第48話~再会~
「ついに『魔法少女』の発動に成功したな、
サクラ。」
「みんなを守りたい気持ちが高まると
発動するみたいだよ、エヒちゃん!」
「今までは女神の杖のお陰で守らなくても
勝てたしな。」
「そうだね、シダちゃん!」
「となると、女神の杖が戻った今だと、
発動するのが難しそうだな。」
「そうだね、エヒちゃん・・・。」
女神の杖が最強レベルに強いからね。
守ろうと思う前に敵を倒してしまう。
それはそれで良いけど。
「コウイチもありがとう。
お陰で女神の杖を取り戻すことも出来たしな。」
「いや、俺は何もしてないよ。」
魔法少女に操られただけだしね・・・。
「そんなことはないさ。
俺の命があるのもお前のお陰だ。」
「シダレさん・・・。」
「コウちゃんはこれからどうするの?」
「今日依頼を受けた中級魔宮を
クリアーしなきゃかな?」
「巻き込んだお詫びと言ってはなんだが、
手伝おうか?」
「1人で大丈夫ですよ。」
「コウイチなら余裕だろうしな。」
「そうだ!私達のパーティーに入らない?」
「それは良いな。
コウイチなら大歓迎だ。」
「いや、でも・・・。」
「一緒にいた方が命を救ってくれたお礼を
返すチャンスが増えるしな。」
サクラさん達と一緒に・・・か。
それはそれで面白そうだけど。
でもやっぱり俺は・・・
「うわぁぁぁーーー!!!」
なんだ!?
「子供の叫び声!?」
「あっちから聞こえたぞ!!」
「行ってみようよ!」
みんなが声の聞こえた方に走り出す。
俺も連れて走り出してしまった。
こういう場合はあまり良いイベントには
ならないんだけどね。
まっ、女神の杖を取り戻したサクラさんがいれば
大丈夫だね。
「リン!リン!!」
小さい女の子が血を流して倒れている。
その横に小さい男の子が女の子に
必死に呼び掛けている。
きっとこの子が叫び声を上げた子だろう。
「魔族がいるぞ!!」
子供達の奥に立っているのが魔族か。
黒いロングブーツに、黒いミニスカート。
黒いフィンガーレスグローブに、黒いブラ。
ハートのアクセサリーが着いた黒いチョーカーに、
小麦色の肌と幼さを残す顔に
妖艶な雰囲気が漂い、そして黒い大きな瞳。
・・・嘘だろ?
「はるか・・・?」
「コウちゃん、知っているの?」
そんな馬鹿な!?
この世界にいるはずがない!!
・・・落ち着け、俺。
こういう時は孔雀眼で見れば・・・。
名前は、はるか。
種族は魔族。
職業は・・・
「魔王!?」
「魔王だって!?」
「魔王は男のはずだぞ?
コウイチ、一体どういうことだ?」
「でも本当なら今の俺達じゃあ・・・。」
ヤバい。
頭が混乱している。
一体どういうことなのか、知りたいのは俺の方だ。
「あっ、魔族が逃げるよ!?」
はるかが悪魔の翼ではない、
黒い堕天使の翼を広げて飛び立った。
今逃がす訳には行かない。
追い掛けなくては!!
「コウイチ!待て!!
この子を回復するのが先だ!!」
だけど・・・仕方がない。
「チリン!タスン!」
「起きないぞ!!」
「心臓が止まってるよ!?」
「なら、ソセン!!」
「生き返らないぞ!?
どういうことだ!?」
「ソセンは10分以内なら生き返らせることが
出来るけど確率は50%なんだ・・・。」
「じゃあ、もう一回やろうよ!!」
「それは出来ない・・・。」
「何故だ?」
「1度使うと10分間は使用出来ないんだよ。」
「そんな・・・。」
「本当にどうにもならないのか?」
「あぁ、無理だ・・・。」
「・・・僕、名前は?」
「ジャン。」
「ごめんね。
お姉ちゃん達じゃ助けられなかったよ。」
・・・。
サクラさんが男の子に優しく声を掛けている。
俺は・・・。
「この子は任せました。」
「待て、コウイチ!
1人で行く気か!?」
「コウイチがいくら強くても、
魔王相手に1人で向かうのは無謀だぞ!!」
それでも俺は行かなくてはならない。
「・・・妄想世界・筋肉集約!!」
「コウちゃ・・・」
はるか。
お前は本当に俺の知っている『はるか』なのか?
はるかも転生してしまったのか?
なら何故俺に気が付かない?
それとも別人なのか?
次から次へと疑問が頭の中をかけ巡る。
きちんと話せば何か分かるはず。
こっちの方角に行ったはずだから・・・いた!!
「はるか!!」
別人とするには瓜二つ過ぎる。
もう1度、孔雀眼でみると・・・
ボーナス能力に女神の愛!!
転生者だ!!
やっぱりはるかなのか?
でも俺を全く知らない人間みたいに見ているよな。
まさか記憶喪失!?
もう少し近付いて確認して・・・はるかが
右の人差し指をピンと立てたぞ。
それは、まさか!?
「インフェルノ」
黄色い球体が俺に向かって飛んできた。
これは間違いなくはるかの技だ。
転生前の技が何故使えるのかはわからないが、
見間違えるはずもない。
って不味い!!
筋肉集約で空中を真っ直ぐ進むしかない俺には
交わす術はない・・・。
見事に黄色い球体に突撃してしまった。
そして天まで貫く程の黄色い火柱が上がった。
はる・・・か・・・。




