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爆弾拾いがついた嘘 【旧バージョン】  作者: 生津直
第4章 命賭す者
92/116

92 クラス六

 デトンの安全化でも、発見から実際の処理までに数週間を要することは珍しくない。関係各所への連絡に始まり、通行止めや運休の段取り、避難の計画と通知、避難所の手配、報道対応、防護壁の設置、現場の警備。その合間に市長だの議員だのが現場を視察しに来ることもある。その辺りの対応は陸軍と行政の管轄だ。


 担当の処理士と補助士の選定のタイミングはケースバイケース。いざ選ばれた処理士は、処理当日を迎える前に最低一回は現場に(おもむ)いて実物を確認し、埜岩(のいわ)基地の軍員と補助士を交えて処理方針などの打ち合わせを行うのが通例だ。


 安全化当日の作業には、不発弾担当の軍員らが立ち会うが、彼らは緊急事態でも起きない限り、安全化や爆破そのものに直接手を下すことはない。


 今回のカルサは、発見された当日の時点で新藤、檜垣にお呼びがかかっていた。クラス六という埜岩の見立てに、実物を確認した処理士の二人も同意した。角度を変えて数枚撮影したX線画像で中の様子を細かく確認し、処理方法の話し合いが重ねられた。


 今後の参考のためという意味では安全化処理をした上で分解するのが理想的であり、それが果たして安全確保と両立可能かどうかが焦点。問題は、爆弾の威力が強い分、仮に爆破処理するとしてもデトン以上の危険が伴うことだ。


 議論の末の最終的な結論は、爆破処理の可能性も想定しながら、安全化で行けるところまで行く、というものだった。


 監督役は檜垣が務めるという。新藤はそれについて何の異存もないようで、二人の間での暗黙の了解なのかもしれないと、一希は思った。




 当日、新藤は普段と何ら変わりない様子で家を出た。檜垣もきっとそうだろう。


 一希は、今日ばかりは何をやっても集中できないことがわかり切っているため、無難な家事に徹することにした。ついボーっとしてしまう可能性を考えて念のため火気も避け、洗濯と掃除だけにしておく。


 台所の床に染み付いた汚れを執拗(しつよう)にこすりながらも、頭の中は新藤が今頃何をしているかで一杯だった。といっても、具体的な作業内容は一希の知識の範囲を超えている。


 難度の高いものはむしろ安全だという説もある。これほど複雑な等級を前にして油断する者はいない。つまり、今日は人為的なミスは起きない。だから事故はあり得ない。


 不発弾処理に絶対はないと知りつつも、一希は大丈夫だと繰り返し自分に言い聞かせた。事故筆録で読んだ事例や、血の海のイメージを必死に脳裏から振り払う。


 食欲も湧かず、昼食の代わりにスモモをかじっていると、ズ、ズン、という重たい地響きが聞こえた。はっと身を固くした直後、窓ガラスが(かす)かにビリビリと音を立てる。思わず立ち上がり、窓に駆け寄った。しかし音はそれっきりだった。


(落ち着いて……)


 時間的にも、他の何かであるとは考えにくい。クラス六のカルサがその威力を世に放ったとしか思えない。


 それにしても、ここは現場から確かに近いといえば近いが、避難範囲外だし、十キロ以上は離れている。風向きの具合によっては爆発音ぐらい聞こえるだろうが、果たして想定内の人為爆破だろうか。呼吸が荒くなる。


 全ては予定の行動に違いない。二人は規定通り事前に退避して安全圏内でその瞬間を迎え、今頃は軍員たちとともに後処理にあたっているはず。そう自分に言い聞かせはするものの、気が気ではない。


 テレビを()けてみても、カルサの処理の行方についてはどの局も報じていなかった。埜岩に電話してみるも、話し中で繋がらない。もはや何も手につかず、一希は大机の前に座ってただ時が経つのを待った。


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