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旧人類最後の一人となったおっさんパイロットは、ファンタジーと化した世界で人型機動兵器を駆り無双する!  作者: 真黒三太


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神と埋葬 4

 なんとありがたく、そして、神聖な光景であろうか……。

 あるいは、日頃から自分たちが従事している野良仕事というものを、かくも大規模にたやすくこなしている姿へ、圧巻させられるべきかもしれない。


「おお……あれだけの深さがある穴を、こうもたやすく」


「まるで、土ではなくぬかでも掘り出したかのようだ」


「なんの道具も使わず、手指の技だけでかくもたやすく……」


 神に対し恐れ多くも、穴の位置、深さと広さを指示すべく、オデッセイ様の周囲へ展開していた戦士たち……。

 作業を見守っていた彼らの顔が、皆一様に驚きのものとなっていた。

 それも、当然のことだろう。


 今回、ヤスヒサ(お館)様が敵方の墓地として指定したのは、コクホウに至る街道からほど近い位置にある空き地である。

 土地が空くのには、何がしかの理由があるもの……。

 ここは、水を引くのに苦労する立地な上、コクホウ特有の堅き赤土であるため、なんの産業にも利用されることなく放置されていたのであった。

 そう、堅い土なのだ。

 棚田の景観が印象的なコクホウであるが、鉱山都市の名で分かる通り、決して農業に適した土地ではない。

 現在、田畑として使われている土地は、長い年月を経て柔らかく肥よくなものへと作り変えてきたのである。


 ゆえに、今回の埋葬はただ穴を掘って埋めるという字面以上の大変さを誇る作業であり、死ねば仏とはいえ、攻めてきた相手のため骨を折る苦労に、戦士たちは辟易としていたのだが……。

 それが、たやすく解決した。


『指関節に土が入るから、本当は、あまりよくないんだけどな』


 この場所に誘導されたテツスケ様は、そう言いながらオデッセイ様をしゃがみ込ませ……。

 そして、猛烈な勢いで巨神の指を地面に突き立て、掘り出させ始めたのだ。

 その光景を見た感想が、戦士たちの口にした言葉だったのである。


 ただ指を突き刺しているだけなのに、それはズブズブとコクホウの堅い赤土へと沈んでいく。

 そして、これをすくい上げれば、たかが手指で掘っただけだというのに、立った状態の戦士がそのまま入り込めそうな深さの穴となっているのであった。

 試しに、戦士の一人が素手でもって、そこらの土を掘ろうとしてみる。

 だが、日頃から木剣で鍛え、何度も何度も皮が剥けて固いものに張り変わっているはずの手指は、むなしく表面をかいただけで終わった。


 なんという――膂力。

 オデッセイ様という存在は、ただ、エルフを10倍ほどに巨大化させただけの存在ではない。

 不可思議な金属によって構成されたその巨体は、生の肉体には宿らぬ神秘的な力で満ち満ちているのだ。


『それじゃあ、さっさと終わらせてしまおう。

 敵軍の墓穴を掘ってやったなら、今度は味方側の埋葬準備もしてやらないとな』


 そう言い放ったテツスケ様が、次々とオデッセイ様に両腕を振るわせていく。

 すると、あっという間に溜め池を作れそうな規模の大穴が出来上がった。

 深さ、広さ共に申し分なし。

 これならば、野生生物に掘り起こされる心配もなく、時がくれば、土に宿る神の力で遺体も大地に還ることだろう。


 まさに――手慣れたもの。

 まるで、遺体を始末する作業は、何十何百と繰り返してきたかのようだ。


『よし。

 それじゃあ、こちらの遺体が眠る場所……。

 本来の墓地へも案内してくれ』


 言われるまま、戦士たちはオデッセイ様を誘導し……。

 再度、城壁を飛び越えたオデッセイ様は、元々自分が鎮座していた場所にほど近い墓地で、戦死者それそれが眠る墓穴をこしらえたのであった。


 いや、それだけではない……。

 丁度、作業が終わる頃には、戦死者たちを乗せた荷車や牛車が到着してきたため、これを直接に埋葬すると申し出てくれたのである。

 伝説の巨神様手ずからの埋葬となれば、死した者たちが浮かばれること、間違いなく……。

 遺体が優しくすくい上げられ、穴へと入れられ、土を被せられる様に、戦士たちは感動の涙を流したものだ。


 しかも、テツスケ様は返す刀で城壁の外へと取って返し、運ばれてきた敵兵の遺体にも同じくするご慈悲を示されたのであった。




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― 新着の感想 ―
穴は手で直接掘ったんですね。 ツールナイフを使うのかと思ってました。 装備してなかったのかな?
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