49 制限時間
一希はいつも通り慎重に、この小さな爆弾の模擬的安全化を進めた。手順はもうすっかり頭に入っている。
全て解体し終えた時、緊張の糸が切れ、何とも言えない脱力感に襲われるのはいつものことだ。これを数十個単位で立て続けに解体していく新藤など、超人としか思えない。
ふうっと息をついて新藤の方を見ると、その手に握られたストップウォッチがこちらを向く。二十三分十秒。時間を計られていることに一希は全く気付いていなかった。
「まだまだだな。中級ならストロッカは制限時間十五分だ」
「意識すれば多分時間内でできるとは思うんですけど、失敗が許されないと言われるとやっぱり構えてしまって……」
「それでいい」
「えっ?」
「失敗が許される現場なんてものが存在すると思うか?」
「……いえ」
「いいか。時間の短縮は安全が百パーセントだという前提があって初めて意味を持つ。急いだ結果ミスをすることは絶対に許されないと思え」
「……はい」
「中には最初から短い時間制限の中で練習して、ミスの方を徐々に減らしていくというアプローチを取る奴もいるだろうが、それは結果的にミスの確率が下がることにしかならん。少しずつ減らしたものが確実なゼロになるとは、俺は到底信じられん。だからお前は最初から絶対のゼロを出発点にしろ」
(絶対のゼロ……)
「二ヶ月経って、もしどうしても時間内にできなければ、その時は俺が責任もって何とかしてやる。今はとにかく完璧なまま数をこなすことだ」
「はい」
新藤は、大机に一番近い道具棚の一番下の段からいくつかの段ボール箱を取り出した。空いたスペースに、今練習に使った部品と工具類をまとめたプラスチックの箱を納める。同じ段の隅には小ぶりの籠がすでにあり、一希が扱う書類を入れてあった。「冴島の棚」だ。
「今日からはここからここまでがお前の棚だ」
「ということは……」
「好きな時にこれを使って練習しろ」
「あ、ありがとうございます」
「防爆は一人じゃそうそう着れんから省略していい。かかった時間は毎回計って記録だけはしろ。短縮されなくても、逆に増えちまっても焦るな。最低条件はとにかくミスがないことだ」
「はい」
「さて、腹減ったな」
「あ、今日は……鱈の照り焼きとアサリのしぐれ煮がありますけど」
「おお」
週末のうちに作り置きしておいてよかった。
「あとお吸い物も」
「ん」
鍋でおかずを温めながら、一希の心は浮き立っていた。今日から自主練ができる。新藤の見ていないところでたっぷり練習して驚かせてやりたい。




