第61話~魔王四方陣~
「馬鹿な・・・六魔将がこんなに
あっさりと・・・。」
主役の元に仲間やライバルが集まって
大盛り上がりの展開だと思ったんだけど、
敵が弱すぎて今一つ盛り上がらなかったね。
後はシャトーを倒せばお仕舞いだ。
もう既に尻餅をついているシャトーの眼前に
ダージーさんが剣を出しているから、
数秒後には・・・待てよ。
こういう展開の場合、このまま終わるなんて事は
ないよな。
となると次の展開は
1.シャトーが真の姿を現す
2.六魔将が全員合体する
3.新たな強敵が登場する
って所だけど・・・。
あの状態からシャトーが真の姿を現しても
遅すぎるから1はないな。
同じ理由で2も無さそうだ。
となると残りは・・・
「六魔将総出を退ける程の実力を持つ人間が
いるとはな。」
3番って事だね。
「魔王四方陣の・・・」
「カルヴァだ。
覚える必要は無いがね。」
魔王四方陣ね。
魔王の四方を守る存在なのかな?
白い虎が人の形をした所を見ると、
四神をイメージした敵って感じだね。
「コウイチ君!
カルヴァには勝てそうかい?」
「あっ、今見るよ。」
孔雀眼は本当に便利だよ。
どれどれ・・・。
「不味いね。
かなり強い。
だけどこっちには仲間が揃っているから
勝てる可能性も・・・」
「僕らの頑張り次第って事ね。」
「いや、ここは一旦引こう。」
「そんなに強いのかい?」
「本来の目的は六魔将と魔物の進行を
止めることでしょう?
目的は達成出来ているんだから
目的以上を求めるより、
次戦に備えて力を蓄えないと。」
「随分冷静な判断だが、
この私から逃げられるとでも?」
「生憎、時間稼ぎは大得意でね。
さあ、ここは俺に任せてダージーさん達は
逃げてくれ。」
「・・・分かったよ。
魔王四方陣は特定の属性を極めていると聞くよ。
カルヴァは風と氷だか、注意して。」
五行思想だと白虎は金って話だけど、
ここは異世界、違っていても当然だね。
さて、風と氷ならそれより強い金か雷で
攻撃すれば良いのだから
まずは雷で行くか。
「トネールトゥルビヨン!!」
「ダイヤモンド・ダスト!!」
氷系なら雷であるこっちが上!?
「グッ・・・。」
詠唱も溜めも無しで、俺の攻撃を消した上に
氷が俺に突き刺さったぞ。
一体何が・・・いや、現れた前から溜めていたかも
知れないな。
ならばもう一度。
「サントネール!!」
「ダイヤモンド・ダスト!!」
氷が雷を弾いて、全てカルヴァの回りに
落ちてしまった。
どういう理屈か分からないけど、
溜め無しでも高威力の攻撃が出来るみたいだね。
「コウイチ君!」
「ダージーさん。
逃げてって・・・」
「やっぱり仲間を置いて逃げるなんて
性に合わないよ。」
「ダージーさんはやっぱり主人公に
向いているよ。」
「仲間を逃がして1人で戦う方が
主人公に向いているんじゃないかな?」
「じゃあ、私はヒロイン?」
「わしが主役の方が人気が出るぞ!」
「若い者の言葉は良く分からんのぉ。」
それは若いからではなくて
異世界人ばっかりだからだね。
取り敢えず・・・
「カルヴァを倒した人が主人公って事で
どうかな?」
「それは良いね。」
「私は可愛いヒロインで良いよ!」
「わしが貰った!!」
スルマが真っ先に飛び出した。
続けてダージーさんにサクラさん。
ヨルンのお祖父さんは詠唱し始めた。
俺も行くか!!
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現実は甘くない・・・か。
「コウイチ君、大丈夫!?」
「なんとか・・・ね。」
立ち上がれないけど。
スルマとサクラさんは、既に倒された。
ギリギリ生きてはいるみたいだけど。
ダージーさんも立っているのがやっと
といった所だ。
「良く戦った方だが、相手が悪かったな。
とは言え、殺すのは惜しい。
仲間にしてやっても良いのだが・・・。」
「断る。」
速攻で答えるところが主人公っぽいね。
「人間という生き物は、
なぜ負けると分かっていて挑むのか・・・。」
「希望はいつでも未来にある。
だから僕は諦めたりはしない!!」
・・・なんだ?
体に力が沸いて来たぞ。
「主人公は渡さんぞ・・・。」
スルマが立ち上がった。
「私は可愛いヒロインなんだから・・・!」
サクラさんも。
回りのその他大勢も立ち上がって来たぞ。
なるほど。
これがダージーさんが持つ、意欲上昇の力か。
「何度立ち上がったところで、私は倒せん。
これ以上は時間の無駄だ。
そろそろ決着と行こう。
イスベルク!!」
なんだ、急に暗闇が・・・嘘だろ?
真上に巨大な氷の塊が現れたぞ。
不味い。
俺は逃げれても、他の冒険者は逃げ切れないぞ。
・・・仕方がない。
「ロケットブースター!!」
ほんの10数秒でも落ちるのを遅らせれば、
逃げる時間は出来るはず。
「コウイチも飛べる様になったのか!!」
「スルマ!なんで!?」
「考えることは同じって訳だ。
空を飛べるのはわし達だけみたいだからな。」
「じゃあ、一丁気合い入れていくか!!」
「おうよ!
き・ん・に・く!!」
グッ、重すぎるぞ!
スルマは・・・空中を蹴りながら必死に
持ち上げてる。
かなり間抜けな姿だか、仕方がない。
しかし予想通り止めることは出来ず、
落ちるスピードを遅くするので精一杯だ。
みんなが避難するまで耐えなくては・・・。
「コウイチ君!スルマ君!みんな避難出来たよ!
2人もそこから離れるんだ!」
ダージーさんの声だ。
「スルマ、聞こえたか?
俺達も逃げるよ!!」
「おう・・・?」
落下していくスルマの腕を何とか掴んだ。
「スルマ、しっかりしろ!」
「わしは潰されても筋肉で耐えてみせる。
コウイチは逃げてくれ。」
「馬鹿な事を・・・?」
ロケットブースターが切れたぞ。
どうやら俺の方もMPが切れたらしい。
「悪い、わしの所為で・・・。」
「気にしないで良いよ。
それに、筋肉で耐えられるんだろう?」
「そうだな。
コウイチとの決着もまだだしな。」
「それは遠慮しておくよ。」
「残念だ。
それと今回の主役の座は
ダージーに譲るしかないな。」
「そうだね。
主人公・・・勇者ダージーに期待するかね。」
「それは良いな。
ダージーなら勇者になれるさ。」
勇者。
そういえば・・・。




