第58話~六魔将~
洞窟に入って1週間。
まだ原因は掴めていない。
敵も強くなっていく一方だ。
しかし苦戦する事もなく、
むしろどんどん余裕が出てきている。
敵が強くなるスピードよりも、
俺が強くなるスピードの方が早いからね。
魔法職なんて上級職の大魔道士に
なっているくらいだ。
錬成武装士も転職可能だし、
上級戦闘職も、剣聖・拳聖・槍聖・盾聖・弓聖・
斧聖と6個も転職可能だ。
雑魚相手に負ける理由なんて何処にもない。
ただちょっと気になるのが、
上級魔法職の大魔道士がLv57になっても
1つも魔法を覚えてくれないって事かな?
ヨルンのお祖父さんが詠唱系の魔法を
放っていたから覚えるとは思うんだけどね。
この問題は洞窟を出たら考えるとして、
今の最大の問題は食料だ。
1日1食、夕食だけ俺が持っていた
食事をしていたのだけど、
それももう1食分しかない。
そうなるとここから先はクストのみ。
ご飯派の俺がクストだけで10日以上も
耐えれるんだろうか?
「コウイチさん?」
「ん?どうしました?」
「準備が出来ましたけど、出発しないんですか?」
「あっ、行きましょう。」
食料は考えても耐えるしかないから、
今は最速で進むとしよう。
「五芒斬!!」
剣豪術Ⅴで五芒星を描く連続五回斬りだ。
続けて
「ゾンビ・骸骨戦士・死霊・巨大骸骨召喚!!」
死霊魔法Ⅰ~Ⅳだ。
これで後ろと横の守りは万全だ。
後はただ進むだけ。
気合いを入れて一気に・・・
「コウイチさん!!
前に大きな空間が見えます!!」
気合いを入れた所で、まさかのゴール!?
地図を確認すると、もうこの先の道は無い様だ。
なら一気に決着と行くか!
まずは大きな空間の手前まで進んで・・・今だ!!
「ルミエールゾーン!!」
光魔法Ⅳで一定の領域にいる敵を光で攻撃する
魔法だ。
これでこの大きな空間内の敵は消滅したぞ。
後ろから来る魔物は骸骨達に任せて、
原因を探さないとね。
「何か魔物発生の原因になりそうな物は
ないかい?」
「あっ、一番奥に小さい銅像があるよ、
お兄ちゃん。」
「本当だ。
何の銅像だろう?」
「魔族の銅像みたいですね。」
「魔族の銅像か。
ということはこれを壊せば解決かな?」
「魔物が集まる前に、早く壊してコウイチ!!」
「分かったよ。
スラッシュ!!」
一撃で銅像が真っ二つだ。
ん?
洞窟内の黒いエネルギーみたいなものが
銅像に吸収されて行ってるぞ。
「お兄ちゃん、魔物が消えていくよ。」
大きな空間の外にいた魔物が霧散していっている。
どうやらこの銅像が原因で間違いなかった様だ。
霧散した魔物も全て銅像に
吸収されているみたいだし。
「これで終わったのね。」
「疲れたよ~。」
「コウイチのお陰で生き残れたよ。」
「みんな無事で良かったよ。
何時までもここにいてもしょうがないから、
戻るとしようか。」
「待って下さい、コウイチさん。
一応証拠品として銅像も持っていきたいので。」
「そうだね。
銅像はラーヴェさんのアイテムボックスに
格納して行きましょう。」
「あれ?
銅像がないよ、コウイチ。」
「え!?
本当だ、無いぞ。
銅像も消滅しちゃったのかな?」
「まさか、再びこの姿に戻れるとはな。」
銅像があった場所の空中に、何かが浮かんでいる。
「あっ、あれはまさか・・・。」
「お姉、知ってるの?」
「ほう。
封印されて長い時が経ったが
まだ私を知っている者がいるのか。」
「で、誰なんだい?」
「私は魔王様の配下・六魔将の1人、アスー。」
「やっぱり、六魔将最強の・・・。」
「封印を解いた礼だ。
苦しまぬ様、殺してやろう。
その後に私を封印したカシンヤールを
探し出して殺すとするか。」
Lvアップコールが無いところをみると、
まだ戦闘は終わっていなかったという事か。
逃げるのも無理そうだし、戦うしかなさそうだね。
六魔将最強の魔族に勝てるのか・・・いや、
まずは敵のステータスをチェックして・・・。
・・・カシンヤール?
どこかで聞いた名前の様な・・・。
「やれやれ、封印を解くなと
忠告していたはずなのじゃがのぉ。」
「貴様は!!」
「久しいのぉ、アスーよ。」
「カシンヤール!!」
ヨルンのお祖父さん!?
そういえばそんな名前だったね。
「お主はコウイチじゃったかのぉ。
わしがまた封印をするから下がっておれ。」
ただのボケ爺さんだと思っていたけど、
ヨルンのお祖父さんが封印していたのか。
なら任せた方が良さそ・・・
「ちょっと待って、ヨルンのお祖父さん!!」
「なんじゃい?」
「封印したら、またこの洞窟に魔物が
無限に出てきてしまうよ!!」
「なんじゃと!?」
「そういう事だ。
私を完全に封印するには
力が足らなかった様だな。
しかも全盛期を過ぎたお前に
今の私を封印出来るのかな?」
「こいつは困ったわい。」
「1人でここに来たのが運の尽きだ。
纏めて殺してやろう。」
「死ぬのは老いぼれ1人で十分じゃ。
コウイチ達はここから逃げるのじゃ。
なに、心配せんでもコウイチ達が
逃げ切れるまでは殺られたりせんよ。」
「自惚れが過ぎるな、カシンヤール。」
「自惚れてるのはお前だよ、アスー。」
「なに?」
「ヨルンのお祖父さんは下がって、
彼女達を守って下さい。」
「何を言っておる。」
「アスー程度なら俺1人で十分ですよ。」
「大した自信だ。
すぐに後悔させてやろう。」
「後悔するのは・・・無音往還!!」
剣豪術Ⅳの高速往復の斬撃だ。
両腕を切り落としたぞ。
「ば・馬鹿な!?」
「エスラさん、剣を貸して貰えるかい?」
「え?はい。」
やっぱり、双剣はしっくり来るね。
「さて、これで終いにしようか。」
「この私が身動き1つ取れないなんて、
お前は一体何者なんだ!?」
「何処にでもいる普通の冒険者だよ!
双武乱舞!!」
双剣術Ⅴの二十連撃だ。
アスーは悲鳴も上げれずに二十個の肉塊にばらされ
消滅した。
この洞窟のお陰で、俺はかなり強くなれたよ。




