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旧人類最後の一人となったおっさんパイロットは、ファンタジーと化した世界で人型機動兵器を駆り無双する!  作者: 真黒三太


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ガルゼのお館 2

 ――ガルゼ城。


 国にとって背骨とも血管とも呼べる大街道――中央道を見下ろすかのように築城されし、山城である。

 平時においても行き来で苦労する坂道と、高く頑丈な城壁によって守られし内部へ、いくつかの建物を備えた造りは、戦国の城としてごくごく一般的なもの……。


 その母屋に備わった評定の間……つまり、ガルゼという国において頭脳と呼ぶべき場所において、1人の老エルフが皆を見回していた。

 齢58。細身の体は、加齢によって肉が減っているのではなく、戦続きの人生を送ったことにより、極限まで無駄が削ぎ落とされ、研ぎ澄まされた結果である。

 だが、さすがに髪の毛は年齢に勝てぬのか、すっかりと色素が抜け落ちているのを、まげ結いにしていた。

 あごから伸ばしているひげは、彼のまとう威厳がそのまま形となったかのよう。


 彼の名は――ゲンジ。


 戦国最強と名高き戦士たちの頂点に立ちし、ガルゼのお館である。

 その大戦士が、板敷きの間に集いし者たちをじろりと見回した。

 青き瞳に宿った冷たき光の、迫力といったら……。

 気の弱い者であれば、ただ睨まれただけで、指一本動かせなくなるに違いない。

 もっとも、イタズラにそのような真似をしないからこそ、この老エルフは天下に名を轟かせているわけだが……。

 さすがに、あらかじめ詰めろをかけておいた戦が大敗に終わったなどと聞けば、どんな大エルフでも心は乱れるということだ。


「全て信じよう。

 と、いうより、たやすく裏を取れるようなことで、嘘を吐く理由がない」


 重々しき言葉が響いた板敷きの間に集いしは、跡継ぎカゲカツを始めとしたガルゼ四天王らと、それに匹敵する立ち位置の重鎮たち……。

 そして、歩き巫女チヨが、隅の方に控えていた。

 何も知らぬ者ならば、何故歩き巫女がと不審に思うだろう。

 だが、彼女ら歩き巫女こそが、神通眼とも称されるガルゼ諜報網の正体であり、ここにいる者らは、その事実を知っている。

 ゆえに、彼女が皆の前で行った報告へ、それぞれ唸っているところなのだ。


「分からぬ……。

 テツスケという耳短が考えていることの、真意が」


 開口したのは、チヨを除けば最も年若き武将――カゲカツ。

 強すぎる戦士とすら称される男は、若き頃の父と瓜二つな赤髪をガシガシとかきながら、いらただしげに続けた。


「なるほど、生身のエルフを飲み込み、一体となって動く伝説の巨神。

 その脅威は、相対していないオレですら容易に想像がつく。

 ヴァヴァが即座に撤退を選んだのは、英断であったと言えるだろう」


 さらりとヴァヴァを擁護する言葉が入っているのは、髪の色と同じく父の血か。

 将来、自分を支える一番の重臣が、こんなところで失脚しないようしっかりと配慮しているのだ。


「だが、それゆえに分からぬ。

 弱点が丸分かりではないか?

 そのテツスケとかいう男を、暗殺してしまえばいい。

 チヨは確かに失敗したが、生の肉体を持ったエルフであることは、しかと確認したのだろう?

 当然、警戒はするだろうが、手はいくつも思いつく」


 カゲカツが言ったこと……。

 それは、集いし重鎮たちの総意である。

 と、いうより、例のオデッセイなる巨神を無力化し、ガルゼの大願を果たすならば、それしかない。

 総力を結集しての大暗殺……ガルゼの魔術師団を総動員すれば、不可能な作戦ではなかった。

 だが……。


「カゲカツよ、それは違うぞ」


 意外にも、穏やかですらある声。

 ゲンジが、息子であり配下である将に向けて、そう語りかける。

 それから、この場で最高の知略を誇るし大エルフは、厳かに語り始めたのだ。


「そも、ヴァヴァですら敗退させた此度(こたび)の戦……。

 これは、我らガルゼにとって、決して不都合なことではない。

 いや、むしろ逆だ。

 千載一遇の好機が、訪れているのだ」


 ――おお!?


 ……臣下たちのざわめきが、評定の間を包み込む。

 そんな彼らを前に、ガルゼのお館様は解説を始めたのだ。

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