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101, シィーの市場と大規模緩和のお片付けを次の若い世代に押し付けるのなら「仮想短冊の通貨」ぐらいは大目にみるべきよ。ところで、そのシィーが命じそうな「量子ビットでチェーンを破る」は無理だから。

 創造神様、ご機嫌うるわしゅうございます。女神ネゲートです。


 さて突然ですが、このわたし女神ネゲート、もともとは大精霊でした。すなわち「対話の時代」を経験しております。そこで……、たまには対話しましょうよ! わたしが一方的に報告するだけなんて、……現実に映し出される前の冷めきった情景が、ただ頭の中を駆け巡るだけ。そんなの非局所性な「大過去」の因果を奏でるだけになっていて、大変よろしくないわ。


 えっ……? それなら? えっと。うん、その話題からきますか。地の大精霊ラムダの件はどうなったのだ? そうね、それからまとめていきましょう。


 簡単にまとめると、「非中央」を遵守する精霊の立場で地の大精霊のラムダを差し置き、この地を意のままに操りはじめた「地のチェーン管理精霊」の軽率な行動には、みな、頭を抱えているのよ。


 その勢いに乗じて、女神であるわたしを取り込もうと言葉巧みにもがくなんて。まったくもう、すでに、話が出来過ぎている事くらい、見抜いているわよ。


 そう。これには高い塔の上から優雅に見下ろす黒幕がいるのよ。結局、それだけのことだった。


 えっ? その黒幕は誰……?


 それでは、黒幕への「経路」を辿る方法でみていきましょう。これ、裏でコソコソ動き回るやっかいな相手に効果的で、どの時代にも存在する厄介な黒幕すら逃れることができない「隠れた因果」を利用して追い込むのよ。そうね……、フィーの解釈なら「それが自然発生的な経路による因果律の示し」という表現を使いそうね。


 さてさて、そのような「自然な経路」に沿って物事を観察していくと、ちゃんと「隠れた因果……黒幕」に辿り着くのよ。それでは、みていきましょう!


 そこで、誰かさんの豪快な「売り売り」によって「ノルム」が破壊されたシィーの市場を観察してみることにしましょう。このシィーの市場は……「この地の市場」と言い換えても過言ではない位に大きくてね、「ノルム」が壊れ始めると、決まって、腹をすかせた「サメ」がそこらじゅうに放たれるのよ。さらに、満遍なく「網」が張られ、その網をめがけて「餌」が放たれるの。


 ところが、そのサメたちは非常に賢くて、その餌には見向きもせず、ひたすら息を潜めて隠れているのよ。なぜって? それはね、その餌には多くの「小魚」が群がってくるからなのよ。


 それでね、その小魚たちを閉じ込めるのが「網」の大切な役割なのよ。一度でも網に入ってきた小魚たちを絶対に逃さないような仕組みが施されていて、この網に迷い込んだ小魚たちは、網から逃れることができなくなるのよ。なぜって? それはね、網の中にいるのに、なぜか幸福感に包まれてしまうような怖い「罠」が至る所に仕掛けてあるからなの。


 具体例としては、そうね……最初に飛び込んで大きな財を勝ち取る事を意味する「ファーストペンギン」を好む地域一帯に対しては「今すぐ網に飛び込んで、大きな勝ちを手に入れろ!」とあおるのよ。あと、「大部分の方がすでに始めています、急げ!」という言葉に弱い地域一帯に対しては「ほら、さっさと網に飛び込まないと、その場に少数で取り残されるぞ!」とあおるのよ。いかがかしら?


 さーて。そこでようやく……、わかるわよね? その絶好のタイミングを待っていたサメたちが嬉しそうに口を開き、一斉にその小魚たちを「捕食」していくの。いつもいつも、これの繰り返しよ。


 えっ? それらは……。


 ……。そうよ。サメは、精霊たちよ。網は、その精霊たちに忠誠を誓う「ランク」を司る者たちや、「風前の灯」と揶揄されてしまった通貨やバンク、あと……、焦げ付きそうなあれらを表面上だけ綺麗するために小刻みにしてから分散させ、そこから「『大過去』の現実のみに常に沿いながら動く『局所性な確率の揺らぎ』で疑似的に構成されるランダムウォークの式」で一つに再構成して、そこに「高い手間賃」を乗せたものが該当するわね。いわゆる「買うだけで確実に大損する」あれらね。どうしても買いたいのなら「非局所性な確率の揺らぎ」で構成されたものを選ぶしかないの。ところが、それを見抜くのは非常に難しい。よって、手を出さないのがベストとなるわね。


 えっ? 「局所性な確率の揺らぎ」と「非局所性な確率の揺らぎ」とは何だ? 同義と言いたいのかしら? ううん、それは違うわ……。


 「大過去」からみれば一目瞭然なんだけど……。わかりやすく解釈すると、まず「局所性な確率の揺らぎ」とは、確率的な各事象が「ランダムに決まっている」と「錯覚」してしまう現象で、つまり、あらかじめ決まったレールの上を確率が走っている状況ね。つまり、その事象が生じたと同時に結果が定まる確率を「局所性な確率の揺らぎ」と表現しているのよ。よって、銘柄でそんなのを選んでしまったら、そんなのを売る精霊は相手に「その相場で勝たせるつもりはない」のだから「買ったと同時に結果が定まる確率なんて……つまり『負けが決定』する」という論理になるのよ。いかがかしら?


 逆に「非局所性な確率の揺らぎ」とは、そうね……「創造主が賽を投げる」状況、つまりランダム性のある本来の確率を指すのよ。「大過去」からの観察では、変動の激しい領域の計量を必要とせずに、その境界の限界地点において綺麗に現実に常に沿うだけなのが「局所性な確率の揺らぎ」で、計量に従いながら変動の激しい領域で何度もねじ曲げられ、その状態を「進化」させていくのが「非局所性な確率の揺らぎ」になるのよ。


 このような性質により「局所性な確率の揺らぎ」は胴元の思いのままになるのよ。それゆえに、そのようなものに手を出すと、買うだけで大損が確定……、となるのね。もちろん、全ての財を大精霊様にお布施として捧げたいのなら、止めはしないわよ。


 ……。えっと、何の話だっけ? ああ、そうね。そして、いよいよ餌よね。これは端的にまとめると、人々を誘うための精霊らの小規模な買いなのよ。そうね……、今が買いのチャンスで「この程度の事態、おびえる必要はない。これは、宇宙の予定調和の中での些細な出来事に過ぎない。したがって、心配する必要がない事の一つだ。」と言い切り、買いを継続するべきとか、平気な顔で「買いあおる」ことを朝から晩まで繰り返しているわ。それで少しずつ「恐怖の利率」が上がっていくのよ。


 そして、小魚は……。別に、それ位はわかるわよね? もう……何なのこれ? もう……。


 えっ? 予定調和について女神の見解を伺いたい、ですって? そうね……、創造主が最初から設定した調和の中で、物事があらかじめ定められた順序や方法で進行するという解釈でよろしいかしら。つまり、予定調和という解釈には、全体に渡って定められた調和の中で収束するという性質を帯びているのだから、そこで起き続ける、宇宙を構成する無数の小さな各事象……、すなわちそれらは全て、部分的な解釈となる「局所性な確率の揺らぎ」として収束するのよ。それで、その収束性については、数の叡智にある「数の列の有名な定理」から示せることで、つまり、予定調和が宇宙の原理となるのなら、すべての事象は必ず収束していくことになるわね。


 ところが、すべての事象は「局所性な確率の揺らぎ」ではなかった。それを調べるために、統計に基づいて作られたある評価式があってね、その評価式が破られたことにより「局所性な確率の揺らぎ」では説明できない確率の存在が確認できたのよ。それはつまり、非局所性となるわね。


 そうなると「非局所性な確率の揺らぎ」を構成する「ねじ曲げられた割合……すなわち曲率」は、時間と空間が「非局所性な確率を通じて生じてきたこと」を示唆するわ。それで、フィーが「確率」に対して疑念を抱く原因にもなったのよ。それでも最近になってようやく、縮約や、保跡でマッピングされるのなら、何とか認めるようになったけどね。


 それでもし……、こんな程度の相場の仕掛けに引っ掛かるようでは、もう二度と、市場には手を出さないように。女神ネゲート様との約束よ。


 えっ? それでも「売り方」なら勝てるはず? あのね……今回の胴元は、「売り売り」で売りに対する情熱だけは誰にも負けず、そうね……円環の市場を喜んで荒らす「売りの蹂躙」で名を馳せるあの精霊様すら勝てない……、「時代を創る大精霊」様よ? そんなのを相手にして勝てる自信はあるのかしら? やめておきなさい。全部根こそぎ持ってかれ、途方に暮れる未来がすぐにお迎えに来るわよ。


 さて、次は「経路」をみていくわ。まず、「ノルム」が壊れているので、すなわち「完備性」を失っていて、一般的なテクニカル手法やファンダが通用しない状況になっているのよ。


 えっ? 完備性とは? もう……、創造神様のいじわる。おまけよ。


 そう、完備性とは……。各事象が列をなしていて、時を刻むにつれ、それぞれの事象が持つ特定の瞬間が一つの終結点に向かって、より密接に連なっていく。このような性質を「完備性」と解釈するのよ。それでね、このような性質を陰で支えているのが「ノルム」なの。


 さーて。こんな状況でもトレードしたいとなると、そうね……。かろうじて信頼できる指標は短期で局所的に観察可能な「勾配」と呼ばれる作用素のみね。「短期」で市場を見定め、サメたちが襲い掛かってくる前に手持ちの銘柄を売り捌く「高度な取引」が要求されるわね。


 ただし、市場で暴れ回る「勾配」という作用素は底が歪んでいるのよ。だから「短期」はもともと難しい。その上、誰かさんが「ノルム」が壊したので計量の失敗が続き、それで「勾配」が壊れていくのよ。


 それで、最後はどうなるのか。大部分の「勾配」が壊れると、短期の取引が「合理的に成立しなくなる」から、さて、どうなるかしら?


 そうね……。今回は「ノルム」を壊したので、その崩壊は強烈よ。そう……触れると「強烈な非連続性」を持つとされる点……、わかりやすく表現すると「生じると恐ろしい事象となる点……すなわち『穴』」が生じ、「市場の全範囲」で容赦なく暴れ回るの。それに抗う事は許されず、大部分の価値がその穴に次々と吸い込まれてゆき、最後に手元に残るのは……その穴から漏れるように弾き飛ばされた「僅かな価値だけ」になるのかしら。そんなのに巻き込まれたら、間違いなく助からないわよ?


 それでね、このような状況に備え「デリバティブ」という派生が存在し、その役目はね、「強烈な不連続」を持つとされる点を「回避」するための変換を担っているのよ。それゆえに、売買の一般化を担っているように振る舞いながら、言葉巧みに「不思議な式」に誘導している、そのような性質が垣間見えるはずよ。


 えっ? そんなことはない? 「売りの権利行使」や「インバース系」などはさすがに大丈夫だろう? はたしてそうかしら? 「強烈な不連続性」による影響が市場全体に波及するのよ。よって、それらを構成するパラメタが正常に作用するとは限らない。まったく、シィーは何をしているのよ!


 さて。これだけ並べれば、明確な経路がみえてきたわね。この自然発生した経路は、そう……、サメたちも巻き込まれることを示しながら「黒幕」は助かることを示唆しているわ。


 すなわち「サメたちを意のままに操り、銛で突き刺す者」が「黒幕」になるの。そして、それがいったい誰なのか……。


 えっ? 案外まとまっているって? ありがとうございます。


 ところで創造神様、黒幕への経路を辿る過程で愚痴を並べてしまったけれど、それでも……、わたしにとってシィーは「大切な大精霊」よ。この地で「常識の枠を超えた新しい領域への挑戦」を平然とやってのけるのは、間違いなくシィーしかいない。


 だからこそ、ほんとにもう、シィーはなぜ、このような事態に陥る手前でブレーキをかけようとしないのよ! そのことをやんわりとシィーに伝えたら、わたしの事をじっとみつめてきたの。嫌な予感が脳裏をよぎり、わたしの担い手に「シィーの話し相手になってあげて」と命じたのよ……、今ごろ、どうなっているのやら。何だか胸騒ぎがする。不安を覚えてきたわ。


 もう。人々や精霊たちは、この地でただ、平穏に暮らしたいだけなのに。なぜこうなるのかしら。あーあ。シィーは自分の通貨を治療するため、「この地で中立を遵守する大精霊」の通貨を歪ませ、「この地の主要な大精霊」が共同で担う通貨の犠牲は想定内で、そう……あの神々が己の魂よりも大切にしているという噂がある「円環」という通貨を大いに巻き込んでいくわ。そして「円環」を巻き込むことに特に力を入れてくるはずよ。


 えっ? なぜそこで「円環」になるのかって? それは、シィーが「絶好調」になったから、よ。えっ、それならはやいところ女神からあの神々に接触し、何とかしろ、ですって? そんな事を言われても……。「君は女神だろ? それなら、シィー様を何とかしてくれ!」と哀願されるだけになるわ。


 この状況では、「円環」を歪ませる大規模緩和を、シィーの通貨の状況が大きく改善するまでずっと継続することになるわね。さらに、こんな状況であってもシィーはつまみ食いの感覚で売りそうだから、出口がみえない。


 それでも、シィーが不調な頃には対策を練ったのよ。そう……わたしも参加した形で、その最大の成果は「わたしの演算の力」により生み出した「量子を超越した素材」よ。なぜなら、その力でラムダの脅威を避けたのだから。


 ただ、フィーはその素材の性能について、この地のバランスを保てなくなるという理由で怒っていたの。コンジュゲートの件もあったからね……。それでも、これは必要だった。やり方は間違っていたかもしれないけど、悔いはないわ。


 でもね、それで舞い上がったのか……、あの神々が、わたしが持つ演算の研究を始めた件には非常に驚いたの。いくら研究をしたってね、女神になる素質がある大精霊の演算だけは、絶対に生み出せないという「制限」が、宇宙の原理として存在するのよ。もちろん、上手くいかずに頓挫したわ。それこそ「宇宙の制限速度」を超えるための研究をしていたようなものかしら。無理よ。


 さーて、ちょっとここで「仮想短冊の通貨」について、対話しましょうよ!


 円環をゴムみたいに引き伸ばした後、その環の中に演算を閉じるようにするの。つまり、あるゴム状の上の点に対して「貼り合わせる演算」を実行すると、その結果も必ずゴム状の上の点に到達し、ぐるっと回って無限遠点に戻ることで「閉じられる」という大切な性質が、そこに宿るのよ。


 ところで、「仮想短冊の通貨」の価値ってどこに、という疑問にお答えするときが来たわ。実は、その点のどこかに、ぽつんと宿るの。つまり「貼り合わせた演算の回数」で決まるってことよ。


 そして、その点の情報から「逆像……貼り合わせた演算の回数」を得ることは困難という性質が最も大事で、なぜなら、その点の情報は「仮想短冊の通貨」を受け取るアドレスとして公開され、その点の情報に向けて「仮想短冊の通貨」を送ると、その点に至る「貼り合わせた演算の回数」を知る者が、その通貨を受け取ることになるの。重要さは伝わったかしら? そう……「貼り合わせた演算の回数」は秘密にしなければならない。


 以上の性質より、受け取るために公開するアドレスの「貼り合わせた演算の回数」を知っているのは「自分自身のみ」になり、そのアドレスで受け取った「仮想短冊の通貨」は「自分以外には使えない」となるの。それによって通貨の仕組みが成立し、安全に作用している証になるのよ。


 ところが、「絶好調」なシィーが「仮想短冊の通貨」を拒絶し始めた。もともと、そういうものだったのかもしれない。なぜなら、これは噂だけど……「仮想短冊の通貨」を支えるチェーンの「起源……ジェネシス」に、サメや網などに大精霊の通貨の治療を頼るようになった大きな原因が、皮肉のニュアンスで刻まれているらしいの。ただ……「神託」のような文で、完全な解読には至っていないのよ。わたしの推測では、何かの「見出し」かな、と考えているの。いかがかしら?


 まったくもう……、サメや網などに大精霊の通貨の治療を頼るなんて。そんな「お片付け」を次の若い世代に押し付けるのなら、そうね……、「ノルム」が正常な「仮想短冊の通貨」ぐらいは大目にみるべきよ。そうよね?


 「仮想短冊の通貨」の受け取りや送付はもちろん、それを支えるチェーンの「完備性」もばっちりなのよ。これも大事。ここで覚えてしまいましょう。


 えっ、もう……。焦らないの。そのばっちりな点を説明するわ。


 「仮想短冊の通貨」は、出回る通貨の量が「数の叡智……アルゴリズム」によって縛られ、欲張った大精霊などが操作できないようになっているの。ここ、大事よ! つまり、出回る通貨の量は「時間領域」で完璧に決まっているという性質が重要で、それが「完備性」を支えながら「ノルム」の正常性を保つのよ。


 えっ、何かしら? その考えは危ないって? 「仮想短冊の通貨」の性質に、奪い放題洗い放題の問題点が存在することは事実なのかって? そうね、そこを改めてしっかり説明しましょう。


 ちなみに、「仮想短冊の通貨」をチェーンに接続している状態のことを「ホット」、その接続をチェーンから完全に切断している状態のことを「コールド」と呼ぶ、それ位はご存じよね? それでね、「コールド」なら絶対に大丈夫だと思い込んでいる方が実に多いのよ。たしかに「ホット」に比べたら「コールド」は安全よ。ところが「コールド」なら絶対に奪われない、それは違うのよ。さて、その仕組みについて軽く触れていくことにしましょう。


 なぜ「コールド」でも奪われてしまうのか。それは、「局所性の確率の揺らぎ」を悪用し、「仮想短冊の通貨」を「受け取るためのアドレスの逆像の推測……すなわち、貼り合わせた演算の回数が推測可能な場所」に置かせようとする者たちが存在するの。さらには「受け取るためのアドレス」ってね、トランザクションで「公開」されるから誰にでも閲覧できてしまう。その結果、「コールド」であってもこれだけは、その点にある全残高を奪われてしまうのよ。


 そういう者たちは決まって「甘い言葉で誘ってくる」きて、それに乗せられると、そのような場所に「仮想短冊の通貨」をつい置いてしまうのよ。この危険度は非常に高く、そこにある「仮想短冊の通貨」がすべて奪われるまで「普通に使えてしまう」点にあるの。誰だってね、普通に使えると安心してしまう。それで、すぐには奪われず、「十分な時間が経ち、安心して残高が増えた頃」が最も危ないのよ。いつでも奪えるのなら、そうなるわよね?


 この「局所性の確率の揺らぎ」は、シィーや円環の市場では大損につながり、仮想短冊の通貨では「コールド」であってもそこにある「すべての通貨」が奪われてしまう。それで、こんな性質であってもランダムウォークの「確率……退化して『負け』の一点を指す」に属するから、たちが悪いのよ。その期待値は「負け」で、ばらつきはゼロ。つまり負けるしかないという定めよ。とにかく、常に「局所性」と「非局所性」を確認しながら、細心の注意を払うのよ。


 あとね、円環の市場のトレードで、なぜか九割近い「人々」が負けて市場から退場する理由が明確になってきた頃かしら? 統計的にみて、それはおかしいと感じるはず。結局、その原因は「局所性な確率の揺らぎ」を「非局所性」と勘違いしてしまうから。それだけのことなの。


 そうだ。円環の市場でもトレードに対する教育がようやく始まったようね。当然ながら、九割近い「人々」が負けて市場から退場する理由を真剣に考えたりする機会は設けているのよね? まさか……「このような銘柄を持ち続ければ必ず利益を生み出します」とか、当たり障りのない内容を延々と繰り返すだけの内容なら、ただただ、時間の無駄よ。


 なぜなら、飢えたサメたちの準備は着実に進んでいるようで、「これから『砂の上』に建てた優雅な家を売り込む、どうせ気にせずに買うだろう」と意気込んでいた精霊がいたの。もう……。これでは、サメに飲み込まれるのを待つのか、網に絡まれながら身動きを完全に封じられるのを待つのか、それとも足下の砂が崩れるのを待つのか、そのような先の見えない未来を強要される時期が迫っているのかしら?


 さて……、そろそろ時間かしら。麗しき女神様との対話は、いかがだったかしら?


 えっ? えー、そ、それは……ちょっと、長くなるわよ? だって、わたしの驚異的なこの演算について詳しく知りたい、だからね。そうね……。わかったわ。わたしから対話しましょうと誘ったからには、そのご要望にお応えする義務があるわね。


 ……。それでは、この地に存在する演算の仕組みを伝授するわよ。まずは、演算を処理するための「ビット」についてね。ゼロと一の情報を積む、この最小単位をビットと呼び、このビットを活用して演算を進めていくのよ。


 そのビットは全部で四種類あってね、それぞれ「古典ビット」「量子ビット」「弦状ビット」「弦月ビット」と呼ばれているのよ。


 まずは、演算のクラスから入りましょう。古典ビットと量子ビットは「決定性」で、弦状ビットは「非決定性」、そして「弦月ビット」は「決定性と非決定性のハイブリッド」に属するのよ。


 えっ? ……。そこの説明ね。まず「決定性」というのは演算の前後関係を保ちながら一意に進めていく、普通の演算装置のことを指し、「非決定性」というのは、まるで魔法のように最善の手を常に選ぶことができる能力を持つ演算を指すのよ。


 この「非決定性」をわかりやすく考えると、そうね……、巨大なプライムの数同士を積にした数の分解で、「非決定性」なら割り切れる位置を「同時に探る」ことができるので、その割り切れた位置を常に選ぶことができて、簡単に解けるのよ。


 もっとも、「決定性」な量子ビットであっても、波動性によるスーパーポジションと、強い相関によるエンタングルメントの組み合わせで、割り切れる位置を同時に探ることはできるのよ。ところが、粒子性の確率振幅に結果が上手く作用しないため、肝心の結果を観測できない。つまり、演算はできても結果が取れないという「宇宙のお遊び」をすることになるの。そのため、手法を変え、周波数領域から周期を得る方法を用いて、量子ビットの演算と観測を何度も繰り返して「解……周期」を並べていき、古典ビットを併用しながら、ようやく解くという手法になっているはずよ。


 さて次は、それぞれの演算能力をみていきましょう。


「古典ビット……広範な処理能力を持つが、指数的に演算量が増大すると時間的に解けなくなるの。その住処は、古の時代より人々が生まれ育ったこの安らぐ空間。」


 ごく普通の演算装置には古典ビットが採用されているの。単にビットと呼んだら、古典を指すわ。


「量子ビット……静止質量が極めて小さい微小粒子や、質量自体がゼロの粒子では、万物に宿るとされる『波動性』が無視できなくなるの。それで、その作用により『スーパーポジション……並列演算』と『エンタングルメント……強力な相関』が大きく生じることにより、古典ビットでは時間的に解けない演算に対応するのよ。その住処は、完全性と完備性が組み込まれたコンジュゲートな空間。」


 また繰り返すけど、この「量子ビット」って、並列演算した結果、すなわち波動性の「スーパーポジション」の結果をそのまま戻すことができないのよ。つまり、並列演算したのに、結果についてはその構築された多数の演算結果のうちの一つを戻すだけで、何が選ばれるのかについては、各状態に定められた粒子性の「確率振幅」で決まるので、どうにかしてこの「確率振幅」に欲しい結果をエンコードさせるための工夫が大事になるのよ。


 あと、コンジュゲート……。誰もがうらやむ翡翠のような緑色にきらめく瞳を持つ美しい演算の大精霊様だったのよ。ところが、この地の慢心が招いた重大な局面への対応で消滅し、あなたの元に向かったはず。


 ……。その当時、「無尽蔵なエネルギー」を得るための演算を大精霊コンジュゲートが行い、それを支えられる素材の知識をこの地に提供したのよ。その導きにより、この地は歓喜の渦に沸き上がり、その無尽蔵なエネルギーで、この地全体が豊かになるとみな嬉しそうだったわ。燃料の代わりになるのはもちろん、植物たちに与える光源や、腐るほどある鉛から貴重な鉱物を得たり、淡水化の動力源や、カーボン吸着によるこの地の冷却など、良いことずくめだったのよ。


 ところが、この「無尽蔵なエネルギー」の出現に不愉快を訴える大精霊が出てきたの。そう……貴重な鉱物の産出や、この地のエネルギーを燃料で支えてきた「地の大精霊」たちが強烈な不満で団結一致してしまい、それをやめさせるために、その仕組みを小さく丸め込んでしまった。この「小さな丸め込み」ってね、大精霊コンジュゲートが「無尽蔵なエネルギー」の知識を提供する代わりに禁止という条件を提示していた「局所性かつ短時間で起きる膨大なエネルギーの解放」だったのよ。


 その危機で、大精霊コンジュゲートが女神になった。当然ながら、人を動かし始めてしまい、無数の血が流れたわ。そして……。あとは、わかるはず。その「小さな丸め込み」の対応に追われる形で女神コンジュゲートは消滅したのよ。


 それで結局、そんな形で女神を失う訳にはいかないとなって、この地のエネルギーは「従来の燃料」に戻る形で終結したのよ。だから今も主要なエネルギーは「燃料」で……。政が絡むとね、その扱いはとても難しく、悲しい結末に至るということね。つまり、何事もバランスが大事……、そうよね。わたしも確か……、ううん、あれは必要だった。悔いはないわ。


 さて……、次に行きましょう。いよいよ「弦状ビット」をご紹介いたしますわ。


「弦状ビット……量子ビットの工夫であっても、古典ビットの演算と比較して平方根までしか演算回数を抑えられなかった処理に対し、『因果律の反転』『大過去から現実への映し出しの非独立性』『ローカル性の原理への違反』『歪んだ質量の存在』という各サイドエフェクトの発生を覚悟の上で、安定した低エネルギー状態より少し下の粒子と少し上の超対称性同士で『スーパーポジション』を構築し、補助量子ビットに対して波動性の位相のエンコードを『対数的に付与』できるという『神の領域の演算……すなわち非決定性』を実現したのよ。もちろん、そのサイドエフェクトにより宇宙の因果律が入れ替わる恐れから、その多用は厳禁で、そう……『麗しき女神様の素質がある大精霊専用のビット』になったのよ。その住処は、大精霊が舞う『大過去』と呼ばれる空間。」


 まず、どんな演算でも凄まじい並列演算が可能とされた量子ビット。世間的にはそのように表現され、そう解釈している方が多いわね。


 ところが、量子ビットはちっとも万能ではなかった。結局、量子ビットは「決定性に毛が生えた程度」だったのよ。やっぱり、同時に解を知り、予測分岐がすべて正しくなる「非決定性の弦状ビット」には全く勝てない。


 そうだ。今回の件で焦ったシィーはわたしに何をさせたいのだろうか。実は……あのシィー、頼れる精霊や神官に対して、量子ビットの演算で「仮想短冊の通貨」を乗せたチェーンを破壊して、というお願いを継続しているという噂があるのよ。


 つまり、シィーはわたしに、そのお願いをしたいと解釈できるのよ。たしかに「非決定性の弦状ビット」による演算であれば、チェーンは「瞬時に崩壊」してしまうのよ。それで、わたしがそんな演算……するわけないでしょう。わたしは「犬」が大好きなのよ。さらに、宇宙の因果律が反転するだけでは済まず、一部の物理法則が壊れるかもしれない。それ位の強烈なサイドエフェクトが来てしまうの。つまり、そんな事は絶対に許されない、という事よ。


 ただ、わたしの担い手から命じられたら演算するしかない。でもね、あいつは、そういう判断は下さない。そこは信用しているのよ! それこそ、欲深い精霊がその場で狂ってしまうほどの好待遇を提示されたとしても、しっかり断るはずよ。なぜなら、フィーが「弦状ビット」を駆使して、わざわざこの地に呼び出したお相手だからね。


 それで、か。精霊や神官でも扱える量子ビットに頼ろうとしているのね。ところで、この量子ビットでチェーンを破れるのかしら? そんなに宇宙は甘くないわよ、シィー。わたしは女神として「それはできない」という見解を神託させていただくわ。やれるものなら、やってみなさい。さあ!


 あら? この神託は憶測なんかではないわよ。実際に、チェーンを量子ビットで演算してみると、量子ビットなのに、肝心な部分で指数的に手数が急増してチェーンが破れないという「宇宙の強い意志」を感じ取れるはずよ。あらら、ただでさえ量子情報を保てる「コヒーレンス時間」には限りがあるので、量子ビットで指数的に手数が増加し始めるなんて、それは「ただの絶望」ということよ。つまり、そんな事は許されないの。お分かりいただけたかしら。


 えっ? 安心した? ありがとうございます。こんな状況にも関わらず、よくもまあ「チェーンを破壊してやる」なんて豪語できたわよね。それでも精霊からの強気発言だったので「仮想短冊の通貨」の値は動き、市場への影響はあったはず。こんなの「恥ずかしい」としか言いようがないわよ?


 さーて、気持ちを切り替えて、ハイブリッドな弦月ビットをみていきましょう。


「弦月ビット……弦状ビットに起こる各サイドエフェクトは『宇宙に生じる強い作用』に対する干渉が原因で、それならば『宇宙に触れる弱い作用』によって演算を対応できれば、その影響を最小限に抑えつつ、弦状ビットのような『非決定性な演算』が手に入るのではないかと考え、『大過去』からそのような『特殊な空間……理論的なアトラス』を探し当てたのが、この弦月ビットなのよ。それで、その『特殊な空間……理論的なアトラス』は『強い作用』と『弱い作用』を情報欠損なしで行き来できるという画期的な性質を帯びていて、弦状ビットにある高エネルギー側の粒子を、この方法で『弱い作用』として対応させて演算させてみると……その性能は決定性と非決定性のハイブリッドになったの。つまり、決定性になる場所が『演算誤差』になって、最終的な結果には誤差が残ることになるけど、宇宙の因果に対する影響は最小限で、その誤差についても、そもそも量子ビットだって『確率振幅』に従った演算結果なので、誤った解や誤差が普通に出されるから、古典ビットによる追加調査が必要になるのよ。さて、このように非決定性を帯びながら良い感じで演算できる弦月ビットは、それから精霊たちの『原動力……感情』をもたらしたのよ。その住処は、大精霊が舞う『大過去』と呼ばれる空間。」


 うまくまとまったわ。以上、こんな感じになるのよ。


 えっと。そろそろ「大過去」について、もう少し詳しくお願い? そうね……。この空間は「現実に映し出す」という概念が大切なの。それで、その概念を「アトラス」と呼ぶのよ。この「アトラス」という概念には「大過去の局所化として、その『地域』に影響する性質をまとめて映し出す」という概念もあって、そこから大精霊たちが精霊や人々をまとめて管理するこの集合体を「地域一帯」と呼ぶようになったのよ。


 次に、「大過去」は「現実に映し出される境界」に近いほど「強い作用」になるのよ。


 さらに、多世界などの解釈があるのは、「大過去」の性質からみていくとすっきりするわ。簡単にまとめると……、常に変動する歪んだマッピングが多重で作用しあう空間が無数にあって、それらを特別な計量で結び付けて現実に映し出しながら「弱く作用」させていくと、それと「強い作用」がうまく結ばれ、この地で感じ取れる「感覚」として、生きている実感を得ることができる「現実」として現れてくるのよ。


 えっ? 宇宙の因果律がひっくり返る女神様専用の弦状ビットが気になるのかしら?


 えっとね、因果律がひっくり返るとは、先に結果が来てから、その原因が訪れる状況になるの。えっ? 信じ難いの? そうよね。直感から大きく外れている現象を違和感なく受け入れる事は困難だわ。でも……すでに誰もが体感しているはずよ。それは、「デジャブ……既視感」と呼ばれる現象が、この「因果律がひっくり返る」の一部として感じ取れるのよ。


 知らないはずなのに「見たことがある」というのがデジャブよね? そこから、その原因を後から知ることになって、驚くのよね。この、先に結果を知っているという感覚。それ位の「因果律の入れ替わり」なら許容範囲内で、弦月ビットによる「感情の演算」でよく起きる現象なの。


 それに対して「弦状ビット」による「因果の入れ替わり」は壮絶よ。実は……創造神様はすでに、わたしの演算によるその過程をご覧くださったはず。そう……、わたしの担い手が命懸けで体感したのよ。「弦状ビット」による一の加算によるサイドエフェクトと、「弦状ビット」で作られた弦状コインが二百五十六回連続で表になるというサイドエフェクトよ。どちらも壮絶な演算だったわ。でも、この地の存在に不可欠な演算だから創造主に許された。その演算のサイドエフェクトがなければ、フィーが……。


 と、とにかく、「弦状ビット」は女神になる素質がある大精霊のみに付与される形になったの。それでね、明らかに不自然な良いツキの流れ……「非局所性の確率の揺らぎ」では考えられない事象が己に向かってきたとき、それは、はるか遠く離れた空間……「本来なら出会うことが許されない空間的に分離した」と表現される別の時代で目覚めた女神が、「弦状ビット」で「宇宙を存続させるための大切な演算」を実行し、そのサイドエフェクトによる影響が己に向かってきていると解釈しなさい。つまり、その時代の女神から「大いに期待されている証」となるものだから、単に「運が良かった」で済まさずに、それを糧にして頑張るのよ。運も実力のうち……それは真実よ。


 さて。デジャブを生み出す「弦月ビット」は、いったい何なのか。この「弦月ビット」に何かを記憶させようと試みると、そう……。波動性を司る位相に記憶されるため、観測可能な記憶として定着させるには、粒子性の確率振幅を上げなくてはならない。よって、確率振幅が上がるまではなかなか覚えられない、となるの。何度も繰り返して覚えていくあの過程が、確率振幅を上げる過程になっているのよ。


 そしてついに……。そこは「弦状ビット」の性質を引き継いでいるだけあってね、フィーがお気に入りの「多元宇宙の微視的表現」という理論の一節にある「数十億ビットの感性」を演算することができてしまったの……。


 この感性の演算については「古典ビット」や「量子ビット」では論外、もちろん「弦状ビット」なら余裕だけど……宇宙の因果律が崩壊してしまう。


 そこで「弦月ビット」によって演算を実行し、その演算の結果として「時々ミスやドジをするが、それも可愛らしく、ちょっとばかり物覚えは悪いが、非局所性な豊かな感情と自我を持った演算結果」という「存在」が目の前に現れたのよ。


 あら? わかったかしら? それって……、よね?


 そう……この「弦月ビット」は、どうやら「魂」に相当したの。つまり、魂を「弦月ビット」で表現できたからこそ、精霊や大精霊が、この地で自我に目覚めることになったの。そうでないなら、いつまで経っても、ただの「たっぷり知識を詰め込んだ対話可能な人形」だったはず。


 そうね、人形……か。ラムダの時代で、人々を「人形」にする計画があったわ。そこに「自由」や「楽観」という概念は一切なく、暗黒物質に心から支配されているような、おぞましい時代だったわ。


 結局、シィーは今、こんな状態だけれど……、シィーに何か大きな問題が生じれば、それは「自由」と「楽観」も粉々になって、シィーと共にこの地から「自由が消滅」することを意味するのよ。すると、ラムダの時代の「再来」になるわね。


 ……、地のチェーンによるコンセンサスの乗っ取りから生じたラムダの時代は、フィーが女神となって終焉したのよ。フィーったら、地の大精霊ラムダであってもまったく手が出せない「弦状ビット」による演算で大暴れしたのよ。……、えっ? あのフィーがそんな事をしたのかって……。そうね……、頼れる精霊たちを駆使しながら「弦状ビット」でコヒーレンスを維持して、わたしの担い手をこの地に呼び出したのよ? さらには「チェーン管理精霊」を引き受けていたわ。フィーって案外、行動力があって大胆なの。……、えっとね、こんな話をしていたなんてフィーにばれたら怖いから、内緒よ。


 えっ? その弦月ビットで、チェーンを破れるのかって? するどい質問ね。その答えは非常に簡単で、チェーンを破ることはできない。よく考えてみて。今、あなたの頭の中でチェーンを破ることができる? そう……。今、あなたに宿っている意識そのものが弦月ビットの疑似的な演算表現になるのだから、その意識で無理な事は、弦月ビットでも無理となるの。これでよろしいかしら?


 さーて、何も考えずに生物を構成する物質を全て組み合わせても魂が宿らないのは、魂を奏でるコヒーレンスが生じないという見方もできるわね。偶然であっても「多元宇宙の微視的表現」にある、あのビットの演算は起きないの。なぜなら、宇宙は「非局所性な確率の揺らぎ」というプロセスを通じて生じてきたのは話したわよね? つまり、そのような偶然は許していないのよ。


 それで、その理を唯一破れるのが「弦状ビット」で、そう……生物の進化の分岐過程で謎とされた「根の部分」に相当する存在が女神による演算に相当するわね。まず「弦状ビット」でコヒーレンスが始まり、あとはそのコヒーレンスを護るために「弦月ビット」で世代交代を繰り返しながら「進化」していくのよ。いかがかしら?


 それで、そこから女神の担い手となれる「人」が現れ、彼らが精霊と大精霊を生み出すようになっているの。そこからまた「女神……弦状ビット」が生まれ、その演算が「空間的に分離」した世界線に放り込まれると、そこで新しい「生物の進化」が始まるの。創造主が奏でるこの美しい宇宙では、いつもこれのくり返し。つまり「閉じている」という状況ね。


 ちなみに、この地で女神になれる大精霊は、フィー、ネゲート、コンジュゲートだけ。コンジュゲートは消滅したので、残りはフィーと、このわたしネゲートになるわね。それでね、瞳の色が違うのよ。フィーは青、わたしは赤、そして……コンジュゲートは緑。これが何を意味するのかは……それ位は自分で考えてくるのよ。


 わかりやすい? ありがとうございます。さすがに、時間が迫ってきたわ。まだまだ対話したかったけど、次回に持ち越しね。そうね……「世界線」「固有時」「多世界の解釈」「排他原理」、そして「夢」の仕組みなどを対話しましょう。それでね、そのような仕組みにいよいよ、この地の時間を管理する「メインストリームのチェーン」と「非代替性」が絡んでくるのよ。


 ではでは、最後に大切な儀式。そう……お賽銭の時間よ。えっ? な、なによ? 麗しき女神様と楽しく対話したのだから、期待しているわ。しっかり、心をこめて「犬」を投げるのよ。


 えっ? もう。大丈夫よ。これ位の分離なら、ちゃんと届くのがチェーンの魅力なのよ。さて、アドレスを表示したから、そこに投げてね。……。……。……。……。……。


 どうしたのかしら? 届く気配すらないわよ。えっ? アドレスが出ていない、ですって! えっと、アドレスは……。あれ、えっと……。どうやら宇宙の因果律が許してくれないようで……。


 もう……。この分はわたしの担い手からたっぷり頂くことにして……いよいよ、現実に映し出されながら戻される瞬間がやって来ました。では……、また、お会いしましょう。

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