第29話~宿~
「もう満室だよ。」
「部屋が塞がってまして。」
「さっき埋まってしまったよ。」
・・・困った。
全く部屋が空いてないぞ。
今日は野宿も覚悟しないと。
残りは後2つ。
今にも崩れ落ちそうな所と立派な所だ。
・・・これは崩れ落ちそうな場所になるフラグが
立っている様な・・・。
いや、物語の主人公じゃないんだから、
そんな事はないか。
という訳で、まずは立派な方に・・・
満室って看板が出てますね。
さすが立派な所だ。
わざわざ中に入らなくても満室なのが分かるなんて
お客様の事を良く考えている証拠だね。
という事はこっちのボロい方か。
下手すると野宿の方が良いかも知れないけど、
意外と中は綺麗かも知れないからね。
よし、行くとしよう。
・・・開かないな。
と言うか閉館って書いてあるし。
どうやら潰れている様だ。
野宿決定か・・・。
幸い転移した世界で野宿は経験済みだし、
プルミエで野宿しても大丈夫な様に
一式購入済みだしね。
問題はテントを張る場所位だね。
取り敢えず1回冒険者の館に戻るか。
「コウイチ、泊まる場所は見つかったかい?」
カールが声を掛けてきた。
「いや、何処も空いてなかったよ。
野宿しかないね。
幸い野宿の道具は揃ってるし。
町中でテントを張って良い場所ってあるかな?」
「町中は無理だな。
外なら大丈夫だけど。」
「じゃあ、そうするよ。」
「そうだ!俺の部屋に泊まるかい?」
カールの部屋。
中身が男性とは言え、外見は完璧な女性だ。
色々と不味い様な・・・?
でも別々に寝るだけなら
「ベッドは2つあるのかい?」
「無いけど、寝るだけなら別に良いだろう?
あっ、でも男同士で寝るのは気持ち悪いか。」
やっぱり色々と問題がありそうだ。
ここは大人しく野宿で・・・待てよ。
「ソファーはないのかい?」
「そういえばあったな。」
「じゃあ、そこで寝るよ。」
「ソファーで?」
「俺のいた世界では、
結構そこで寝たりするんだよ。」
「そうなんだ。」
普通は寝ないけどね。
とは言え野宿よりは遥かにマシだ。
カールに感謝しなきゃね。
ついでに明日の宿も確保しておかなくては。
「じゃあ一旦、俺の部屋に行くか。
明日行く中級魔宮の打ち合わせも
しておきたいしな。」
「分かった。」
ちなみに宿代は一部屋いくらのため、
何人いても変わらないそうだ。
「明日行く中級魔宮はこれだ。」
部屋に着いてすぐにカールがテーブルの上に
依頼書を広げた。
階層型の魔宮で今回は上るタイプの様だ。
現在分かっているだけで7階層以上あり、
中級戦闘・魔法職Lv5以上推奨ね。
但しクリアーにはLv10以上必要か。
「カールはこの魔宮には行ったのかい?」
「あぁ。3階層辺りまでだけどな。」
「剣豪Lv10でもきついのか。」
「ソロで行ったからな。
本来魔宮は4人以上のチームで入るものだから
1人だとこんな所だぞ。」
「そうか。でも明日中にクリアーするよ。」
「初回でいきなり!?
さすがに無茶が過ぎないか?」
「俺が魔宮内で戦いすぎると、
魔宮の主が強くなりすぎて
他の冒険者がみんな殺されてしまうんでね。
早期決着をしなくてはいけないんだよ。」
もう2度とあんな事を起こさせる訳には行かない。
「まぁ、コウイチの実力は知っているからな。
大丈夫だとは思うが、油断しない様にな。」
「分かってるよ。」
「ところで報酬だけど、8:2で良いか?」
「8:2?」
世話になっているとは言え、8は取りすぎだろう。
「ああ。
コウイチの実力的には9:1でも
可笑しくは無いけど、流石に1だと
俺もキツいんでな。」
「俺が8?」
「当然だろ。」
前言撤回だね。
カールは良い奴だ。
「半々で良いよ。」
「えっ!?
いや、それは流石に貰いすぎだろう。」
「色々と世話になってるしね。
今日だって野宿を回避出来たんだし。
おまけに宿代だってカール持ちなんだから。」
「それはそうだが、でも貰いすぎな気が・・・。」
「気にしなくて良いよ。
何ヵ月か生活出来るだけのお金は
持ってるしね。」
それに俺は元々お金に興味を持つ方ではないし、
ありすぎても幸せになる訳でもないからね。
「分かった。
コウイチは良い奴だな。
9で押しきる奴もいるだろうに。」
「良い奴ってのは違うな。
ちょっと価値観が違うだけだよ。
俺はお金に価値なんてないと思ってるし。
勿論、全くないのも困るけど。」
「無いのは困るな。
じゃあせめてベッドで一緒に寝るか?」
「それは遠慮しておきます。」
「分かったよ。」
「ところで中級魔宮を何個クリアーすれば
Dランクになれるんだい?」
「3個かな。」
「意外と少ないね。」
「Eランクを連れてクリアーするのは
かなり難しいからな。
しかも2人パーティーなんて無謀と思われるのが
普通だしな。
それでもクリアー出来ると言う事は、
それだけ実力があると判断されるって訳だ。」
「それは助かるね。」
「さて、後は魔宮に出てくる魔物について
話しておくよ」
「ああ。頼むよ。」
こうしてカールのレクチャーは続き、
次の日に行った中級魔宮は
あっさりとクリアーした。
冒険者の館がざわめいたのは言うまでもない。




