プロローグ
勇者(超美少女)が登場するのはしばらく後になるかも
「アンタさ、そーんなに自慢の剣なんだったらちょっとその剣で大会出てみなさいよ」
きっかけは幼馴染みのユリアンのその一言だった。
俺はガルス・ハマー。アルティア王国の上級迷宮冒険者だ。
上級冒険者なんて大層な名前だが五年もダンジョンに潜れば誰だってなれるようなちゃちぃもんだ。
スゴイヤツってのはここから上、冒険騎士(貴族お抱え)とか、王宮冒険者(王宮お抱え)とかいうのになっちまうらしいがなれたヤツなんてこの辺じゃ聞いたことがない。
みんなドングリの背比べみてぇなもんだ。
だが、俺はその中でも抜きん出た存在だ、と俺は思っている。
容姿の事じゃないぞ。黒髪黒目の童顔でモテたことなんか一回もない。だからこそ、一昨日まではただの冴えない冒険者だったが今は違う。
昨日でっけぇダンジョンに潜ったときに宝箱から偶然手に入れた剣、『ダモクレス』。 詳細なことはわからないが、長ーい間ダンジョンに潜ってきた俺の本能が告げるのだ。「こいつは只者じゃあない」、と。
それで、幼馴染みのユリアンの家に飛び込み剣を自慢たっぷりに見せてやって、三十分くらい昨日の冒険譚と共に語ってやったら、この女がさっきのようにほざいたのだ。
だが、俺はこのとき有頂天だった。
ガキの頃、村のかけっこ大会で優勝した時よりも興奮していた、と後から思う。俺は勢いに任せて言ってしまった。
「分かったぜ、だが優勝したら結婚して貰おうか」
普段なら恥ずかしくて絶対に言えないような言葉を軽く言ってやった。当然、冗談に決まっているのだが。
大会、というのは御前武闘大会、すなわちこの国最大の武闘大会だ。毎年王都で開かれるそれには、我こそがアルティア王国最強であると、大陸中に名を轟かせるような冒険者や魔術師、果てはアルティア王国の切り札、『勇者』エリーシャ・フリージアスまで集まってくる。勝てるわけがない。
だからこそのツッコミ待ちだったのだが、ユリアンは面食らったのか固まって何も言わない。 沈黙が妙に気恥ずかしくって俺はソソクサとその場から逃げたが、その足で大会へのエントリーシートを記入しに冒険者ギルドへ行ったのはユリアンには一生秘密である。