プロローグ
絶望の中、私は何もない空間を漂っていた。
全てが闇。虚無の空間。
ここが死後の世界なのだろうか。それともそこへ行く途中なのか。
……どうでもいいか。私は全てを失い、滅んだのだから。
この世に生を受けて以来、私なりに努力してきた。
やる気のない同僚の頭を吹き飛ばしたり、使えない部下の頭を吹き飛ばしたり、敵の頭を吹き飛ばしたりした。
敵の組織に部下を潜り込ませて内部抗争を起こさせたり、野心を持つ者に力を与えて裏切らせたり、時には味方すら騙して操ったりもした。
自分が邪悪な存在である事は理解していたが、間違った事をしてきたとは思わない。
正義というのが、自分の置かれた立場において正しい事をする、と定義するのなら、私は常に正義を貫いてきた。
純粋に、真っ直ぐに。自分にとっての正義を貫き、邁進してきた。後悔はしていない。
――たとえそれが一般的には『悪』と呼ばれるものであったとしても。
だが、その結果が今の状態だとすると……私は生まれた時から間違っていたのかもしれない。
同僚は皆、戦死し、裏切り者も後を絶たなかった。
私自身も私とは真逆の正義を掲げる者によって打ち倒され、敗北した。
気が付けば、私が属する陣営は全滅し、この世から消え去る運命をたどった。
私は、何のために生まれてきたのだろうか?
邪悪な存在として葬られるためか? それとも、正義を掲げる者に倒されるためなのか。
後悔はしていない。だが、この結果はあんまりだとも思う。
上手く言えないが、もっとこう、生きててよかった、的な一生を送りたかったと思うのは贅沢なのだろうか。
もしも生まれ変わる事ができたのなら。
次はもう少し、マシな生き方をしてみたい。
それが、消えゆく私の最後の願いだった……。
そして、私は唐突に目覚めた。
見知らぬ世界で、人間として。