第70話~光魔道士~
白い服を着た集団が冒険者の館に入って来たぞ。
「いい加減解散してくれないか?
お前らみたいなのがいると迷惑なんだよね。」
光魔道士みたいだね。
「お客さん、すまないね。
少し大人しくしていれば、帰って行くから。」
「良く来るのかい?」
「あぁ。
闇魔道士が目障り何だろう。」
光と闇は交わらないのかね。
でも両方出来ないと大魔道士にはなれないのに。
「話の途中だったな。
何を聞きたいんだい?」
「極職について知っている事があったら
教えて欲しい。」
「極職か。
確か・・・」
「闇魔道士如きが知って良い職では
ありませんねぇ。」
光魔道士の1人が俺の隣に座ったぞ。
「席を座ったんなら、
何か頼むのが礼儀だとおもうけど?」
「冗談でしょう?
闇魔道士が飲むような下賎な物を
口に出来る訳がないでしょう?」
「舌が貧しい人間には高級なお酒の味なんて
分かる訳ないか。」
「お客さん!」
「良い度胸ですね。
ここには初めて来たお上りさんかな?」
「だったら?」
「ここでのルールを教えて上げましょう。
・・・表に出なさい。」
「分かったよ。」
早速出ていく光魔道士。
その後を追わずにお酒を飲む俺。
「しかし表に出ろって言う人は、
何で必ず着いてくると思うんだろうね?」
「お客さん、不味いですよ・・・。」
「大丈夫ですよ。
俺の方が強いしね。」
「そうではなくて・・・」
「貴様!何しているんだ!?」
お戻りになった様だ。
「お酒を飲んでいるんだけど?」
「表に出ろと言ったはずだぞ!」
「出ていく間抜けな姿は、
良い酒のつまみになったよ。」
「貴様!」
「ソンブルマリオネット」
「なっ!?」
相手が魔法を放つ前に操ってしまえば
何も出来ないね。
ついでに指を鼻に突っ込みながらく~るくるっと。
「ダンスのセンスがあるんだね。」
「貴様!」
「鼻に指を突っ込みながら怒っても
笑い話にしかならないね。」
「この私にこんな事をして、
許されるとほもふなよ!」
指で口を広げさせたから、最後は何を言っているか分からないね。
「お客さん!もうやめてくれ!」
随分優しい店主だね。
ここまでにしておくか。
「店主に感謝するんだね。」
「すぐに後悔させてやるよ!」
と言いながら出ていったぞ。
「お客さん、やりすぎだ。」
「誰も傷付いてないし、店にも被害はないし
大丈夫でしょう。」
心はどうだか知らんけどね。
「そういう事じゃないんだ。」
「どういう事?」
「奴等は争いの口実が欲しいだけなんだよ。
要するに、これから光魔道士が全員で
攻めてくるという事だ。」
「そんな大袈裟な・・・。」
「残念だが、大袈裟ではないんだ。」
店主の顔は真剣だ。
どうやら本当に攻めてくるんだね。
「・・・申し訳ない。
でも今回は俺の所為だからね。
俺が何とかするよ。」
「無理だな。
全員がお客さんを狙っているなら兎も角、
目的は町を潰す事だから、全員町を襲ってくる。
お客さん1人では町の全ては守れないだろう?」
それは面倒だね。
でも俺の所為で町が滅びるのも夢見が悪そうだ。
「やれるだけやってみるよ。」
「無茶だ!
今、仲間を集めて・・・お客さん!?」
これ以上話していても意味はないからね。
・・・勘定を払うのを忘れたから
後で払いに戻らないとだけど。
それは一旦置いといて、まずは町を守る壁を・・・
「ソルミュール!!
フレイムミュール!!」
土の壁と炎の壁を大量に作って町を囲んだぞ。
2重の壁だから直ぐには突破出来ないね。
後は町の入り口で向かえ討つとしよう。
「君!今出たら危険だ!
いきなり壁が現れたんだ!
何が起きるか分からないぞ!」
「すいません、その壁は私が作ったんです。」
「君が?」
「そんな事より、これから光魔道士が全員で
攻めて来ます。
門番さんは避難して下さい。」
「光魔道士が!?
誰かやらかしたのか!?」
「・・・すいません、俺がやらかしました。」
「君が!?」
「だから私が1人で何とかするので、
手出しはしないで下さい。」
「しかし・・・。」
「!?
もう話す時間もない、急いで!」
随分早いお帰りだよ。
「貴様か。
我々の仲間に手を出したのは。」
「手は出してないよ?
勝手に踊ってただけだしね。」
「闇魔道士を極めて調子に乗っているのは
本当みたいだな。」
「凄いのは闇魔法だけではないよ?
この壁を見れば分かるでしょう?」
「確かに町を囲う程の壁を作るとは
天晴れだな。」
「そう思うなら引いてくれないかな?
そもそも最初に絡んできたのは
そっちなんだからね。」
「闇は光には勝てない。
そんな常識も知らないのかね?」
「知っているけど、俺には勝てないさ。」
「大した自信だ。」
「まあね。」
「だが、我々はお前1人を相手にする程
暇ではない。」
「なるほど。
俺1人に倒される不名誉は
味わいたくないと。」
「くだらない挑発には乗らんぞ。」
「それは残念。
でも町に入るには俺を倒すしかないけどね。
町は壁が囲んでいるからね。」
「味方も無しに足止めね。」
「味方ならそこにいるよ。
ソンブルマリオネット!
取り敢えず10人位味方になったよ。」
「闇は光には勝てない。
先程教えたはずだがね。
ルミエールマリオネット!」
光魔法Ⅴの光の人形劇だ。
味方の能力を2倍にし操作することが出来る。
つまり俺が操った者を全て奪われた上に、
能力が2倍になったという事だ。
「どうやら味方はいないようだな。」
「そんな事はないよ。
ゾンビ・骸骨戦士・死霊・巨大骸骨・
魔剣召喚!!」
全部で100体程召喚したぞ。
「これは驚いた。
死霊魔道士まで極めているのか。」
「まあね。」
「だが無駄な努力だったな。
ルミエールゾーン!」
光魔法Ⅳで一定の領域にいる敵を
光で攻撃する魔法だ。
一瞬で消滅してしまったぞ。
「これで分かったろう?
闇は光には勝てないと。」
「良い勉強になったよ。」
「素直じゃないか。
光魔道士として一から鍛え直してやっても
良いが・・・。」
「遠慮しておきます。」
光魔道士も既に極めているしね。
取り敢えず闇魔法は通じないのが分かったし、
他で戦うと・・・
「また貴様か。」
俺の目の前に男が現れたぞ。
・・・どちら様でしょう?




