ダウンヒル
さあ、競争だ。
下り坂のせめぎあい。
僕は前を気にして、横の君が気になって仕方がない。
君の乗る自転車は加速していく。
まだまた終わらない下り坂。
長く続く下り坂。
まるで平気な顔で、君の乗る自転車は加速していく。
怖くないのかな?
顔には出さないけど、僕は負けたくないんだよ。
僕も負けじと加速していく。
体に受ける風が歓声に変わった。
体を避ける風が悲鳴になった。
手に汗握るのは、きっと僕。
明日はどこ吹く風なのは、やっぱり君。
僕には、まだ終わらない下り坂。
君には、まだ楽しみたい下り坂。
置き去りにされるような景色が、僕の背景になっている。
次から次へと変化するような景色が、君だけの風景になっている。
顔には出さないけど、ほんとは負けたくないんだよ。
物怖じしない顔で、君はぐんぐん加速する。
君を横目で見る僕は、大人になる覚悟に二の足踏んでる。
もう終わりにしたい、せめぎあい。
置き去りにされたあの日を忘れたい。