第1話~女神の過ち~
・・・んっ。
ここは・・・どこだ?
何か真っ白の世界だけど・・・。
・・・おかしいな。
確か立ちくらみがして
崖から落ちたはずなんだけど・・・。
・・・そうか、夢か。
転移させられた時と違って、
現実とはかけ離れた空間みたいだしね。
はるかと龍姫の事も気になるし、
1回起きるとするか。
・・・起きろ、俺・・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・あれ?
おかしいな、目覚めない・・・。
これもまさか現実・・・ってことか?
また何処かに転移したって落ちだったりして。
≪残念ですが転移ではありません≫
そうか転移ではないのか・・・ん?
何か声が聞こえた・・・というより
頭に直接響いた様な・・・。
≪貴方は死にました≫
死んだ!?
不老不死の俺が!?
どうやって!?
≪大変申し上げにくいのですが≫
目の前に金髪ストレートロングに金の瞳、
白い翼と天使の輪を持ち、
白一色の服を着た女性が浮いて現れた。
天使・・・いや、女神か?
≪女神・ビューと言います≫
やっぱり女神か。
スレンダー・・・というより貧・・・
「グハッ!?」
腹に衝撃が・・・。
≪女神ですから、心くらい読めます≫
なるほど。
思考には注意を払っておこう。
「失礼しました、女神様。
取り敢えず不老不死の私が死んだ理由を聞かせて
貰えますか?」
≪その不老不死が問題なのです≫
「不老不死が?」
≪知的生命体が不老不死を持つという事は
全てを滅ぼすきっかけになりかねません≫
永遠に生きてあらゆる知識を習得してと考えると
あながち嘘とも言えないかもね。
≪そこで不老不死を得た知的生命体を
元に戻すのが私達女神の仕事です≫
「なるほど。
だから崖から落ちただけで死んだのか。」
≪死ぬ予定ではないのですが、過ちが起きました≫
「過ち?」
≪貴方の時を1日戻す予定が、
1年戻してしまいました≫
「だから翼が出なかったのか。」
≪はい
そして崖から落ちる貴方を受け止め様にも
間に合わず≫
「そうですか。
でも女神なら間に合いそうなものだけど。」
≪普通の状況なら間に合うのですが、
特殊な状況だったので≫
「どんな状況だったんですか?」
≪イケメンと評判の殿方が、
たまたま窓の外を通って見とれてしまい・・・≫
なるほど。
女神様は頬に手を当て赤らめている。
このクソ貧・・・
「ゴボッ!?」
≪心が読めると言ったはずですが?≫
「そ・そうでしたね・・・。」
≪・・・貴方には申し訳ない事をしたので
こうして謝罪しに現れた訳です≫
・・・謝罪?
攻撃されただけの気もするが・・・。
≪それは貴方が女神に対して悪事を働いた
天罰です≫
「・・・取り敢えず状況は分かりました。
死んだって事は、俺はあの世に行くのかな?」
≪本来であれば審判の後、
天国か地獄かに行く事になるのですが、
今回は私の過ちもあるので、
特別にある世界への転生を許可しました≫
「ある世界?」
≪私達女神が新人類をどう導けば良い道に進むかを
研究する世界です≫
「そんな世界があるんだ。」
≪強制ではありませんので、
行きたくなければ断って頂いても結構です≫
断ったらあの世行きなんだよな・・・。
「念のため聞いておきたいのですが、
元の世界に戻るのは・・・。」
≪1度死んでしまえば、
女神の力を持ってしても
生き返らせるのは不可能です≫
・・・しかしこんなに突然死ぬ事になるとはね。
いや、死は突然来るものかな・・・。
でも死んだ理由が女神の過ちって・・・。
≪本当に申し訳ありません≫
・・・反省はしているみたいだけど。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・結局は2択か。
あの世行きか、女神の世界か。
今さら死を嘆いても、女神を恨んでも
元に戻る事はないのであれば選択するしかないか。
「分かりました。女神様の世界に行きます。」
≪・・・色々思う所はあるでしょう
それでもこんなに早く結論を出した貴方に
感謝します≫
「過ちは誰でもありますからね。
それが最悪の形で私に回って来ただけですよ。」
≪本当に申し訳ありません・・・≫
「もう謝罪は良いですよ。
それよりも私の今後の話をして下さい。」
≪分かりました
私達が作った世界には今の肉体のままでは
行く事が出来ません
新しい肉体に貴方の魂を入れる事になります≫
「俺は俺のままで見た目が変わるという事かい?」
≪見た目は好きに出来るので、
貴方の好みで作成して下さい≫
オンラインゲームのキャラクター作成みたいな
感じかな?
≪詳しくは説明書を用意しているので
良く読んで作成して下さい≫
「説明書?」
≪本来であれば1年に1度、
広大な宇宙にいる生物から
1人だけ転生させるので
その時用に説明書を用意しているのです≫
「私以外にも転生者がいるんですね。」
≪はい
そして転生者には1つ能力を与えます≫
「流行りのチート能力ってやつですか?」
≪人によってはそうかも知れません≫
「含みがある言い方ですね。」
≪能力はランダムなので≫
「なるほど。欲しい能力とは限らないのね。」
≪欲しい能力にするとそれだけに頼ってしまい、
良い結果にはならないのです≫
俺なら上手く使えるか・・・と思う奴程、
失敗しそうだね。
≪それから貴方にはお詫びにもう1つだけ
能力を与えます≫
「という事はランダムで2つの能力が
手に入るという事?」
≪はい≫
「ちなみにその能力は
誰でも手に入れられるものなの?」
≪いいえ、ここでしか手に入らない能力です≫
・・・結構良い条件なのかな?
いや待てよ・・・。
2つとも使えない能力の可能性もある訳だから
死の代償としては安い気もするな。
≪そうですね
では体力・精神・持久が2倍の早さで回復する
女神の守護を特別に付けましょう≫
死に難いと言う点では良さそうだね。
即死レベルだったら意味ないけど。
≪女神の加護を付けましょう
全てのステータスが1.5倍になります≫
1.5倍か。
・・・この辺りが妥当かな。
いや、でも俺って女神様のミスで死んだんだしな。
もう一声あっても良いような・・・?
≪どんな攻撃でもHPとMPを吸収する
女神の援護を付けましょう
これで最後ですよ≫
「分かりました。
しかし今度はオンラインゲームみたいな
世界なんですね。」
≪私達女神が作った世界なので
管理し易い様にしています≫
「なるほどね。」
≪さて、私はもう行かねばなりません
後はこの説明書を読んで下さい≫
そう言って出してきたのは
広辞苑並みに厚い本だった。