プロポーズ
「好きです。私とお付き合いしてください!」
告白は私からだった。彼の返事は「いいですよ」の一言だけだったが、私は嬉しくて涙が出そうになった。
あれから12年の月日が流れた。
☆★☆★☆★☆
「ねぇ、結婚したら子供は何人欲しい?」
「考えたことありませんね」
グサッ
「じゃ、じゃあ、男の子と女の子、必ず欲しいのはどっち?」
「どちらでも」
グサグサッ
「そ、そっかぁ」
「何故そんなこと聞くのですか?」
「え、あ、えっと、その、ね?あはは」
くっ、馬鹿野郎!もう二十代でいられる期間が短いんだよ!この鈍感!気づけよ!いや、気づいてください!結婚焦ってるってことに!
そりゃあ、男で私より年下な龍(彼の名前ね!本田龍!ちなみに私は佐倉菜々子ね!)は焦る必要がないのかもしれないけどさぁ。ねぇ?告白は私からだったけど、流石にプロポーズはされたいからそれとなく話題に出してみたりしてアピールしてたんだけど、無理かなぁ。
こうなったら指輪買ってプロポーズするか!うん、そうしよう!
龍が大好きだから別れるなんて出来ないし、もうそうするしかないよね!
「よし!」
「突然どうしました?」
「龍、私帰るね!多分これから忙しくなってここに来る時間減るだろうけど心配しないで!」
「あ、はい。無理はしないでくださいね」
「ありがとう!じゃあね!」
☆★☆★☆★☆
指輪も買ったし、場所のセッティングもバッチリ!断られるなんてことは……
待って、私、ホントのホントに?絶対?確実に?龍が、私を好きなことは間違いないよね、うん。何回か「好きです」って恥ずかしそうに言われたことあるし!でも、それは結婚に至るほどの好き?そこまでも気持ちがないから龍から結婚の話が出たことがないんじゃない?
「奈々子さん、お待たせしてしまいましたか?」
「ぎゃっ!りゅ、りゅ、龍!あ、わ、え、よし、行こうか!」
「はい」
もうここまで来たら気合だ!
「でも、今日は急にどうしたんですか?暇だったらここに来てって、僕に用事があったらどうするつもりだったんですか」
「はっ。考えてなかった!」
「…奈々子さんは相変わらずですね」
「あははっ。という事で、結婚して下さい」
「え」
指輪を出しながら言うと龍が固まってしまった。愕然としている、のかな。
「い、今なんて」
「?結婚して下さい」
「な、何で!?」
「え、龍と結婚したいから。…龍は私と結婚したくなかった?」
「っ」
「わ、私は龍が大好きで、龍との子供が欲しくて、未来でもずっと一緒がよくて、だから、だからね結婚してください」
「こ、この指輪は?」
「給料三ヶ月分で買った結婚指輪です。ついでに結婚届も有ります。私のところは記入済みなので答えがイエスなら書いてください!ノーなら破り捨ててください!その時は指輪もドブに捨てちゃってください!」
沈黙か。あぁ、泣いちゃダメ、優しい龍は涙なんて見せたら切り出し辛いでしょう?だから泣かないの。ダメだってば。
「奈々子さん、すみません」
泣きそうなのがバレてしまうのが嫌で俯く。あ、余計泣きそう。ほら、もうちょっとだから、泣いちゃ、ダメなの。
龍が動く気配がした。
行かないで!結婚しなくてもいいから捨てないで!って、縋りつきたくなってしまう。
「大好きです。だからそんな顔しないで下さい。僕もあなたと結婚したいです」
目の前に龍の腕が見える。なんで?立ち去られるとばかり思っていたのに。これは、夢?
「佐倉菜々子さん。僕と結婚して下さい。」
足元に跪いて指輪を持ってそういう龍。
「この指輪が菜々子さんのなのはかっこがつきませんね」
不服そうにそれでいてどこか嬉しげに龍は言う。
「あなたが大好きです」
龍のその言葉に対する私の答えは決まってる。
「私は愛してる!」
「菜々子さん」
「なぁに?」
「実は菜々子さんが結婚したがっているのもプロポーズされたがっているのも分かってました」
「えぇ!」
「でも、勇気が出なくて何も言えなかったんです。すみません」
「龍、私ね、さっきも言ったけど子供が欲しいの。高齢出産はリスク高いしもっと早く言って欲しかったな」
「すみません」
「龍は若いから焦ってないだろうけどね、私は焦ってたの」
「すみません」
「だからはやく結婚式して子供作ろうね!」
「っ!無邪気な笑顔でそんなこと言わないでください!」
というとこで菜々子に急かされこの後すぐに2人は式をあげることになるでしょう。
あえて場所の特定ができる描写はありませんので皆さんのプロポーズはやっぱこういうシチュエーションでしょう!という風景を想像して下さい!
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました!