第26話~お姉様~
「良かったら一緒にパーティーを組まないか?」
「パーティー?」
「オンラインゲームって色んな人と遊べるのが
醍醐味だろう?
でもオンラインゲームと似た様なこの世界なのに
1度もパーティーを組んだ事がなくてね。
事情を言っても分かるわけないし・・・。」
オンラインゲームは確かに色々な人と繋がれるのも
楽しみの1つと言えるけど、
俺はボッチプレーヤーだったからね。
無課金だから足を引っ張る可能性の方が高い
と言う理由もあるけれど、
毎日他人の都合に振り回されるのも
面倒と言うのもあるからね。
たまにで十分な俺には自分の気分でパーティーに
誘うくらいならボッチの方が気楽で良い訳だ。
とは言え見捨てるのは少々忍びない。
「この辺りだけで良ければ。」
「それで良いよ。
よろしくな。」
妙な事になったけど、良しとするか。
「そういえばオンラインゲームを知ってるなんて
コウイチさんはガーメーから転生したのかい?」
「コウイチで良いよ。
俺は地球と言う所から来たよ。」
「俺も呼び捨てで良いよ。
星が違っても似た様な世界があるんだな。」
「人類の行き着く先は皆同じなのかもね。」
「ところでコウイチの事をこの辺りで
見た覚えがないけど最近来たのかい?」
「あぁ。
今日プルミエからここに着いたばかりだよ。」
「そうなのか?じゃあ最初は比較的弱い所で
経験を積んだ方が良いか。」
「いや、この辺りなら何処でも大丈夫だよ。
多分ね。」
「おっ、腕に自信ありなのか。」
「ボーナスポイントで経験値獲得5倍と
必要経験値1/5を貰ったから
Lvアップが早いんだよ。」
「それを取れたの!?」
「ついでに職業は第6まで手に入れた。」
「どうやって!?
ボーナスポイントは100だっただろ!?」
「ボーナスポイントは説明書を読む事で
増えるんだよ。」
「嘘・・・。
俺、1ページも読んでないよ・・・。」
「それじゃあボーナスポイントが
100で当たり前と思う訳だ。」
「何で100以上のボーナスがあるのかと
思ったけどそう言う事だったのか・・・。」
「説明書が今も読めるのは知っているかい?」
「え?知らない。」
「読みたいと思えば現れるよ。」
「あっ、本当だ。
でも何も書いていないね。
全部真っ白だ。」
「読んだページしか見えない仕組みなのね。
それに俺から見るとカールの説明書は
見えないし。」
「しっかりと読んでおくべきだったよ・・・。」
「説明書は重要だよ?」
「転生前も読んだ事が無かったからな。
コウイチは何ページ読んだんだい?」
「全部」
「しっかりと読む主義なのか。」
「当たり前だよ。」
カールはがっくりと項垂れている。
教えない方が幸せだったかも。
とはいえ、
「済んだ事を嘆いても仕方がないよ。
Lv上げにでも行こうぜ。」
「そうだな・・・。
まずはパーティー登録するか。」
「そういえばやり方を知らないな。
どうやるんだい?」
「冒険者の館でやるんだよ。
他には冒険者の上級職で冒険管理者になれば
自分でも出来る様になるけどな。」
冒険管理者は確か冒険者をMAXまで上げると
転職可能になったかな。
今の冒険者のLvは・・・44か。
もう少しと言いたいけど、残りたったの6が
大変なんだよね。
パーティーなんて滅多に使わないだろうから
覚えなくても困らないけど。
「そういえばカールは第2職業が
解放されているけどなんでだい?
ボーナスポイントでは得てないみたいなのに。」
カールが持っているのは所持金5倍だもんな。
ちなみに所持金5倍はその日に取得したお金で
手持ちの分が次の日に5倍に増えるというものだ。
使わずに取っておけばかなりの金額になるね。
「冒険者の館で冒険者ランクがDに認定されると
設定出来る職業を1つ解放して貰えるんだよ。」
なるほど。
俺も解放して貰えるかな?
すでに6個あるから無理かな?
「ところで何で俺が第2職業が解放されていると
分かったんだ?
良く考えると転生者だと分かったのも
不思議だし。」
「ボーナスポイントで貰った朱雀眼のおかげだよ。
相手のステータスを見る事が出来るからね。」
「そんなのもあったんだね。」
「取り敢えずまずは職業が解放するために
Dランクを目指そうかな。」
「依頼を受けて地道に上げるしか無いけどね。」
地道にね。
俺が最も得意とするとこだね。
「さて、冒険者の館に戻って来たし、
まずはパーティー登録だ。」
冒険者の館に入った瞬間、
喧騒が静まり返ると同時に身体中に感じる気配。
殺気だ。
俺、闇の深い夜に後ろから刺されて
殺されるんじゃないか?
それとも集団暴行?
本当に何でこんな事に・・・。
当の本人は全く気付いてないし。
「なんか今日は視線を感じなくて良い日だね。」
その視線が全て俺に来てますけどね。
で、そんな笑顔を俺に向けるから、
ますます殺気が強くなっていくよ。
「マリー。」
「カールお姉様♪今日は何の依頼を受けますか?」
カールが声を掛けたのは受付の女性だ。
仲が良いのかな?
小さくて大人しそうな可愛らしい女性だし。
「パーティー申請をしたいんだ。」
「その人と・・・?」
今日一の殺気が来ましたよ。
女性からは嫉妬を受けているんじゃ
なかったけ!?
「コウイチ、彼女は私を嫉妬で見る事もなく
優しく接してくれるとても良い娘なんだ。」
と耳打ちしてくるカール。
その優しい娘が物凄く睨んでらっしゃいますが?
どう見ても宝塚的な感じで
カールを慕っている様にしか見えませんよ?
「・・・鑑定書を拝見出来ますか?」
「あ、あぁ・・・。」
「随分情けないステータスですね。
カールお姉様を利用してLv上げなんて
男のする事じゃないですね。」
トゲが酷すぎやしませんか?
「最初は皆弱いさ。
初心者を導くのもランクが高い冒険者の
務めだよ。」
「そうですね、カールお姉様♪
コウイチさんにはまず冒険者として登録しないと
いけませんので、カールお姉様は依頼でも見て
待っていて下さい。」
「分かった。
じゃあ、コウイチ、手早く済ませてくれ。」
「お、おぅ。」
カールは掲示板を見に行ってしまった。
「これを良く読んで、ここにサインして下さい。」
満面の笑顔ですが、
ペンが机に突き刺さってますよ?
「何でこんなゴミ虫が私のお姉様に・・・」
何かブツブツ言ってらっしゃいますが・・・。
俺、この町で無事に過ごせるのかな・・・?




