第5話~フォーメーション~
石造りの壁に囲まれた町みたいだ。
最初の町にしては・・・
いや、最初の町だからこその守りが固いのか?
取り敢えず入ってみよう。
でも門番もいるみたいだから話し掛けないとね。
斧を背負ったがたいの良い兄さんって感じだ。
職業は斧技士Lv4ね。
「こんにちわ。」
「こんにちは。
ん~見た所、冒険初心者みたいだけど、
この町は初めてかい?」
「はい。」
「じゃあ、まずはステータス鑑定だな。
この鑑定書に触れてくれ。」
鑑定書に触れると文字が浮き出てきた。
読めないけど。
「どれどれ・・・剣士Lv2ね。
まだ成り立てなんだな。」
「えぇ、ひ弱ですいません。」
どうやらステータス偽装・隠蔽が
上手く出来ている様だ。
「謝る必要はないさ。
ここは君の様な冒険初心者が集まる町
だからね。」
町の名前は『プルミエ』、最初の町と言う意味だ。
魔王がいる場所から一番離れているこの場所は、
魔物も弱く冒険初心者が鍛えるには
一番良い町なんだそうな。
ちなみに魔王がいる場所の近くにいる人でも
瞬間移動が出来る装置が各所にあり、
何処からでもこの町に来れるらしい。
「初めてならまずは鑑定書を持って
『フォーメーション』に行くと良い。
町の中央にある大きな建物だから
すぐに分かる。」
「ありがとうございます。」
『フォーメーション』
冒険初心者にアドバイスをしてくれる場所だ。
何処にどんな魔物が生息しているのか、
道具や武器等の材料となる素材の生息場所、
助っ人の手配等々、冒険のイロハを学び、
打倒魔王を目指す訳だ。
魔王を倒しに行くつもりはないけどね。
町の中央に行くと、
一目で分かるほど大きい建物があった。
煉瓦で出来ているのかな?
横浜の赤レンガ倉庫をイメージさせる建物だ。
早速入って・・・そういえば『妄想世界』を
試してみるのを忘れていたな。
入る前に試してみるか。
もしかすると『排泄消去』みたいに、
意外と役に立つ能力かも知れないし。
なるべく小声で・・・
「妄想世界」
・・・特に変化は無いみたいだけど。
何か発動条件を満たしていないのかな?
仕方がない、検証は後日するとして、
一旦フォーメーションに入るとするか。
大きな木の扉が開けっぱなしなのでそのまま入ると
中はかなりの賑わいの様だ。
さて、まずは何をすれば良いのやら。
キョロキョロと辺りを見回していると、
1人の女性が俺に気が付き、
トコトコと近付いてきた。
「何かお困りですか?」
「あっ、ここに来るのが初めてで、
どうすれば良いのか分からなくて、
回りを見ていました。」
「初めての方ですね。
では、こちらへどうぞ。」
案内してくれる様だ。
ポニーテールの可愛い女性だね。
服は白いワンピースで、
回りに同じ服を着ている女性がいる所をみると、
ここの制服みたいな感じかな。
清楚な感じがして良いね。
制服・・・そういえばOLの制服の写真で、
部分的に切り取った様な『妄撮』なんてのが
あったな。
水着姿とかよりもエロい感じなんだよ・・・
「ね!?」
「え?どうしました!?」
お尻の部分がめくれて下着が見えてるぞ。
Tバックとは中々・・・。
それに振り返ったから胸の部分も捲れて・・・
まさかこれが『妄想世界』!?
何て良い・・・けしからん能力だ。
「あの・・・大丈夫ですか?」
「あっ、大丈夫です。
すいません、驚かせてしまって。」
「いえ。では、こちらに座ってお待ち下さい。」
服が元に戻ったぞ。
10秒程度で切れるんだな。
いや、唱えたのはここに入る前だから5分くらい?
取り敢えず座って良く考えてみよう。
『妄想世界』
・・・妄想って事はあれは単なる妄想で、
現実では無いと言うことか?
そもそもこの世界にTバックがあるとも
思えないし・・・。
戻って来たら聞いて・・・みる訳には
行かないよな。
『白のTバックを履いていますか?』
なんて聞いたら、白い目で見られるのは必然で、
下手をすると捕まる恐れもあるな・・・。
これはなかなか検証し辛い能力だね。
仕方がない。
それは一旦置いておこう。
回りを良く見ると同じ丸いテーブルと椅子が
あるのが分かる。
恐らくは冒険初心者が説明を受けている様だ。
おっ、戻って来たぞ。
「お待たせしました。
私はサーシャと言います。
よろしくお願いします。」
「耕一と言います。
よろしくお願いします。」
「このフォーメーションでは
様々な事を行っていますが、
説明の前に鑑定書を拝見出来ますか?」
「はい。」
さっきの門番の所で貰った鑑定書だ。
「ありがとうございます。
・・・はい、問題ありません。
フォーメーションがどんな所かは
ご存知ですか?」
「何処にどんな魔物が生息しているのか、
道具や武器等の材料となる素材の生息場所、
助っ人の手配等々、冒険のイロハを学ぶ所と
書いてありました。」
「良くご存知の様ですね。
失礼ですがコウイチさんは
冒険を始めたばかりですね?」
「はい。」
「それでしたらいきなりあれこれ詰め込むよりは、
初歩的な冒険の進め方から覚えては
如何でしょうか?」
「それで構いません。」
「基本は魔物を倒しながら素材を集めて
売り捌くのが一般的ですので、
剣士Lv2でこのステータスですと、
ジェリーで経験を積みつつ、
周辺の素材収集でお金を稼ぐのが
良いと思います。」
「なるほど。素材というのは?」
「ジェリーが出現する場所で手に入る素材は
此方を御覧下さい。」
なるほど。
リキッド・・・つまり回復薬を作るための素材ね。
基本だよね。
それとジェリーか。
本当のステータスはもっと高いから
もう少し強い魔物でも大丈夫だけど。
「それから今転職可能な商人・道具職人・拳闘士・
火魔導士・治療魔導士はそれぞれLv5程度まで
上げておくと戦闘が楽になりますよ。
新しい職業を覚えたら
それも一度転職しておくと良いです。
ただ多少転職費用が掛かりますが・・・。」
「どの位掛かりますか?」
「Lv×100ユラン位です。」
となると何時でも転職可能なのは
良い選択だったかも。
「ところでコウイチさんは
何か目指している職業等ございますか?」
「特にないかな。」
「そうですか。今後の目標等はございますか?」
「この世界を見て回りたいかな。」
「それでしたら火・治癒・水魔道士等の
魔法が使える様になると旅が楽になります。
火を通して食べた方が安全ですし、
明かりにもなります。
怪我等した場合は魔法で治せればより生存率が
上がります。
そして飲める水を確保出来れば
食べなくても1ヶ月は生きれます。
更に拳闘士を覚えておけば、
武器が壊れても戦う事が出来てより生存率が
上がります。」
となると水確保のための水魔道士を覚えた方が
良さそうだね。
「水魔道士は火魔道士と風魔道士Lv10で
転職可能になるんですよね?」
「はい、その通りです。
このフォーメーションでは転職も可能ですので、
よろしければご案内しましょうか?」
「大丈夫です。」
自分で変更出来るからね。
まずは少しLv上げと行くか。