第74話~極めた魔法~
魔極の職業も貰えたし、
タメ無しで魔法を撃つ方法も教えて貰ったし、
そろそろ次に・・・待てよ。
この人なら武を極めた職業も知っているかも?
最後まで戦っていた訳だし。
「もう1つ聞いても良いですか?」
「なあに?」
「武を極めた人の事です。」
「あいつの事ね。」
「あいつ?」
「私の幼馴染みだよ。」
「幼馴染み・・・。」
「あいつは私の魅力に気付かない愚か者だね。」
「また勘違いしているんじゃ・・・。」
「それは無いよ。
何十年アピールしても気が付かないのだから。」
「何十年・・・。
告白した方が早いのでは?」
「女子から想いを伝えるなんて恥ずかしいこと、
出来る訳ないでしょう!」
そういう時代だったのかな。
「あいつは自分を鍛えることに夢中でね。
私を超えると息巻いていたよ。」
「強いんですか?」
「強いよ。
武において、あいつに勝てる者など
見た事がないね。」
「でもあなたは」
「スィーで良いよ。」
「スィーさんはその人よりも強いのに、
何で好きになったんですか?」
「まだ13の頃だったかな。
住んでいた村に魔物の大群押し寄せてね。
子供だったとはいえ、私もあいつも村の誰よりも
強かったからね。
私達も戦闘に参加した・・・だけど魔物の数が
多すぎた。
次から次へと村人が死んでいき、
そして私のMPも尽き、覚悟を決めた時、
あいつが私の前に立ったんだ。
そして襲いかかってくる魔物を・・・」
長い。
話が長過ぎる。
なんでこう年を経ると無駄に話が長くなるのかね。
しかも惚気話も入ってきたし。
要約すると魔物に襲われたところを助けられて
惚れてしまい、村人の無念を晴らすために
魔王退治の旅に出て、その間もアピールし続けるが
実らず今に至るという感じだね。
「・・・という訳だよ。」
おっ、話が終わったぞ。
「よく分かりました。
その人は今どこにいるんですか?」
「向こうの山にいるわ。」
隣だったのか。
もしかして説明書に書いてあった、
最後に戦った場所って・・・。
「その人と最後に戦った場所って
ここなんですか?」
「・・・最後の戦い?
あれの事ね・・・。」
「あれ?」
「あまりの鈍感振りに、少しイラッとしてね。
魔法を放ったら思った以上になったのよ。」
「それが魔を極めた魔法・・・。」
「そうね。
世界一の山を2つに分けてしまったものね。」
「2つってまさかここと向こうの山!?」
「そうよ。」
凄いね。
一体どんな威力の魔法なんだろう。
「でも2つに分かれたのは私の魔法だけではなく、
同時に放ったあいつの技がぶつかった結果よ。
相殺出来れば無事だったのでしょうけど
お互いに跳ね返ってしまったから
どうにもならなかったわ。」
極みの一撃が2つも。
想像を絶する威力だったんだろう。
しかし説明書と違って随分間抜けな話だね。
極みの一撃のきっかけが痴話喧嘩って。
・・・いや、むしろ必然か?
この世界の争いが始まったのも
痴情の縺れだったしね。
男女の心はすれ違うのが世の常か・・・。
それはともかく
「その魔を極めた魔法を教えて貰えませんか?」
「良いわよ。」
結構あさっりとOKが貰えたぞ。
「あなたは・・・」
「耕一です。」
「コウイチね。
コウイチはオールサウザンドソードを
使えたわよね。」
「はい。」
「あれはそれぞれの属性を別々に使っているけど、
魔の極は全てを1つにするのよ。」
「1つに?」
「こうやって・・・。」
スィーさんが右腕を頭辺りに、
左腕をお腹の前辺りに構えたぞ。
右手に火と左手に水の様な球体が出来たぞ。
右腕と左腕を時計回りに動かして、
今度は両腕を横に広げた状態で風と木の属性の
球体を作り出した。
更に回転して火の上に土、水の下に氷、
風の横に金、木の横に雷の球体が出来た。
更に両腕を斜めに広げて光と闇の球体を
作り出したぞ。
それを両手に圧縮していき1つにしたのかな?
両手の間にに何かあるのは分かるけど、
何も見えないね。
「これが極めた魔法・・・魔極だよ。」
「思ったよりも強くない気も・・・。」
「本来はここに器に貯めた力と、
自分の持つ全てを変えて放つからね。
今は最小に押さえてあるのよ。」
「なるほど。
最初の動きも必要何ですか?」
「そうね。
今のは分かりやすくゆっくりやって見せたけど、
本来は一瞬でやるけどね。」
「なるほど。」
「じゃあ、受けてみてね。」
「はい・・・って、受け止める!?」
「そっちの方が早く覚えれるでしょう?」
「そんな事はありませんよ!?」
「それに思ったよりも強くないみたいだし。」
「そういう意味じゃ・・・。」
「もう放ったからね。」
「ちょっ!?」
見えない何かが腹に当たったぞ。
そしてそのまま吹き飛ばされた・・・。
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「随分遅かったね。
戻って来ないのかと思てた所よ。」
「山の入り口まで吹き飛ばされましたからね。」
おかげでまた魔物と戦いながらここに
来ることになったよ。
「まあ、良いわ。
じゃあ、やってみせて。」
「そんな、いきなり。」
「もう一度食らった方が良いかしら?」
「やらせて頂きます。」
まずは頭の前辺りに右腕を、腰辺りに左腕を構えて
右手に火、左手に水。
おっ、上手く行ったぞ。
お次は時計回りに腕を動かして、
右手に風、左手に木・・・あっ。
火と水が消えてしまった。
留めて置くよう意識しないと。
もう一度・・・火・水・風・木。
そして氷に土、雷に金。
最後は光と闇で・・・よし!
ここから圧縮して・・・いかない?
それどころか押しかえされていくぞ。
「言い忘れたけど、その状態で失敗すると
反発して自分も含めた回りの被害が酷いから
注意してね。」
そういう事はもっと早・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「おっ、まだ生きてるね。」
「生きてる・・・?」
「爆発して吹き飛んだんだよ。」
良く生きてたね。
最小限に力を押さえてたからかな。
「爆発したって事は、
火の力を強く込めすぎたんだね。
力は均等にしないとダメよ。」
そういう事は、もっと早く教えてくれ。
「さあ、起きたのならさっさっと続ける。」
教わる相手を間違えたかな?
とはいえ、やらないともっと酷い事に
なりそうだから・・・。
今度こそ・・・これは良い感じだぞ。
「出来たね。
私のと相殺してみなさい。」
「えっ?」
「もう放ったよ。」
「ちょっ!?」
そういう事は、もっと早・・・
こうして特訓は続けられた。




