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一人のための戦争  作者: コト シヲタマ
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第四章「悲惨:逃れた末に…」

試験勉強がめんどくさいです(笑


まだまだ文章が未熟なのでご指摘ありましたら何なりとお書きください

妃之御結衣率いる第四グループのメンバーは、「ストレイジ」から逃げていた。闇雲ではなく、なるべく巨大兵器の入れないような細い道を。

「緊急事態発生!我々第四グループは『ストレイジ』に捕捉されている!直ちに援軍を要請する!繰り返す!……」

妃之御が刺すような声で通信を飛ばす。平和な時間は一瞬で一刻をも争う事態となった。第四グループの四人はひたすら細い路地裏や道を突き進んでいく。

「くっ…、こんな日だからハンドガンくらいしか持ってきてないってのに!」

九重が言葉を吐き捨てた。

「とりあえず敵兵は『ストレイジ』だけみたいだし、なんとかあいつを撒こう。そしてわざと拠点近辺に引き寄せて数で攻撃をしかけるよ」

この桜木の作戦に、妃之御の迅速な通信機の使用。春瀬は改めて彼女らが軍人であることを印象づけられる。

しかし春瀬の不安は大きいものだ。

バカでかい兵器にはどんな武装があってどんなことをするのかも計り知れないからである。

「大丈夫だ。私たちがいる」

春瀬の手を引っ張りながら心配してくれた妃之御が励ましの声をかける。

「は、はい……」

春瀬は声量は小さいながら自信を持つために胸の前で拳を強く握った。


拠点周辺まで……七百メートル。


拠点すべての施設に響いた妃之御の通信は、聴いた誰もを唖然とさせた。

ちょうどこの時間帯は大多数が午後の訓練のトレーニングルームにいる時間だ。そのトレーニングルームに一人の男が入室した。

詠崎加賀佐(かがさ)司令官だ。

「全員こっちを向け!!!」

室内全域に響くその声にみなが視線を一点に集中させた。

「これから緊急任務を発令する。先ほどの通信でも伝えられた通り、第四グループ。つまり『魔女』春瀬佟華のいる隊が敵軍の『ストレイジ』に狙われている。彼女を敵軍に渡したらどうなるかくらい……わかるよな」

詠崎の重い口調に全員が息を飲んだ。

「そういうことだ。今から発令する任務は、春瀬佟華の守護及び第四グループメンバーの援護!絶対に『魔女』を敵軍に渡してはいかん!」

詠崎は指揮を上げるがごとく勢いよく銃を一発発砲した。

「……全員出撃だ!!」

「「「オォー!!」」という声とともに指令官にならって全員の銃砲がなり、全隊員はさっそうと出撃した。

詠崎はその姿を見送りながら、

「間に合ってくれよ……」

と静かに呟いた。


ストレイジの位置を移動と共に鳴り響く轟音で予測しながら、なるべく建物の多い場所をとおる。

幸い建物をむやみに壊したり銃を乱発してはいないようなので、一般人への影響は少ないようだ。

「みんな!あと六百メートルだ!」

銃を片手に聞こえた妃之御の声に九重は唇を噛み締めた。

まっすぐ進んでいるわけではないため三、四百メートルは走ったのだが、そこまで進んでいないとわかると唇を噛み締める理由もわかるだろう。

「ったく!いつまで追ってくんのよあいつ!!」

「すまないがまだまだかかりそうだ。ここから先は大通りが多すぎる」

といいながら曲がった先で何かが大きく聞こえた。ストレイジの機械音が先程よりも明らかに大きい。

とっさに妃之御は左右の大通りを確認した。そして慌てて全員を率いて走り出した。確認したときにはこちらに気づいていたからだ。

壁に激突しようという勢いでストレイジは迫ってきている。そして本当に妃之御達の少し後ろで建物に激突した。

しかし傷一つ付いていないどころか、ストレイジはすぐに動き出し、春瀬に狙いを定めて腕を振った。

「危ない!!」

「きゃああっ!」

九重がとっさの判断で飛び出し、ストレイジの腕から春瀬を守ると一斉に妃之御達は走り出した。

(くっ!ここまで近づかれたら有利な道を見つける事まで計算していられない!)

最前列にいる妃之御は苦しい顔で後ろのストレイジを見た。先程の突っ込むようなスピードでないのは、春瀬の命を考えての事だろう。おそらく目的は回収。

一方、中列に位置する桜木は常にストレイジを睨むように見ていた。

逃げつつ、かつ真剣にストレイジの全身を全て見通す様に。

そして、表情が変わるとともにあとの後列二人を逆方向に追い越して走った。

突然過ぎる出来事にみんなが足を止めた。

「桜木さん!?」

「ばか!なにしてる!」

「桜木!戻って来なさい!!」

みんなの言葉無視するように真剣な眼差しで目の前の巨大兵器だけを見つめている。

そして、

「ここだあああぁぁっ!!」

と叫びながら桜木は機体の足元に滑り込み、左足の付け根をめがけて銃を一発撃ち込んだ。

すると、足元が崩れると同時に爆散し、物凄い勢いでストレイジの全身が誘爆を起こした。

「桜木さん!!」

二人は叫ぶ春瀬の手を引っ張って近くのビルに身をひそめた。周りの建物が爆破の衝撃で大きく揺れた。地震のようなレベルだった。

爆発がおさまると、真っ先にストレイジのいた場所に向かった。

……………………。

少しの沈黙の後……春瀬が、力が抜けたように地面に座り込んだ。

ストレイジだったと思われる瓦礫の下に、桜木らしき人が見えた。見えているのは腕だけで、彼女の腕の周りには、大量の血が流れていた……。

「っ……ひっ……くっ……ぅう……」

春瀬に言葉にならない声と涙だけが溢れてくる……。

「だ……から……戻って来てって、言ったじゃないの……どうして無茶するのよ!!……どうして……どうして……」

桜木の手を握りしめ、九重は叫んだ……。

「くっ……!」

妃之御は、涙を堪えながら目をそらした。

三人全員がその場に立ち尽くしていた。しかし、無線から慌てた声が聞こえた。

『おい応答しろ!妃之御!!応答しろ!』

すぐに応答はできなかったが、突然の詠崎司令官の無線に妃之御も慌てて反応した。

「どっ、どうしたのですか……!?」

『いまそちらに部隊が向かっているが、最悪だ…。ストレイジの二体目がそっちに近づいている!なにがあっての事か知らないがすぐにその場を離れろ!!』

「なっ……!?」

妃之御は春瀬達を見た。

「………」

『なにしてんだ急げ!!』

そして桜木の腕を見た。その時、ドクンドクンと強く胸が締め付けられるような気がした。

「……っ!」

『早くしろ!!』

徐々に胸の締め付けは強くなり、心臓の鼓動が物凄い勢いで上がっていく。

妃之御は春瀬達の命、そして桜木が生きていると信じ、置いていけないという気持ちに、とてつもない圧迫感をうけているのだ。

『そんまま立ち止まってたら死ぬんだぞ!お前も!その仲間も!!』

「っ!!」

死ぬ……、その言葉に彼女は反応した。桜木みたいな目に仲間を合わせたくないと……。

最後に妃之御は桜木を見つめた。

「くそぉぉぉぉ!!」

気持ちを吐き出すように叫び、九重と春瀬の腕を掴んで走った。

「二体目のストレイジが近づいてる!逃げるぞ!」

「でも…!でも桜木さんは!?」

妃之御は言った。涙を滲ませながら、強く歯を食いしばり、

「私は!もう誰も仲間を失いたくなんかないんだ!!」

二人は気づいていたはずなのに、改めて確認させられたような気がした。

いままで顔を伏せていた九重が真っ直ぐ妃之御を見つめる。

「行こう…安全なところへ。そして生き残ろう!桜木のためにも!!」

九重の握る手が痛いくらいに強くなった。そして、春瀬の手も少しばかり強く握られていた。

九重は背後も警戒するために二人との間に多少の距離をとった。

走る、とにかく全力で走る。それぞれ、自分でなく仲間を守るために自分が走る。

『援軍が16地区大通りに到着した!そこへ向かってくれ!』

16地区の大通りは近く、目の前の路地を抜ければすぐにある。

「向こうの大通りに援軍がいる。もう少しだ。全力走ってくれ!!」

妃之御の言葉に安心感がうまれ、春瀬は自分の足に急いで、と頼み込むように先ほどより強く力を入れた。そして走り出そうと腕を振り上げた。

春瀬のその行動を見ていた九重は春瀬に合わせてペースをあげた。しかしその時背中に強い風が当たった。自然なものではない、気が付いた頃には右側から轟音が聞こえていた。

そして、思い切りコンクリートの壁にぶち当たった物爆風を巻き起こし、九重はなすすべなく地面を転がされた。

「きゃああああっ!!」

とっさに反応したのは春瀬だ。

突然の出来事に妃之御も手の力を緩めてしまったため、春瀬は倒れてい桜木の元へ走ってしまった。

「くるんじゃないわよ!早く逃げなさい!!」

しかし春瀬は言うことを聞かず、彼女の元へと向かった。

「ダメです!九重さんも一緒ににげるんです!」

二人の危険を察した妃之御も二人の元へ駆け寄った。

「九重立てるか!?春瀬も急ぐぞ!」

二人の手を引こうとする妃之御。だが、春瀬は細い路地にいる人々を見て絶句した。

「あ・・・あ・・・うそ」

そこにはロケットランチャーやマシンガンなどを持ち、フル装備をしている敵の軍人が三人もいた。

「そこの君たち!命が惜しくばおとなしく魔女をこちらに渡せ!!」

軍人の一人が彼女達に呼びかけた。

絶対絶対の状況の中、妃之御は険しい表情で、手を震わせながら敵軍に告げる。

「こいつはあたしの仲間だ!佟華は絶対に渡さない!」

「そうよ!あんたらなんかにやるもんですか!男なら力づくで奪って見せなさい!!」

不安と恐怖が入り混じる中放たれた言葉から、春瀬は二人の覚悟を感じ、そして嬉しさを感じた。

(私が・・・守らなきゃ、弱くても、助けてもらうだけは・・・いやっ!)

心の中で春瀬が叫び、拳を握りしめた。しかし能力の使い方も何もかもしらない春瀬にできることはない。

そのことを自覚すると、次第に拳を握る力は弱まっていった。

敵軍が反抗行為とみなし、妃之御達に銃口を向け引き金に指が伸ばされた。

「いや」

妃之御と九重が恐怖のあまり目を瞑る。

「やめて、九重さん達を狙わないで・・・」

そしてマシンガンの銃声が鳴り響く。

その瞬間、

「やめてええええええええ!!」

佟華の声と同時に異質な音がなり、春瀬を中心として三人を囲うようにバリアが張られた。

生きていることが不自然だと思った妃之御と桜木は、目の前の光景に唖然とした。敵兵の驚きの表情と自分の周りに貼られているバリアに。

「なんだこれは・・・」

敵兵の一人が慌ててロケットランチャーを撃ちかます。しかしバリアに触れた瞬間消えた。その後も次々とマシンガンや手榴弾などを放つものの、何一つ彼女達の元には届いていない。

「これが、魔女の・・・力・・・」

そう、九重が気づいた事そのものだ。これが無限を誇る魔女の力、そして、彼女自身もわからない謎多き能力なのである。

「はあ・・・はあ・・・」

先ほどまで全身に力を入れていたためか、疲れ切った様子で佟華が地面にぺたんと膝をついた。

同時に、三人を囲んでいたバリアも消え、それに気がついた敵兵たちが一斉に銃を構え直した。

だが、敵兵たちの真ん中に位置する一人が落ちるように倒れこんだ。

他の兵士も驚いて背後を見る、しかしその敵兵二人も倒れこむ。

「おーい大丈夫ですかー!」

通路奥から呼びかける声の主は第二拠点の援軍だった。

「え、援軍・・・助かった」

安堵の表情に満ち溢れる妃之御。

「嬉しいわ。でも複雑ね、この三人で生き残るのってのは」

莫大な緊張感と不安が緩んだ九重は桜木を思い出し、素直に喜べない感情になった。

そして春瀬は九重の憂う様な言葉に何も言えずにいた。


この日当日。桜木の葬儀が行われ、第二拠点の海沿いに桜木の墓が建てられた。その墓を妃之御と九重が静かに見つめている。

そこに詠崎が足を運んできた。

彼女達の背中越しに詠崎が告げた。

「春瀬佟華は部屋にいる。今はそっとしておいたほうがよさそうだ」

「・・・そうですか」

妃之御の反応を聞くと、詠崎は彼女達より桜木の墓の目の前まで歩いた。

「お前は勇敢な兵士だった。お前がいなければ春瀬佟華は奪われていたかもしれん。桜木幹逢、お前の冥福を祈る」

妃之御はそんな紙に書いた様な言葉をかけた詠崎に対して銃を向けた。

「ちょっと、結衣!なにを!」

九重が慌てて止めようとするが、それを防ぐかのごとくはっきりとした声で詠崎に話す。

「詠崎司令官、あなたはそんな事を言うつもりじゃないはずです。ちゃんと本音を桜木に伝えてください」

妃之御の言葉でもうしばらく桜木の墓を見つめ直す。

そして数秒が経過し、詠崎はその場を後にしながら一度立ち止まり、

「桜木、すまなかった。お前を亡くしたのは司令官として一生ものの不覚だ・・・」

そう告げて詠崎は立ち去った。

「全く、素直じゃないな」

銃を降ろしながら妃之御はそう呟いた。

この話でだいたい半分です

結構短めになってます


後半も頑張ります。

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