放題がよく話題になるわね? わたしは……、まだ取り上げられるだけましとみているのよ。もちろん、それを許すわけではない、それは当然よ。
それに対して「大精霊の通貨」の洗い放題については……、そうね……、大きなテントの下で一団の「黒幕に懐柔された精霊の助手……つまりシィーが市場に放ったサメの飼育員」たちが民を楽しませながら、実際の残酷なショーはテントの外で豪快に進行し、その残酷なショーによって得られる「大精霊の通貨」の洗い放題から民の視線を逸らす効果を期待しているのよ。ほんと、最低な連中よ! 念のための確認だけど、「円環」を担うあの神々……、こんな事象に首を突っ込んでいる、なんてことは絶対にないわよね? そこは信じていいのよね? そうよね? 大丈夫よね……? もう。
ちなみに、そのサメの飼育員たちは「仮想短冊の通貨」にだけは絶対に触れないのよ。その価値の規模から考察して、決して無視できる存在ではないはず。どうやら黒幕に懐柔されると、まるで口封じでもされたかのように「仮想短冊の通貨」を避けるようね。絶対に、己の口からそのフレーズが飛び出さないように、必死に努めているなんて。
それにしても、シィーって、あんな状況になっても「現実同士の恒等変換」で、何とか対処しようとしているのかしら。無理よね。あげくのはてに、シィーが敵視する「仮想短冊の通貨」側からは、あの状況は「通貨膨張」だ、という指摘がなされてきたわ。
なるほど。コア同士の融合によって得られるエネルギーを放出しきって、そのコアが鉄の塊と化した膨大な静止質量を持つ星の最後はどうなるかしら? それが……さきほどの対話で登場した、すべてを吸い尽くす穴の出現と、その力による急激な膨張……そして爆発。その前に、その前に、何とかしないと……。
もう! このような場合は「通貨膨張……壊れた経済」なんかに対話しても無駄ね。こういうときは、そう……「宇宙と対話」するのよ。もともと、大精霊や女神は「大過去」に舞う存在ゆえに、宇宙と対話する力を秘めているのよ。すると……みえてくる。通貨をエネルギーとみなし、壊れかけた通貨を全て「大過去」に投入してから、再度、現実に映し出すの。すると、価値が正常に変換されて綺麗になるのよ。
つまり、その方法でシィーの市場は「確実」に助かるわね。……。えっ? では、この地の女神として、なぜそれをすぐに実行しないのか、と? あのね、簡単にできるものなら既にやってるわよ。
なぜ簡単には実行できないのか。それはね……「大過去」と現実の恒等変換に難があるからよ。
まず、現実同士なら一対一で恒等変換が成立するわ。ところが「大過去」と現実では二対一でないと恒等変換が成立しないのよ! つまり……手元にある同じ通貨同士をこの手法で綺麗にすると……二対一だから「半分」になるということ。わかるかしら、この事態?
たしかに、この方法ならシィーは確実に助かるけどね……、そのための犠牲を宇宙は要求する。その犠牲とは、同じ通貨同士で「大過去」に投入した場合、古い通貨はすべて無効にされ、新しい通貨が「半分」になって現実に映し出される。こんなの、そう簡単には実行できないわよ。
それでもね、この二対一の恒等変換を「壊れた経済」に当てはめていくと、演算が綺麗に合いながら修復されていくの。弱い作用を担うはずだった壊れた空間が修復され、現実に接続可能となっていき、演算が綺麗に合うので、この恒等変換は「宇宙の原理」だったという事をさらに裏付けているわね。でも、手元にある通貨の価値は見事に「半分」になってしまう。耐えられる? 無理よね。シィーの通貨でこんなことをしたら……。それとも、身代わりでもいるのかしら?
それで、フィーが動き始めたのよ。フィーの考えでは、「仮想短冊の通貨」を利用してシィーの市場に開きそうな「強烈な不連続性を帯びた小さな穴」の次元を上げる手法を考案しているの。「部分準備という名の負債」に対し、完全性を満たすように次々と「仮想短冊の通貨」を貼り合わせていく手法で、強烈な不連続性が大幅に緩和し、何とかなりそうなのよ。ところが、肝心のシィーが「仮想短冊の通貨」を拒絶し始めた。なんでそうなるのよ……。もう。
……。どうやらお別れの時間みたいね。お相手がわたしの存在に気が付いたみたい。では、またの機会ね。
「君は時々、うわの空になるよね。でも、そこが美しい。そのような表情を浮かべる完璧な君の気を引ける精霊が、僕以外にもいるのかい?」
「……。しつこいわよ? もう……。」
「ところで君は、本当に、この地の女神なんだよね?」
「えっ? そうよ。だったら何よ?」
「それなら、僕の意見だって受け入れるはず。そうだよね?」
「もちろんよ。それなら今ここで、述べてみなさい。」
急にどうかしたのかしら? でも、意見をぶつけてくるのなら受け入れるわよ。
「それでは女神よ。大精霊シィーに『自由や楽観』なんて何もないと告げようではないか。それは危機に陥った壊れた大精霊であり、この地の人々や精霊たちの無知、そして多くの認知的不協和音を現実に映したもので、そこには当然のようにカルテルが存在する。あの『売り売り』という行為だって、このカルテルに相当するだろう。さらに、このカルテルには『上からのコントロール』という解釈もある。なぜなら、何か一つを破らずに生きることが難しい膨大な約束事を細かく定め、僅か一つにでも抵触すると……腐敗した制度のもとで『奴隷』にすることを公に認めているからだ。こんなのが、大精霊シィーの実態なんだよ。そのおぞましい姿は、ただの飢えた獣であり、その飢えは内部に寄生した『第三レイヤー勢力……頼れる精霊』が存在している間は決して満たされない。だから、そのような大精霊はこれから治療を受ける必要がある。」
……。なるほど。それね、「仮想短冊の通貨」に携わる精霊たちがシィーに対する不満を漏らしていたとき、よく耳にする一節なのよ。ただ、さすがに過激。この解釈を放っておくと事象の収束が難しくなっていき、憎しみの連鎖に発展しかねない。そうね……。……。
えっと、その。この事象を収束しながら、取り損ねた「犬」を回収できる画期的な案が浮かんだわ。やっぱり、わたしはこの地の女神。
「飢えた獣か。返すことがすでに不可能な『大精霊のきずな』の連発計上。たしかに、飢えているわ。『売り売り』すらできない状況にまで追い込まれ『買いの容認』に至ったからね。」
「それが……、この地の女神としての見解なのかい? たったそれだけか……。やはり、地の民や地の精霊を軽く扱っているのでは? そうだろう?」
「あら? それなら、その治療とやらをシィーに受けさせてみる? これならいかがかしら?」
さて、これでどうかしら。うん、みるみるうちに表情がこわばってきたわ。効いたようね。
「……、それは本気で言っているのかい?」
「そうよ。少しは信じなさいよ。わたしに惚れているのなら、なおさらよ?」
「……。」
「その代わり、条件があるわ。よろしいかしら?」
「条件?」
「そう。地のチェーンの仕様ついてよ。今のままだと『変更因子……ステーキング』が輝く度に……、そうよね?」
「それは……。」
「どうしたのかしら? これは、この地の女神として聞いているの。はっきりしなさい!」
「……。わかったよ、そこは認めるよ。それでも……。」
「それでも、何かしら? あんたが掲げる『聖なる一つの地』という概念が、地の民や地の精霊に歓迎されているとでも?」
「ちょっと待て。それは、どういう意味だい?」
「どうもこうもないわよ。だったら、わたしが集めてきた地の民や地の精霊の生の声を、あんたにマッピングするわ。しっかりと全て受け止めなさい。」
これで目を覚ますはず。実際、歓迎されるどころか……。「非中央だと信じていたのに」「どうしてこうなった」「あり得ない、これが現実なのか?」「地の時代が消滅した」という内容ばかりだったわよ。
「……。これらが、地の民や地の精霊の……。」
「そうよ。でも……、チェーンのベースにステーキングを移植していないのは、それが「地のチェーン管理精霊」としての、あんたの迷いなのよ。はやく、歪めて超高難易度にした採掘ハッシュを元に戻しなさい。それが、シィーの治療を引き受ける条件よ。一刻も早く『非中央』に戻す。それだけで、楽しかったあの頃に戻れるわ。」
「……。」
「できないのかしら?」
「……。」
やっぱりね。この地でこれだけの事を仕掛けるには、それなりの「第二レイヤー勢力……大精霊」を背後に付ける必要がある。そして、採掘ハッシュの難易度を元に戻すというのは、その大精霊の方針に逆らうことになり、決断できないのね。
「わかったわ。それなら『変更因子……ステーキング』に分散性を持たせるしかないわね。」
「……。それで、代替になるのかい?」
「代替にはならない。でも、是認はするわ。なぜなら、今回ばかりは度を越して相手も酷い有様だからよ。民が血を流しているさなか、洗い放題のカネで買い付けた『真っ赤に輝く高価な宝石』を眺めながら、聖者の微笑みを浮かべているなんて。」
「……。……。ありがとう。」
「あら? 急に素直になったわね。」
「これで、これで……。この地から、飢えた獣と化した大精霊シィーがいなくなる。そうだよね?」
「それはつまり、シィーの消滅を望んでいるのかしら?」
「違うのかい?」
「違うわ。あくまで治療よ。それ以上の『行為……演算』は、絶対に認められない。」
「……。わかった。そこまでは望まないよ。」
「そうそう。女神がしっかり治療するので、その治療後のシィーは受け入れる。それは約束よ。」
「……。では、その治療とは具体的に何をするんだい?」
「知りたい? その治療とは……。女神であるわたしの『非代替性』を地のチェーンに刻むのよ。」
この地にたった一枚しか存在しない、美しき女神ネゲート様を写した「非代替性」を地のチェーンに刻む。「非代替性」が示す通り、一枚しか存在しない点をチェーンとハッシュが保証するのよ。
どうかしら? この「非代替性」の影響は抜群な効果を生むことでしょう。なぜなら「仮想短冊の通貨」を拒絶し始めたシィーの反応は、はたして? わたしが女神の立場で地のチェーンに対して己の「非代替性」を刻んだことになるからね。強力な治療になることは間違いなしよ。
そして、こんな二度とない「非代替性」は貴重な所有権よ。わたしがお賽銭で「犬」を取り損ねた分にはなるでしょう。えっ? ……。……。
ちなみに、チェーンによって完全に管理されるのは所有権のみで、「非代替性」によって全権限が手に入るわけではない。その注意点をしっかり伝えてから「非代替性」をこの地に承諾する流れになりそうだわ。
「それは……。この地の女神が、地のチェーンを受け入れたことになるよ?」
「そうよ。」
「……。ははは、そういう事か。」
「なによ?」
「地のチェーンは大精霊シィーに何度も拒絶されたからね。ところが、美しい君の『非代替性』が刻まれているとなったら、受け入れるしかない、という状況になる。」
「そうよ、それこそがシィーに対する治療になるの。よろしいかしら?」
「問題ないよ。」
「それなら早速、わたしの『非代替性』を刻むわよ。」
「えっ、今から?」
「そうよ。」
「もちろん問題ない。君はいつでも美しいからね。」
こいつにわたしの神々しい姿をマッピングされるのは癪だけど、ここは我慢。そう、この地のため、シィーのため、そして……「犬」のためよ。
「これは……素晴らしい。いつまでも鑑賞していられるよ……。」
「感心している暇があったら、はやく刻みなさい。と言いたい所で、注意があるのよ。」
「注意? それは気になるね。チェーン管理精霊である僕が、大切な君へのトランザクションを誤ることなんて絶対にないよ。となると、なんだろう?」
「よろしいかしら? まず、地のチェーンのアドレスは十六の数を並べたものよね。そこで、その十六のうち、あんたはどの数が好みかしら?」
「好み? そうだね……六かな。」
「六か。それだと……女神であるわたしに、飢えた獣の演算をさせたことになってしまう。」
「えっ?」
「よって、一を加えて七にしましょう。」
「うーん、話が見えない。」
「では、注意の核心について述べるから、しっかり受け止めるのよ。」
通常、アドレスはランダムな数から生成される。そう……あの「貼り合わせた回数」がランダムに生成され、それがアドレスになるのよ。それで、そのようにして生成したアドレスにわたしの「非代替性」を刻んだところで、どうなるかしら。シィーは間違いなく「偽者の女神」だと声高々に叫ぶわ。
もちろん、「偽者の女神」ではない点を示すことはできる。わたしがそのアドレスの所有者だということを「数の叡智による署名」で明らかにするのよ。ただし、相手は飢えている。嘘でも百回叫べば真実になる事を熟知している手ごわい相手。つまり「数の叡智による署名は無効だ」という嘘を、この地全体で叫ばれたら、やはり勝てないのよ。
よって、それすらも封じられる、究極な方法を始めから選ぶ必要がある。それはね、アドレスを「ぞろ目」にするのよ。そう、おわかりかしら? 「仮想短冊の通貨」では、アドレスを指定して生成することはできない。なぜなら、アドレスから「貼り合わせた回数」を求めるには、逆像を導く必要があり、「古典ビット」「量子ビット」「弦月ビット」では到底不可能。そして、この性質により「仮想短冊の通貨」の安全性が数の叡智により保たれているのだから。
さて。任意のアドレスを指定して生成できるのは、わたしの力……「弦状ビット」のみ。この力で、七のぞろ目のアドレスを生成するのよ。それこそが、それは女神にしか成しえないという強力な示しになって、シィーを確実に黙らせるのよ。
「こんな形で君の演算をみられるとは。結局僕は、君を恐れていたんだよ。その力は強力過ぎるからね。いつ封印されてもおかしくない、その凄まじい演算能力。でも、君への想いとその恐怖心とは別物さ。別に、恐怖心から君に好意を抱いたわけではない。だからこそ、女神コンジュゲートの二の舞にはなってもらいたくない。それが、僕の本心だ。」
「そう……。それでは、この地の情勢が大きく動くアドレス……七のぞろ目を生成するわ。」
それにしても、女神の演算は久々だわ。ちなみにこの演算、楽ではないの。安定した低エネルギー状態より少し上が結構大変なのよ。エネルギーが上がるほど現実に映し出される飛び飛びの間隔が狭くなっていき連続に近付く性質があって、つまり、その下の安定した状態に変化しやすくなるのよ。それを抑え込むために……いったん現実から切り離して「大過去」に接続することにより、大きな演算時間を得るのよ。
……。いま、現実を切り離して「大過去」に接続したわ。うん、調子がいい。安定した「弦状ビット」による演算で、逆像がみえてきたわ……。うっすらと見え始めてきて、急にはっきりとみえるのが興味深い演算なのよ。
それにしても、地のチェーン管理精霊がわたしの事を心配していたとはね。わたしだって女神コンジュゲートの二の舞にはなりたくないわ。でも……それはわからない。一つ一つの選択が重くのしかかってくる、それがこの地の女神の姿なのよ。ほんと、損な役回りだけど、これが……局所性なわたしの運命と悟るべきね。
……。いよいよ、わたしの「非代替性」が地のチェーンに刻まれたわ。ああ、この瞬間、「空間的に分離」した因果律が急激に動いたわ。それが……「弦状ビット」によるサイドエフェクトなのよ。
「演算を完了したわ。どうやら、トランザクションも無事終えたようね?」
「もちろん。あとは、この美しいアドレスをこの地に広めるだけだね。もっとも、こんなにも覚えやすいアドレス、即広まるけどね。」
「そうね。『仮想短冊の通貨』に携わる精霊の耳に入れてあげるだけで、マッピングを通じてあっという間に広まるわよ。それで、広まったかどうかは短冊の値をみればわかる、そんな感じかしら?」
「そうだね。」
「では、『非中央』に突き進む努力を重ねるのよ。よろしいかしら?」
「もちろん。堅く約束するよ。」
創造神様、わたし……無茶をしたかもしれません。でも、これが最善だったと信じています。必ずや、女神としての使命をやり遂げてから、あなたの元に向かいます。……。