第22話~黙祷~
「そんな馬鹿な・・・。」
苦しまずに殺してやる・・・ね。
なら俺は
「良い情報を貰った礼に苦しませてやるよ。
チャールヂュ!! 」
「ぐはっ!?
この程度の痛み等、ガッ!?」
「お前の体に電撃を帯電させた。
勿論一撃で死なない様に加減をしてな。」
「きさガッ!?」
誰か来るまではこのまま放置しておこう。
攻撃して来たとしても軽く避けれるしね。
しかし魔宮にそんな秘密があったとはね。
フォーメーションでも聞かなかった所を考えると、
知られていない情報なのかも知れないな。
キアーサ達・・・もしかすると
魔宮の前で死んでいた人達も
ボスに殺されたのかも知れない。
全部俺が魔宮で稼いでいたせいか・・・。
・・・今更悔やんでも遅いし、
キアーサ達が生き返る訳でもない。
グダグダ悩むのはここまでだ。
地獄なんて信じてなかったけど、
女神様があるっていってたからね。
地獄で謝ることにするさ。
その前にこの魔宮の主を地獄に送ってやるか。
魔族って言っても職業が剣士の所を見ると、
職業はどの種族でも同じなのかもね。
いや、魔族特有の職業もあるかもだけど、
こいつはなっていないだけかもな。
素質値が結構高めだから、
魔族になると素質値が上がるんだろう。
おっ、
「チャールヂュが切れたか。」
「貴様!!」
「次はどんな苦しみが望みだい?」
ってこれじゃあどっちが魔族か分からないね。
もう倒してしまうか・・・とその前に。
「バレバレなんだよ。」
おれはヨルンと魔宮の主の真ん中に立った。
「人質を取って逆転と行きたいんだろうけど
そんな使い古されたされた手は
現実には要らないんだよ。」
「クソッ!!」
魔宮の主が横薙ぎの攻撃してきた。
「二連斬り!!」
「ギャャャーーー!!」
一撃目で剣を斬り落とし、
返す刀で腕を斬り落とした。
「これで終わりだよ。
バッシュ!!」
叫ぶ間もなく魔宮の主は事切れた。
そして砂・・・いや、灰か?
体が黒い何かへと変わり空気中に消えていった。
消えた後に残ったのは・・・
「これが魔宮の札ってやつか。」
これで魔宮騒動も終わりだな。
ヨルンを起こしてフォーメーションに
戻るとしよう。
「キゼン」
「ん・・・。」
「ヨルン、体は大丈夫かい?」
「コウ様・・・。
はい、大丈夫です。」
良かった。
一安心だな。
「ボスは・・・?」
「もう倒したから安心してくれ。」
・・・ん?
なんだ?
視界が歪んで・・・いや、空間が歪んでいる?
「魔宮の主を倒したから
魔宮が消えようとしているのか!?
まずい、早く魔宮を脱出しないと!!
ヨルン、立てるかい!?」
「コウ様、大丈夫です。
魔宮が消えると自動的に外に
飛ばされるだけです。」
「そうな・・・」
答える途中で更に空間の歪みが大きくなり、
魔宮の形が崩壊していった。
そばにいたはずのヨルンも歪みの中に消え、
壁が地面が天井が霧散し、
全体が漆黒の闇に包まれた。
そして漆黒の闇の一点から眩しい光が放たれ、
全てが光に包まれた瞬間、地上に戻っていた。
「ここは魔宮の入り口だった場所か?」
「はい・・・キア兄、ヒルディ・・・。」
ヨルンの目線の先にはキアーサとヒルディの死体が
横たわっていた。
ヨルンがヨロヨロとキアーサ達に近付いて行った。
「すまない、ヨルン。
俺が魔宮の主を強くしてしまったせいで
こんな事になってしまって・・・。」
「それは違います。
ボスの強さを見誤った
私達パーティーの責任です。
コウ様が気に病む事はありません。」
「しかし・・・。」
「それに冒険者は常に死と隣り合わせで
生きています。
みんな死は覚悟の上での行動なのですから、
大丈夫です。」
・・・強いね。
回りの冒険者も全員その通りという顔をしている。
俺も自身の死なら覚悟の上だが、
身近な人間の死までは覚悟してなかった。
・・・心に刻んで置く事にしよう。
「装備を取りますね。
コウ様、手伝って貰えますか?」
「あ、あぁ・・・。」
この装備を奪う行為もこの世界の覚悟の1つかも
知れないな。
追い剥ぎや窃盗とは違う、次へ繋げるための行為。
いつか魔王を討伐する事を願って・・・か。
「これで全部ですね。」
「そうだな。
後はみんなのお墓を作ってあげないとな。」
「お墓?」
そういえば魔宮の入口で会った冒険者も
知らなかったな。
この世界ではお墓の概念がないのかも知れない。
「いや、キアーサ達はこのままなのかい?」
「いえ、このままだと魔物や動物に
食べられてしまうので燃やします。」
そう言って手を前に出した。
少し手が震えている。
俺はその手を思うより先に掴んでしまった。
「コウ様?」
「俺がやるよ。」
身内を自分の手で燃やすのはきつすぎるよな。
俺も死体を燃やすなんて事はしたくはないけど、
誰かがやらなければいけないんだ。
しかし俺って面倒事は御免主義のはずなんだけど、
何でわざわざ面倒事に突っ込んでいくのかね。
我ながら面倒な性格だよ。
とはいえ震える女の子を見て、
見なかった事に出来る程の
ご都合主義にはなれないしね。
「フレイム!!」
キアーサ達が炎に包まれ、回りにいる冒険者が
炎に向かって何かを投げ入れている。
木や布、何かの液体?
・・・炎がより強くなっている所をみると
油なのかな?
投げ終わると各々黙祷をし始めた。
こんな所は人類みな共通なのかね。
そして俺もそっと瞼を閉じ、
みんなと同じ様に黙祷を捧げた。




