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妄想世界~女神の過ち~  作者: 耕一
32/74

第32話~マリー~

カールが攻撃をしてくる。

俺は避けながらも考える。

本当に魔族から元に戻す方法はないのかと。

漫画とかなら角とか牙を斬り落とせば

元に戻るのが定番だけど・・・試すか。

とは言え空中を飛び回るカールの

角だけを斬り落とすのは俺の技術では無理だな。

まずは悪魔の翼を斬る!!

空中から襲い掛かるカールを華麗に交わし、

スパッと美しい剣線で翼を斬り落とす・・・

何て事は勿論なく、何度も翼を斬りズダズタに

なって機動力が衰えた頃に

何とか片翼を斬り落とした。

でもこれでもう空中を飛び回る事は出来ない。


地上に降りたとは言え、それでもカールの動きは

素早い。

角を斬るのはまだ無理かな?

間違えて首とか斬りそうになるから

今度は斬りやすそうな尻尾を斬る。

尻尾の半分くらいを斬り落とせたぞ。

少しは元に戻る兆候が出ないかと期待するが、

何も変わらない様だ。


動きが鈍って来たカールが俺に突撃してきたが、

ヒラリと避けもう片方の翼を斬り落とした。

今度はスパッと斬れたぞ。

しかし動くカールの小さい角を狙い斬るのは

まだまだ難しいね。

せめて一瞬で良いから止まってくれれば・・・


「チャールジュ!!」


これで電撃が定期的に流れるから、

一瞬止まった隙に・・・良し。

上手く斬り落とせたぞ。

でも戻らない。

もう片方の角も・・・駄目か。

となると・・・牙か。

魔法でもう少し弱らせて・・・

何度もダメージを与えて弱らせ、牙を斬った。

少々口も斬れてしまったが、仕方がない。

しかしそれでも元には戻らなかった。

最後の手段は死なない程度に痛め付ける。

端から見ると酷い惨劇の状態だが、

元に戻すためと言い聞かせながら

カールを斬り刻んだ。

そしてカールは膝をついた。


「これ程まで実力に差があるとはな・・・。

 本当に強いんだな、コウイチは。」

「強くてもどうにもならない事もあるよ。」

「俺を魔族から戻す事か?」

「気付いていたのか。」

「コウイチの実力なら俺は瞬殺されてても

 可笑しくないからな。

 それをわざわざ体を斬り刻んでいくのだから

 趣味じゃなければそう言う事だろう。」


カールの顔に剣先を出した。


「自分の意思で元に戻る事は出来ないのかい?」

「無理だな。戻る気もないし、戻る方法もない。」

「そうか・・・。じゃあ終わりにしよう。」


俺は剣を振り上げた。

カールは動こうとしない。

もう覚悟は決まっているのだろう。

ここまでやっといて何だが、

せめて最後は苦しまぬ様に・・・


「・・・何故殺らない?」


俺の腕が震えている。

魔物達と同じ様にやるだけ、

剣を降り降ろすだけで全てが終わるのに。

まるで降り降ろすのを拒絶しているかの様だ。


「こいつは驚いた。

 実力はあるがとんだ甘ちゃんの様だ。」


・・・そうか。

俺は転移した時も、転生した今も、

人間を殺した事はない。

魔物等を平然と倒せていたのは、

何処かゲーム感覚だったのかも知れない。

それにカールは一時とはいえ、

パーティーまで組んだ仲だ。

そんな相手を平和ボケしている地球人の俺が

殺せる訳がない・・・か。

俺は腕の力が、いや、体の力が抜けて

振り上げていた剣を力なく降ろしてしまった。


「俺を殺せないと言っても、

 コウイチの強さには敵わないからな。

 このまま逃げさせて貰おう。」


カールが立ち上がった。

カールを逃がせばこの先、何人、何十、何百人の

被害が出る事は頭で分かっている。

その時に後悔する事も。

でも今の俺にはもう防ぐ気力もない。


「コウイチが甘ちゃんで助かったよ。

 次に会う時は必ず礼をさせて貰う!?」


カールの胸から剣が突き抜けてきた。

一体誰が?


「カールお姉様・・・。」

「マリー・・・グボッ!?」


カールの口から緑の血が溢れる。

膝から崩れ落ちるカールの後ろにマリーさんが

立っていた。

どうやらマリーさんが剣・・・

恐らく盗賊の落とした剣で

カールの後ろから心臓を狙って突き刺した様だ。


「ごめんなさい・・・。

 私のせいでカールお姉様を

 魔族にしてしまった・・・。」

「まさかマリーに・・・殺されると・・・

 は・・・ね・・・。」


カールが地面に倒れた。

カールの回りが緑色の血に染まっていく。


≪剣豪がLv8になりました

 武道家がLv8になりました

 双剣士がLv8になりました

 スキル・剣豪術Ⅰ: 繊月斬りを覚えました

 スキル・筋力強化Ⅱを覚えました

 スキル・武闘術Ⅰ:双連脚を覚えました

 スキル・HP強化Ⅱを覚えました

 スキル・双剣術Ⅰ:クロススラッシュを

 覚えました≫


Lvアップのコールが鳴った。

カールは完全に死んだと言う事だ。


「コウイチさん。」

「マリーさん・・・。」

「私はカールお姉様の所に行きますね。」


そう言うとマリーさんは笑顔で短剣を取り出した。


「待っ!?」


止める間もなくマリーさんは自分の胸に

短剣を突き刺した。

倒れるマリーさんを受け止めて魔法を唱える。


「キズン!!エイン!!」


キズンは傷を治す魔法、

エインはHPを30%回復させる魔法であって、

致命傷を治す魔法ではない。

効果が無いのは分かっている。


「マリーさん、何で・・・。」


マリーさんの右手を握る。

本当は分かっている。

最愛の人が自分のせいで犯され、魔族となり、

そして自分の手で殺したんだ。

カールが言う優しい娘であれば

心が耐えられるはずもない。

死を選んでも可笑しくない状況だ。


「・・・。」


マリーさんが俺を見てにこりと笑った。


「マリーさ・・・」


マリーさんの手の力が抜けていく。

そして静かに目を閉じた・・・。

・・・誰1人救えなかった。

女神様から貰った力でどれだけ鍛えても

何も出来ない。

何が間違っていた?

何処で間違えた?

答えが見つかる事はあるのか?

この先争いがある限り、この現実は何度も起こる。


「結局、受け入れて進むしかないんだよな。」


俺はマリーさんを抱き抱えた。


「帰ろう、ソギョーツへ。」

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