第42話~女神の杖~
「コウイチも転生者だったとはな。」
「じゃあ、お前も何か能力を持っているのか?」
「『排泄消去』って能力で、
トイレに行かなくて済むよ。」
「なんだ、その使えない能力は!?」
「確かに微妙だな。」
「そんな事ないよ!
トイレは凄く重要だもん!」
地球人とこの世界の元々の住人との差だね。
しかし実年齢が大分上と分かると、
その喋り方は・・・何かを察知したのか
物凄く睨まれてるので考えない様にしよう。
「そんなもんかね。
でも戦闘の役にはたたんな。」
「だが、転生者はボーナス能力もあるんだろう?」
「説明書を読めば読むほど貰えるポイントで
色んな能力が貰えるからね!
私は1000ページくらい読んだけど、
コウちゃんは?」
「全部読んだよ。」
「あれを全部読んだの!?」
「そんなに大変なのか?」
「そうだね。
全部読んだ人はいないって言ってたし。」
「じゃあ、ボーナス能力は
さぞかし凄いんだろうな。」
「取得経験値アップや必要経験値減少、
職業開放と色々貰ったよ。」
「わたしはこれ!」
さっき木を貫いた杖だね。
道理で凄い威力な訳だ。
「『女神の杖』って凄い杖なんだ!」
確かに凄いね。
少ないMPで限界以上の威力の魔法を放つことが
出来る上、魔防は常に2倍、
杖で魔法を受け止めれば倍にして返せる。
おまけにMP消費は大きいけど
完全無敵なバリアーまで発現可能。
ちなみに見た目は杖の先に3人の女神がいて、
その上に浮いている水晶に祈りを捧げている
デザインだ。
「確かに凄い杖だね。」
「まだ何も言ってないのに
何故『凄い杖』と分かったんだ?」
エヒガンさんは鋭いね。
「ボーナス能力の内の1つでね。
何でも鑑定が出来るんだ。」
「それは便利だな。」
「鑑定出来ても敵を倒す能力が無ければ
生き残れないぜ?」
シダレさんは面倒臭いタイプだな。
自分が上に立たないと気が済まないんだろう。
折角のイケメンが台無しだね。
いや、イケメンならそれもまた様になるのかね。
取り敢えず、
「戦いはお三方に任せますよ。
私は多少の回復や補助は出来るので、
サポートさせて貰いますよ。」
「それが良いな、くれぐれも邪魔しない様にな。」
これで良しっと。
「そろそろ、寝るとしよう。
明日は朝早くから向かう予定だからな。」
「はーい!」
次の日の朝、中級魔宮に向かった。
「着いたな。」
「ボスの部屋に行くよ!」
「さっさと片付けようぜ。」
中級魔宮に入るとエヒガンさんが声をあげた。
「しまった!
コウイチとはパーティーを組んでないから
フロアワープが使えん。」
「いきなり足手纏いかよ。」
「困ったね・・・。」
行かなくても良いんだけど、仕方がないか。
「一応『冒険管理者』の職にも就いたから
パーティー編成も出来ますよ。」
森を彷徨っている内に冒険者のLvがMAXまで
上がったからね。
「それは助かるな。
早速パーティー編成を頼む。」
「分かりました。
管理術Ⅰ・パーティー編成。」
画面が出現したぞ。
パーティー又はパーティーリーダーを
選択して下さいか。
パーティーは『サクラゼンセン』ね。
これを選んで、最後に俺を入れて完成。
「出来ました。」
「ありがとう。では行くとしよう。
フロアワープ」
四角い黒い何かが現れたぞ。
みんな同じなんだね。
「さあ、行こう。」
「何時も通り俺達が前衛、
サクラは後方から魔法で攻撃だ。
コウイチは邪魔だから端にでも行ってろ。」
「分かりました。」
ちなみにシダレさんが大盾士、
エヒガンさんが斧聖、サクラさんは氷魔道士だ。
俺がわざわざ加わらなくても大丈夫そうだけど、
これくらいはサポートしておくか。
「筋力・知力・体力・速度上昇付与!!」
「コウイチは付与魔道士なのか。」
「なんだ、その腰の剣は飾りか。」
「付与ありがとうだよ!」
みんな揃って違う事を言われたら
答え辛いんだけどね。
「回復も出来ますので、何時でも言って下さい。」
「分かった、サポートは任せたぞ。」
「怪我なんかしねぇよ。」
「危なくなったらお願いね!」
戦闘もバラバラじゃなきゃ良いけど。
「よし、行くぜ!!」
シダレさんが真っ先に魔宮の主に突っ込んだ。
気付いた魔宮の主が斧を振り下ろす。
ちなみに魔宮の主はミノタウロスみたいな奴だ。
シダレさんが大盾で受け止めた。
サクラさんは杖を構えている。
杖の先に魔力が集められている様だ。
「回転斬り!!」
エヒガンさんがシダレさんの左脇をすり抜け
回転斬りを放ち魔宮の主の脇腹をかすめる。
魔宮の主の意識が2人に向き、
此方に背を向けた。
その隙にサクラさんが杖を前に出し
魔法を放った。
「エノルムフレイムボール!!」
杖の先の女神が水晶を見上げ、
手を広げて目を見開いた。
同時に巨大な炎の玉が魔宮の主の無防備な背中に
見事に命中。
そして消滅した。
「お疲れさん。」
「終わったね~。」
「楽勝だったな。」
ここの魔宮の主はそんなに弱くはないよ。
それを一撃で消滅させた女神の杖が
凄い杖なんだろうね。
ボーナス能力で武器を貰うのもありだったかな?




