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妄想世界~女神の過ち~  作者: 耕一
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第34話~筋肉馬鹿一代~

ソギョーツを出て1週間。

トコンにはまだ着かない。

ソギョーツに来た時みたいに馬車で来れば

楽だったんだけど、3日後まで来ないので

仕方なく歩いている。

とは言え後1日もあれば着くだろうから

焦ってもいないけどね。


「グルルルル・・・。」


おっ、エールライオンだ。

Lv10ね。

ジェリーの森で会った時は死ぬかと思ったけど、

今は余裕で・・・。


「繊月斬り!!」


倒せるっと。

さて、日も暮れ始めたし

そろそろテントでも張るか。

このテントは中々優れもので、

自分よりも弱い敵は近づいて来ない性質を

持っている。

おかげで快適に休む事が出来るよ。

おまけに簡単に設置出来るから・・・完成したぞ。

お次は食事の準備を・・・何か来る?

しかも早い!!

魔物か!?


と思ったら森から熊が飛んで来た。

いや、吹き飛ばされたと言った方が良さそうだ。

飛んでくる先は・・・俺のテントだね。

って、不味い!!

止めようと動き出すが、既に遅し。

熊はテントに直撃し、派手な音と共に崩壊した。

まるで災害にあった後の様だ。

修理出来るかな・・・?

中級道具Ⅴを覚えておけば良かったよ・・・。

愕然としていると、熊が飛んで来た森から

男が現れた。


「今日は熊鍋だな!ガッハッハッハッ!!」


物凄い筋肉の男だ。

なるほど、こいつが吹き飛ばした訳か。


「ん?人がいたのか。ビックリさせたか?」

「それを見て他に言う事はないのかい?」

「なんだい、このゴミは。

 粗大ゴミをこんな所に捨てるのは

 感心しないな。」

「あんたが熊を吹き飛ばしたせいで

 俺のテントがこうなったんだよ!!」

「それはすまん事をしたな。

 お詫びに熊鍋を食わせてやるから、

 許してくれ。」


テントの詫びが熊鍋じゃあ割に合わない

気がするが・・・。


「じゃあ早速準備するか。」


熊を片手で持ち上げたぞ。


「フンッ!!」


手刀で首を斬り落とした!?

そんな馬鹿な・・・。

いや、きっとスキルを使用したんだな。

どんなスキルか見てみるか・・・。

随分と片寄ったステータスだな。

筋力だけが飛び抜けて高い。

職業が武闘家とは言え片寄り過ぎてないか?

なるほど。

この人も転生者なんだね。

『筋肉達磨』の能力が影響しているんだろう。

筋肉を効率的に鍛える事が出来る能力ね。

それでこの体型と言う事か。

と考えている間にどんどん熊を捌いているぞ。

勿論全て手刀で。


「熊はこんなもので良いか。

 お次は薪を・・・。」


今度は木に向かって蹴りを入れたぞ。

流石にその太い木は・・・簡単に折れると。

その上、手刀で薪にしていってるし。

でも火はどうするんだ?

火魔術士にはなってないから

燃やすのは無理だろうし。

ここは協力して・・・


「ウォォォォ!!」


原始的な方法で木を擦って、

あっという間に燃え上がったよ。

何処までも筋肉で何とかする様だ。


「熊鍋だけだと余るから串を刺して焼いておくか。

 それから明日以降の薫製も用意しておくか。」


木を握り潰して木っ端微塵になったぞ。

薫製用のチップですね。


「お次は寝る場所だな。」


そう言うと次々と木をへし折り始めた。

環境破壊ってこうやって進んでいくんだね。

森が消えて平地になって来たぞ。

お次は折った木の端を尖らせて

別の木に刺して・・・なるほど。

ログハウスか。


「さっきのテントの代わりに

 今日はここで寝てくれ。

 作りは今一だが雨風は凌げるぞ。」

「十分です・・・。」

「熊鍋と焼き熊もちょうど出来たようだし、

 食べるとするか。」


しかし筋肉達磨の能力は、

かなり使えるみたいだね。


「食べないのか?」

「いただきます。

 ・・・結構美味しいですね。

 もっとクセがあるのかと思ってましたよ。」

「種類にもよるけどな。

 この辺りの熊は比較的食べやすいぞ。」

「そうなんですね。」

「そういえばまだ自己紹介をしてなかったな。

 わしは『筋肉馬鹿一代』のスルマだ。」

「俺は・・・耕一だ。」

「ん?二つ名は?」

「それは・・・。」

「二つ名を名乗るのは子供でも知っている

 一般常識だぞ?

 知らないのか・・・そうか、転生者か!」


・・・そんな所からバレるとは。


「バラしたくない様だけど、安心してくれ。

 俺も転生者だからな。」


・・・知ってるよ。


「と言う事は何か能力があるよな?

 ちなみにわしは『筋肉達磨』と言う能力で、

 筋肉を効率的に鍛える事が出来るぞ。」

「俺は『排泄消去』と言う能力で、

 トイレに行かないで済むよ。」

「それは便利な能力だな。

 それで、二つ名は?」

「全人類を敵に回した男」

「・・・お前、一体何をしたんだ?

 まさか犯罪職じゃないだろうな?」

「『孤高の美女』って二つ名を持つ女性が

 居たんだけど、同じ転生者の縁でね。」

「それで恨みを買ったのか。

 災難・・・いや、美女を独り占めしたんだから

 幸運か?」

「どうだ・・・スラッシュ!!」


スルマさんの頭の上にスラッシュを放った。

正確には後ろに接近してきた魔物にだが。

巨大なコウモリみたいな魔物だね。


「良く気が付いたな。

 この魔物は気付き難いはずだが、

 気配察知のスキルを持っているのか?」

「持ってるよ。

 スルマさんの筋肉なら攻撃されても

 平気そうだけどね。」

「意識してない時に攻撃されたら痛いからな。

 助かったよ。

 しかし一撃で倒せる程のスラッシュを

 放てるとはな。

 コウイチはかなり実力があるんだな。」

「それなりだよ。」

「もしかしてトコンで開かれる武闘会に

 出るつもりなのか?」

「いや、見学するだけだよ。

 スルマさんは」

「『さん』はいらんよ。」

「そうか。

 スルマは出るつもりなのかい?」

「その為にトコンに向かっているからな。」

「スルマなら優勝出来そうだね。」

「コウイチ程の実力者がいなければ

 優勝出来るかも知れんな。

 最も目的は優勝ではなく、

 強いやつと戦う事だが。」


スルマの熱い視線が俺に注がれている。


「戦いませんよ?」

「残念だ。」


強くなっても無駄な争いが面倒臭いと思うのは

変わらないものだね。

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