第50話~キロリート~
・・・んっ。
ここは・・・どこだ?
見たことがない天井。
家っぽいけど・・・。
取り敢えず一旦起きて・・・
「いっ!?」
身体中に激痛が走ったぞ。
良く見ると包帯が巻かれている。
「大丈夫ですか!?」
誰?
ポニーテールの女性が何故か扉から入ってきた。
怪我に治療跡に知らないベッドに
知らない女性とくれば答えは簡単だ。
はるかのインフェルノを食らった俺は
そのまま地上に落下。
そして大怪我を負って気絶していた所を
彼女が偶々見付けて自分の家に連れて帰り
介抱してくれたって所だね。
「まだ動いては駄目です!
貴方は凄い大怪我をしているんですよ!?」
優しい女性だね。
このまま少し甘えるのもありだけど・・・。
「助けてくれてありがとうございます。
もう大丈夫です。」
「大丈夫じゃないですよ!?」
「チリン!タスン!
これで回復出来ました。」
「治癒魔法が使えたんですね。
それなら安心です。
3日も目を覚まさなかったので
心配していましたよ。」
「3日も!?」
かなりの重体だったんだね。
あのまま外で転がっていたら死んでいたかも。
「一体何があったんですか?」
・・・説明し辛いね。
どうしようか。
「もしかして盗賊に襲われたんですか?」
「盗賊?」
「はい。
最近近くの村が襲われたと聞いているので。」
「そうなんですね。
でも盗賊ではありませんよ。」
「そうですか。」
「ニャ~ン」
ん?
猫の鳴き声。
「アル。」
「ニャ~ン。」
「猫飼っているんですね。
どれ・・・。」
「あっ、」
「シャァァァーーー!!!」
手を伸ばして触ろうとしたら
物凄く威嚇されてしまったぞ。
「すいません、この子、男の人が苦手で・・・。」
「それは残念。」
動物相手にする時は、無理矢理は禁物だ。
ここは大人しく諦めよう。
気まぐれに寄ってきてくれるかも知れないしね。
さて、いつまでもここに居る訳にも行かないし、
そろそろ先に進むか。
「色々とお世話になりました。」
「いえ、そんな・・・。
あっ、お腹空いてませんか?」
「空いて・・・ますね。」
3日も気を失っていた訳だから、当たり前だよね。
「お食事、用意しますね。」
「そこまでして貰う訳には・・・。」
「すぐ用意出来ますので、待ってて下さいね。」
・・・出ていってしまった。
仕方がない。
ここはお言葉に甘えるとするか。
しかし3日も経っているんじゃ、
はるかはもうこの近くにはいないだろうね。
となるとやっぱり目指すは魔王のいる北の大地か?
いや、その前に鍛えた方が良いか。
もろに食らったとはいえ、インフェルノの一撃で
3日も気を失ったんだしね。
待て待て、その前に剣を買わないと。
この町に武器屋があると良いけど・・・。
「用意が出来ました。」
・・・この匂いは、カレーか!?
「お口に合うと良いのですが・・・。」
美味しそうな匂いが充満している。
カレーって何で匂いだけで
強烈に食べたくなるのか。
「頂きます。」
美味しい。
間違いなくカレーだ。
地球を去ってから初のカレーは
五臓六腑に染み渡る様だ。
何だか泣きそうになってくるが、そこは耐えよう。
「凄く美味しいカレーライスですね。」
「カレーライス?
これはキロリートですけど・・・。」
「キロリートって言うんですね。」
心に刻んでおこう。
「そういえば、まだ自己紹介を
していませんでしたね。
私はスィルと言います。」
「俺は耕一です。」
「ニャ~。」
「この子はアルです。」
「銀色の猫って珍しいですね。」
この世界では普通なのかな?
「あっ、はい、そうですね。
元々は野良猫だったので、
色々な種類が混ざって銀色になったのかもと
思っています。」
「元野良猫か。
それにしては毛並みが凄く良いけど、
スィルさんの飼い方が素晴らしいんですね。」
「普通に飼っているだけですよ。」
触れないのが本当に残念だ。
「ところでキロリートって
猫が食べても大丈夫なの?」
アルも俺と全く同じ量のキロリートを食べている。
量もそうだけど、カレーなんて食べたら
普通は駄目だよな。
「普通は食べないはずなんですけど、
この子は何でも食べてしまうの。」
「本当に美味しそうに食べてるね。」
「ニャ~ン。」
まるで美味しいよと言っている様だ。
「不思議な子よね、アルは。」
玉葱を食べる犬もいるくらいだから、
カレーを食べる猫がいても良いのかな?
「コウイチさんはこれからどうするんですか?」
「取り敢えず武器と防具を買って、
魔宮に行こうかと思います。」
「魔宮ですか?」
「はい。
その前に、この町の冒険者の館に
寄らなくちゃですね。」
「ここは町ではなく村なので、
冒険者の館はありませんよ?」
「え!?
まさか武器屋とかもないとか?」
「あるにはありますが、
そこまで良い品は・・・。」
・・・困ったね。
でも元々装備していたのも大したものではないから
ここでも大丈夫かな?
「そこまで良い品を求めてないから、
大丈夫です。」
「では、食事が終わったら案内しますね。」
本当に良い娘だね。
諸々含めたお礼も考えておかないとね。




