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 この世界にやってきて一晩がたった。

 このあたりには相変わらず草と苔むした石の塊しかない。


 俺と同じようにこの世界にやってきた男たちもこの場所にとどまっているものが多い。

 しかしここに来たときに比べると明らかに人口が減っている。

 おそらくこの巨石群を抜け出し、出ていったのだろう。


 普通ではないこの世界で、ここら以外の場所がどのようになっているのかなど想像もつかない。

 しかしいつまでもここにいるわけには行かない。

 そのことはここにいるすべての人間がすでに気づいているはずだ。


 この世界に飛ばされたものは外の世界に恐怖しているのか、何もわからないままで動くのは危険だと判断しているのかはわからないが、少なくともここには生きるために必要なものがなさすぎた。

 特に一晩たった今、飲まず食わずだった者たちが、空腹でないわけがない。

 しかし動物は愚か、食べられそうなきのみ一つすら転がっていない。

 現状に我慢できずにこの場所を去る者が現れるのも時間の問題だったのだ。


 俺もそろそろ空腹が限界に達しそうだ。

 なにもわからないからこそ、たかが空腹などでくたばるわけにはいかない。

 いざというときに腹が減ってましたでなんとかなるとも思えない。


 そういえば昨日声をかけてきた男はまだこの場にいるのだろうか。

 ふと脳裏をよぎったあいつの「困ったときは連絡をくれ」という言葉が俺の右手を動かした。

 フレンドの画面に唯一彼の名前が記されていた。『宇山穂生』。

 現在地『王都跡地』。


「王都跡地……?」


 王都跡地。

 それは一体どこなのだろうか。

 跡地といえばこの場所もそれらしき雰囲気は漂わせているが、もしかするとすでに他の場所へたどり着いているのかもしれない。


 穂生はこうも言っていた。

 フレンドになればいつどこでも連絡が取れると。

 試しに連絡を取ってみることにした。

 名前に触れるといくつかの項目が現れた。

 『魔通』と『メッセージ』と書かれた項目がある。

 メッセージはすぐに理解できた。

 いつでも好きな時に文字を相手に送ることができ、それは読んだあとも残り続け見返すこともできるのだろう。

 『魔通』とは聞きなれない単語だがこれも記憶が失われた影響か。

 今はとにかくなんでも試すしかない。

 その言葉が書かれた項目に触れてみた。

 すると頭の中に何か糸のようなものが空から降りてきて繋がったような感覚がした。

 そしてしばらくすると、頭の中にその糸をつたって声が聞こえた。


「やあ、星太。なにかあった?」


「まじで話せてる……。ってあ、ええっと……」


 頭の中に声が流れてくる不思議な感覚にうまく言葉が出なかった。


「どうしたの。そんな阿呆な声出して」


 穂生の笑い声が聞こえる。

 どうやら俺の声も相手に届いているようだ。

 どういう仕組かはわからないが、この機能は『魔通』で繋がった相手と会話ができるものらしい。


「ああいや、初めての感じだったからついな……」


「ああ、なるほど。たしかに初めは困惑するよね。それで、要は何?」


 俺は穂生が今どこにいるのか訪ねた。

 あいつもまだ俺と同じ場所にいると言った。

 つまり今俺がいるこの場所が、現在地に記されていた『王都跡地』ということになる。

 王都跡地ということはここにはもともと王国が存在していたのだろう。

 しかし今はただの巨石群と成り果てている。

 この場所には歴史があるのか。


「星太はまだ王都跡にいるんだよね? ちょっと今から会ってくれないかな」


 穂生に返事を返し、話は終了した。

 すぐにここまでくるようだが、一体なんの用なのだろうか。

 同じ王都跡地と言っても実際はかなりの広さがあるようだ。

 もともと王都があった場所だというからこの広さにも納得がいく。

 穂生の居場所はわからないが、それなりの時間はかかると思っていたほうが良いだろう。

 そう思っていたのだが予想とは裏腹にすぐに穂生はやってきた。

 この男に裏切られるのはこれで三回目だな。


「やあ、待たせたね」


 そう言ってやってきた穂生の隣には大きな男が立っていた。

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