第15話~性悪女専門口説き人~
「そう言えばすっかり忘れていたけど、
ヨルン達は大丈夫かな?」
「それなら私がワープで町に連れて行ったから
安心してくれ。」
「僕達もそろそろ行こうか。
そうだ、コウイチ君。
良かったら僕達のパーティーに入らないかい?」
「えっ、俺が?」
「同じ転生者だし、強いしね。
魔王を倒すんだから強いメンバーは大歓迎さ。」
「俺はまだこの世界に来たばかりだから
もう少しこの世界を知ってから
どうするか考えるよ。
だからお誘いはありがたいけど、
今回は遠慮しておきます。」
「そっか、残念。
でも来たばかりの時は僕もそうだったかも。
じゃあ、行くね。
もし困った事があったら何でも言って。
力になるから。」
「分かりました。
今回は助けて貰って助かりました。」
「気にしないで。じゃあ行こうみんな。」
「はい。行きましょう。」
こちらを見てペコリと頭を下げるニルさん。
「バイバイ、コウイチさん。」
激しく手を振る アールレイ。
「また。ワープ!」
軽く手を上げるセインさん。
本の少しでも良いチームなのが感じられたね。
次に会う時は勇者になっているかもね。
さて、俺はフォーメーションに
報告に行くとするか。
「ワープ!」
一瞬で着くのは良い感じだね。
「あっ、コウイチさん!無事でしたか!!」
「サーシャさん。
ダージーさん達に助けられて、
何とか無事に帰って来れました。」
「無事で良かったです。
エールライオンはどうなりましたか?」
「ダージーさんがあっという間に倒しましたよ。」
俺も倒した事は伏せておこう。
「さすが紅のリーフパーティーだ!!」
「これでひと安心だね!!」
どうやらみんな聞き耳を立てていたらしい。
大盛り上がりだね。
しかし結構有名なんだね、ダージーさん達って。
「ワンデーパーティーが倒されて戻って来て
コウイチさんが戻って来なかったので
心配しましたよ。」
「心配お掛けしてすいません。
そう言えばヨルン達はどうしました?」
「先程目を目を覚ましましたので」
「コウ様!!」
コウ・・・様?
まさか俺の事か・・・?
後ろを振り返るとヨルンがいた。
「コウ様!!無事で良かった・・・。」
ヨルンが抱き付いてきたぞ。
一体何が起きているんだ!?
しかも泣いている!?
「コウイチ!無事だったか!!」
キアーサだ。
エールライオンに吹き飛ばされていたけど、
無事だった様だ。
「キアーサも無事だったんだね。」
「ああ。俺はもう大丈夫だ。」
「ヒルディとじいさんは?」
「じいさんは腰がちょっとな。
ヒルディはじいさんの傍にいる。」
「そうか。でも4人共無事で良かった。」
「コウイチ。」
キアーサが頭を下げたぞ。
一体何の真似だ?
回りもざわつき始めたし。
「妹を・・・ヨルンを助けてくれてありがとう。」
「え?あぁ、気にしないで良いよ。」
ん?妹?
そういえばキア兄って言ってたっけ。
「いや、それ所かコウイチがいなかったら
家族みんな死んでいた。」
家族みんな?
「家族パーティーだったのね。」
「そうだ。みんな似ているだろう?」
全く似ていな・・・性格は似てたな。
しかし最初の印象と大分変わったな。
性悪さの欠片も無くなってる感じだぞ。
「とにかくコウイチには感謝してもしきれん。
コウイチの為なら命をかけると誓おう。」
「そんな大袈裟な。」
「大袈裟なものか。」
「それにエールライオンを倒したのは
ダージーさん達で俺じゃないからね。
感謝するならダージーさん達にだよ。」
「コウ様は私に襲い掛かった
エールライオンの攻撃を危険を省みず
身を呈して受け止め、
恐怖に怯えていた私を優しく抱き止めて
『ヨルンは俺が守る』と・・・。」
ちょっと待て、記憶を改竄させすぎだろう!?
「さすがコウイチだ。
最初から出来る男だと思っていたよ。」
ひ弱野郎って言ってませんでしたっけ!?
「2人とも落ち着いて。
偶々上手くいっただけで、
後はダージーさん達が来るまで
逃げ回っていただけだよ。」
「コウ様は果敢にエールライオンに立ち向かい、
私に攻撃が当たらない様に庇いながらも
蝶の様に舞い蜂の様に刺しながら
圧倒的な強さでエールライオンと
戦っていました。
緑茶だか麦茶だか知りませんが、
あの人達は後からやって来てとどめだけ奪って
英雄気取りの愚か者です!!」
一番勇者に近い人ですよ!?
と言うか最早何を言っても駄目そうだな。
回りの人は・・・
「何者だ、あのルーキー?」
「あの問題児にあそこまで慕われるなんて。」
「信じられんな・・・。」
驚くポイントはそこですか。
どうやら俺が倒したと言うのは認識外らしい。
ひと安心だね。
「もしかしてあのルーキー、
生粋の女好きなんじゃあ?」
「でもあの性格の悪い女をだぞ。」
「性悪女が好みって言う
変わった趣味かも知れんな。」
「性悪女専門か。」
「あり得そうだな。」
話がおかしい方向に進んでいますが・・・。
≪二つ名が『性悪女専門口説き人』になりました≫
グハッ・・・。
また不名誉な二つ名が・・・。
でも二つ名の付き方が何となく分かったぞ。
3人以上が同じ二つ名の認識になると設定されて、
既に付いている以上の人数になれば
上書きされるという感じかな?
となるとこの二つ名を消すには
10人以上必要と言う訳か。
・・・しばらくはこの二つ名で行く事に
なりそうだね・・・。
さて、何時までもここにいても面倒そうだから、
そろそろ退散しよう。
「サーシャさん。
取り敢えずジェリーの森はもう安全だから
立ち入り禁止を解いて下さい。
それからエールライオンが出現した
原因の調査もお願いします。」
「はい、分かりました。」
これでよし。
俺はまずは材料屋でエールライオンの落とした
羽根とかを売って資金にして装備を整えるか。
「ヨルン、そろそろ離れてくれ。」
「はい。」
随分素直な良い娘になったね。
良く見れば元は悪くないし、
普通にしていればモテるタイプだよな。
「じゃあ2人共俺はもう行くよ。
ヒルディとじいさんに
よろしく伝えておいてくれ。」
「わかった。」
「コウ様、私も一緒に連れていって下さい。」
そう来ましたか。
でも色々バレると面倒そうだし、
今回はのんびり行きたいしね。
「俺は1人でのんびりしたいんでね。
ヨルンは家族と一緒にいなさい。」
「でも・・・。」
「それに今はじいさんも大変だろう?」
「そうですね・・・。」
「しばらくはこのフォーメーションにいるから
会いたくなったら何時でも会えるよ。」
「分かりました。」
目に輝きを取り戻したな。
これで取り敢えずは大丈夫だね。
・・・と思ったんだけどね。
「夜這いに来いとは言った覚えがないんだけど。」
「何時でもと言っていたので、
そういう意味だと思いました。」
「鍵は掛けておいたはずだけど。」
「10秒あれば余裕で開けれます。」
セキュリティ駄目すぎだろフォーメーション。




