第62話~勇者誕生~
そういえば・・・勇者ポイントなんてのが
あったっけ。
そう思った瞬間、青白い光が辺りを包み込み、
氷の塊を消し去った。
「コウイチ君、スルマ君、大丈夫かい?」
「ダージーさん・・・。」
いつの間にか俺とスルマがダージーさんの両肩に
いるぞ。
ダージーさんが青白く輝いているところを見ると、
氷の塊を消し去ったのもダージーさんの様だ。
「どうやって氷の塊を・・・?」
「急に力が沸き上がってきたんだ。
今なら魔王四方陣も倒せそうだよ。
2人は休んでて。」
俺とスルマを地面に下ろしてカルヴァに
向かって行った。
一体どうなって・・・なるほど。
ダージーさんは勇者になれたんだね。
第1職業が勇者に変わっている。
いや、職業が勇者のみになっているね。
勇者・・・
他の者から勇者として一定以上の支持を得ることで
自動的に転職する。
勇者は転職可能な全ての職業に就いている状態で、
更に職業ボーナスも素質値に加わっている。
また獲得した経験値の三分の一が
全ての職業に加算される。
凄まじい能力だね。
勇者単体の強さに加えて転職可能な全職業じゃあ、
誰も勝てないのでは?
「コウちゃん、スーちゃん、大丈夫!?」
「なんとかな・・・。」
「ダージーさんに助けられたからね。」
「凄まじい強さじゃのぉ。」
「そりゃあ、勇者なんだから強いに
決まってるよ。」
「勇者!?
ダーちゃんが勇者になったの!?」
「孔雀眼で見たから間違いないよ。」
「じゃが、何故このタイミングで?」
「多分、ダージーさんが今までの旅で
救ってきた人々が、
ダージーさんが勇者になることを望み、
俺とスルマも望んだことで、
条件を満たせたんじゃないかな。」
「人数が条件じゃったのか。」
「分かったところで、相手に認めさせるのは
かなり難しいと思うけどね。」
「ダーちゃんは良い人だからね!」
まさに漫画の主人公だね。
きっと名台詞を言いながら
今も戦っているんだろうね。
漫画と違って全く聞こえないのが残念だけど。
良く見たら翼も無いのに空を飛んでるし。
さすが勇者、何でもありだね。
ダージーさんだけでも大丈夫そうだけど、
援護くらいはした方が良いかな。
確か持っているアイテムに
MPリキッドが・・・あった。
これを飲んで・・・物凄く不味いな。
でもMPは回復したから
「エイン・・・あれ?
発動しない・・・。」
「コウちゃん、MPを使いきったら
半分くらいまで回復するか、
半日くらい休まないと魔法は使えないよ?」
そんな制約が・・・あったな。
説明書に書いてあったのを忘れていたよ。
今まで使いきった事は無かったしね。
となると・・・
「大人しくダージーさんの戦いを
見守るしかないか。」
「ダーちゃんなら大丈夫だよ!
圧倒してるもん!」
「魔王も倒せそうな勢いじゃな。」
魔王・・・か。
ダージーさんがはるかに剣を向けたら・・・
全力で阻止するな。
今のままだと抵抗するまでもなく
負けてしまうけど。
でも上級職の更に上の職業、極みと呼ばれる職業。
そして更に上の職業・・・。
誰も辿り着いたことがない領域。
そこまで辿り着けば勇者にも勝てるのかな?
最もはるかが魔王なのを知っているのは俺だ・・・
違う。
あの時あの場所にはサクラさん達もいた。
そして俺はあの時、
はるかを魔王と言ってしまった。
・・・どうやら俺は脇役ではなく、
魔王を守る悪役。
そして勇者に倒される哀れな人間・・・か。
「コウちゃん、大丈夫?
顔真っ青だよ?」
「・・・大丈夫だよ。
ちょっと疲れているのかな?」
「MPを使いきったんじゃから仕方あるまい。」
「コウちゃんは休んでて!
ダーちゃんのサポートは私がするよ!」
「いや、どうやらその必要は無さそうだ。」
「決着が着いた様じゃのぉ。」
≪魔法拳士がLv58になりました
強弓技士がLv68になりました
死霊魔導士がLv70になりました
死霊魔法Ⅴ:魔剣召喚を覚えました
死霊魔導士のLvが最大に到達しました
魔法弓士がLv49になりました
狂戦士がLv68になりました
大魔道士がLv59になりました
大盾士がLv70になりました
大盾術Ⅴ:攻撃無効を覚えました
大盾士のLvが最大に到達しました≫
魔王四方陣・カルヴァの首を
ダージーさんが斬り落とした。
回りの冒険者から勇者コールが上がっている。
やっぱりダージーさんは主人公の器だね。
「コウイチ君とスルマ君は大丈夫かい!?」
「俺なら大丈夫ですよ、ダージーさん。
スルマも少し寝ているだけみたいだしね。」
「良かった。
それにしても勇者って呼ばれるのも複雑だね。
僕は勇者に成れてないし。」
・・・自動的に職業が変わったから
分からないのも無理ないか。
「ダーちゃんは勇者になったんだよ!」
「えっ?」
「孔雀眼でみたから間違いないよ。」
「僕が・・・勇者に・・・。」
「おめでとう。
やっぱり勇者に一番近かったのは
ダージーさんだったね。」
「あ・ありがとう、コウイチ君。」
「今日は祝勝会と勇者誕生パーティーだね!」
「楽しみじゃのぉ。」
「エヒちゃんとシダちゃんも教えてあげないと!」
そういえばエヒガンさんとシダレさんがいないな。
ダージーさんの仲間もいないし。
「エヒガンさん達は何処にいるんだい?」
「この辺りにいる魔物が逆から一斉に
攻めてきたからそっちに行ってるよ!」
「ダージーさんの仲間も?」
「うん。
カルヴァを倒した直後に
散り散りに逃げていったから
あっちも大丈夫だと思うよ。」
「一応わしが見に行ってみるかのぉ。
ワープ!!」
多少残っていたとしてもエヒガンさん達や
ダージーさんの仲間達がいるなら
なんの問題もないね。
さて、俺はそろそろ先に進むとするか。
みんなで集まってパーティーなんて、
俺の趣味じゃ無いしね。
「じゃあ、俺はもう行くよ。」
「え?
今から祝勝会をするのに、来ないのかい?」
馬鹿正直に答えると面倒だから
「まだ用事が残っているんでね。」
と言っておけば上手く抜けれるね。
「そうなのかい?
力になれるなら僕も手伝おうかい?」
「勇者様の力を借りる程の用事ではないよ。」
来られても困るだけだしね。
「じゃあ、そろそろ」
「待って、コウちゃん!」
一歩踏み出そうとした俺を、
サクラさんが俺の腕を掴んで呼び止めた。




