第49話~生者転生~
・・・んっ。
ここは・・・どこだ?
何か真っ白の世界だけど・・・。
・・・女神様の空間か?
≪そうです≫
目の前に女神・ビュー様が現れた。
また俺は死んだのか?
≪いえ、生きています
意識だけをこの世界に呼びました≫
意識だけをわざわざ?
という事は・・・
「はるかの事ですか?」
≪はい≫
なるほど。
という事はあのはるかは、俺の知っているはるかで
間違い無さそうだ。
色々聞きたい所だけど、
まずはビュー様の話を聞くとしよう。
≪貴方が死んだ時に、転生させるため
転生フィールドを展開する必要があるのですが、
その転生フィールドに飛び込んで来たのが
はるかさんなのです≫
俺が崖から落ちた後、
はるかが俺を追ってきてたのか。
頭から落ちて行ったから、
上の状況までは分からなかったな。
≪その時は特に気にしていなかったのですが、
あなたがこの空間に転生した時、
彼女もこの空間にいたのです≫
俺の転生に巻き込まれたのか。
≪転生フィールドは死者のみ転生させる技だと
思っていたのですが、
生者も転生出来るとは知りませんでした≫
なるほど。
生きている者を転生させる必要はないからね。
誰も試した事がなかったのか。
≪はい≫
あれ?待てよ。
まさか・・・
「記憶が無いのは生きている状態で
俺の転生に巻き込まれたせいか?」
≪その通りです≫
不幸は重なるって言うけど、
ここまで重ならなくてもね。
・・・大元は女神の過ちのせいだけど。
≪大変申し訳ありません≫
とはいえ、この世界ではるかに会えたのは
やっぱり嬉しいしな。
それに何かのきっかけで記憶を
取り戻すこともあるだろうし。
全てが不幸という訳でもない。
≪前向きな貴方は本当に有り難いです≫
「不幸の中で楽しみを見つけるのは、
大得意なんでね。
それよりもはるかは名前を覚えていたのかい?」
≪いえ、私が教えました
覚えているのは、自分が魔族である事と
秩序を守るために人間を滅ぼす事くらいです≫
なるほどね。
だから種族は魔族で、子供も平気で殺せたのか。
職業の魔王は・・・
≪それは想定外でした≫
「魔王を2人にする予定ではなかったって
ことですか。」
≪はい。
魔王という職業は本来女神が与える以外に
就く方法はないので≫
「それをはるかがランダム能力で
引いたということですね。」
≪はい≫
「ランダム能力は自分の心が望んだ能力を
得られるものではありませんか?」
≪・・・気付いていたのですね≫
「妄想世界ではるかを出現させた時に
少し思ったんだ。
その後に色々な転生者に会い、
意欲上昇・着替人形・筋肉達磨・魔法少女と
それぞれのランダム能力を知って、
最後にはるかの魔王とくれば、
本人が心の中で望んでいる能力と
確信出来ましたよ。」
俺のもう1つの能力の排泄消去も
転生前の世界ではトイレにかなり悩んだしね。
ウォシュレットも無ければ、流す水もない。
おまけに紙まで無いんだから
現代人としての何かを失って行く気がしたし。
≪本人の心が望む能力を与えることで
新しい世界で生きる苦しみが少し和らぐ様に
考慮しています
ただ偶然と必然では能力を得た後の
意識に差が出てしまいますので、
ランダムという形を取っています≫
自分の心が求めた能力が
排泄消去と妄想世界と知っていたら
全力で否定したくなるしね。
今となっては俺の心が求めていたと分かるけど。
はるかは魔王の娘だ。
記憶を無くしても魔族であることは
覚えていたのだから
深層心理に魔王の娘であると刻み込まれてても
可笑しくはないか。
≪そして魔王が2人になってしまったため、
この世界の色々な場所で混乱し始めています≫
「魔王が2人も入ればね。」
≪貴方も1度巻き込まれていますよ≫
1度?
あぁ・・・
「エールライオンですか。」
≪そうです≫
エールライオンは、はるかが作ったのか。
ダージーさんがいなかったら
俺も殺されていただろうしね。
あんなのが各地に出現したんじゃ
混乱は免れないか。
はるかの記憶が戻れば、ただ滅ぼすなんて考えには
ならないだろけど、何にせよ、はるかにもう1度
会わないことには始まらないな。
実力に差がありすぎるから、
もっと鍛えないとだけど。
『魔王』に『支配者の要求』の能力は
最初に思った通りかなり有利だね。
おまけに女神の守護、加護、援護も持ってたし。
ボーナス能力までは確認出来なかったけど
説明書は全部読んだのかな?
教えて
≪上げることは出来ません≫
ですよね。
今度会った時に確認するか。
まずはLv上げだけど。
・・・こういう時、漫画やゲームなら・・・
≪記憶を取り戻す宝玉や、
魔王の職業を変える水晶なんて便利なものは
存在していません≫
と言うのを女神様から貰えるって無いのか・・・。
≪魔王の力を抑えるオーブもありません≫
都合の良いアイテムは無いのね。
じゃあ、
≪勇者には自力で頑張って目指して下さい≫
・・・喋らせても貰えません。
地道に頑張るしかないか。




