#3 価値
「エタ〜、服買ってきたから…」
そこにエタの姿はなく、あったのは戦闘の痕跡だけだった。
#3 価値
朔は急いでスマホを取り出し何処かに電話をかける。
「葵衣!エタがいねぇ!」
『は?逃げたってこと?』
「いや、戦闘の痕跡があった、拉致られたかもしんねぇ。」
朔はエタの居場所を推測する。
「2、3分、目を離したときだ、まだ近くにいるかも知れない、葵衣も探してみてくれ」
『わかった…何か進展したら連絡して。』
朔は店の看板を裏返してすぐに走り出す。
「どこに…クッソ…」
一方その頃エタは
得たが目を覚ましたのは薄暗い倉庫のような場所だった。
「ん…どこ…」
「あれ、もう目を覚ましたんだ、早いね〜。二十分経った頃かな、」
エタは立ち上がろうとするが、毒が抜けていないのか足がもつれる。
「ああ、抵抗しないほうがいいよ〜?どうなるか…少し考えればわかるよね?」
「…」
エタは諦めたのか地面にへたりと座る。
「あんたはあたしを研究所の人間だと思う?」
その言葉に対し、エタはこくりと頷いて返答を待つ。
「そう?あたしはね、元異能対策課FDの人間なんだ。」
「秩序を重んじる…あの?」
「そうそう、それ。理由はまだ言わないけど…あたしは秩序のためにあんたを消す。」
「あたしの能力が世に出れば秩序が乱れるって言いたいの?」
「お〜、よく理解ってんじゃん?まあそんなことで、もう終わりにするけど、いいよね?」
フェルナはエタに対して銃を構える。
「終わりにするって言ったけど、それにしては遅い、殺すなら店でやっても路地裏で意識がないうちにやっても同じ。あたしを殺すのを遅らせた事情があるんでしょ?」
「時間稼ぎのつもり?それだけならもう終わらせるけど。」
「さあ?でも、もう来る頃なんじゃない?」
その瞬間、車のエンジン音とともに倉庫の扉を吹き飛ばして一台の車が突撃してくる。
「見つけた。」
「チッ!」
フェルナは急いで銃を構え、車のタイヤを撃ってパンクさせる。
「それだけ?」
葵衣は一瞬のうちにフェルナの上を跳んでいる。
「飛んだところで的になるだけだよっ!」
葵衣の腹部をめがけた弾丸が着弾する。
「命中。案外弱かっ…」
と思った矢先、フェルナの首に一撃重い蹴り、腹部、足と一撃一撃が重い上、精度もある蹴りの前に、思わずフェルナがバランスを崩す。
「がっ…」
「終わり。」
葵衣はフェルナの口腔に銃身を差す。
「あたしの異能は銃者、簡単に言ったら、ある程度銃や弾丸に関するものを操作できるってこと。」
(そーいうわけか…)
「じゃ、組織のこと、洗いざらい吐いてもらうよ。」
その瞬間、面に隠されたフェルナの左目が光る。
「なっ!?」
それを認識する前に葵衣は吹き飛ばされていた。
「あんたの能力教えてくれたからあたしの能力も教えてあげるよ、あたしの目、ノーモーションで刻まれた効果を出せる、今のは衝撃波だね。」
「ふーん…強いんじゃない?」
「余裕がないのが見えてるよ?」
「私にはないかもね?」
そう葵衣が言葉を紡いだ瞬間、車にいた朔がフェルナの首に葵衣の何倍も重い蹴りを入れる。その衝撃でフェルナも吹き飛ばされる。
「よくやった。朔。」
「何だその態度…」
土煙の中からフェルナの影が現れる。
「まじか…結構いいの入ったろ?」
「多分、もう一つ、何かの能力。緩衝なり防御なり色々あんじゃない?」
「だいたい正解かな、細かく言うと違うけど。」
「その能力を上回る攻撃をすればいいんでしょ?」
いつの間にか毒が抜けていた様子のエタが葵衣に問う。
「たぶんね、っていうか、あんたはまだ動きにくいでしょ。休んでなよ。」
「これは捕まったあたしの失態。後片付けはあたしがやる。」
エタが一歩前に出る。
フェルナとエタの正面からの戦い。先にアクションを起こしたのはエタだった。
得たが腕を軽く振りかざすと、倉庫の貨物や木箱がまとまって一斉にフェルナを襲う。
「そこまでか…!」
耐えきれずにフェルナは押し込まれる。異能の出力をそのままに、銃を手にとって追撃に出る。そして、前戦ったときよりも動きにキレがある。それはまるで葵衣の戦い方を見ているようだった。
(まさか…私を見て成長したってこと…?)
エタは更に異能の出力を上げて、倉庫を丸ごと操ってしまうような勢いでフェルナへの攻撃を絶やさない。
「っ!対処しきれないっ!」
四方八方から来る木箱や瓦礫、弾丸も交じる物量に押されつつ有る。
「流石に…ここは引かせてもらうよ!もともとあんたたちとやり合うつもりはなかったしっ!」
フェルナの額には汗が滲んでおり、これ以上は不利になると判断したのか、フェルナの体は強い光とともに消えてしまった。
「瞬間移動?そもそも、あんな強え異能があんならエタに構う意味はないんじゃねえのか?」
「十中八九、エタみたいな規格外の出力は出せないんでしょ、エタに対して防戦一方だったし…」
先程までの戦闘音とは一転して、倉庫に静寂が流れる。もっとも、倉庫は破壊の限りを尽くされていて原型はとどめていないが。
「う…」
その瞬間、エタは力を失ったように倒れてしまった。
「痛っ…流石にあの子規格外だったなぁ…」
フェルナは転移先で怪我の応急処置をしていた。
「やっぱあれと正々堂々やったらギリ負けるかな…本気でやればわかんないけど、」
「エタが研究所やら組織の連中の手に渡る前に…あたしの手で…」




