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第8話 工業都市「オルガン・シティ」

錆びついた鉄の匂いが、支配する街。


かつては無数の機械が唸りを上げ、煙を吐き出していたであろう工業都市「オルガン・シティ」は、今や不気味な沈黙に包まれていた。

稼働を止めた巨大な工場、蜘蛛の巣のように張り巡らされた配管、天を突くクレーン――その全てが、主を失った鋼鉄の墓標のように、ただ静かに佇んでいる。


その街の主要区画、巨大な溶鉱炉が鎮座するエリアに3つの影が音もなく現れた。

空間が歪み、境界防衛機構レヴナント・コードの転送ゲートが閉じる。


モスグリーンのハイネックブルゾンに、機能的なカーゴパンツ。セカンド上位部隊の制式な隊服だ。その左胸元には、彼らがセカンド部隊の中でも選ばれた上位班であることを示す、誇らしげな刺繍が施されている。


《玲班 - 06》


中央に立つのは、班長リーダーである玲ノゾミ。風に揺れる細くサラサラのロングヘア。その凛とした佇まいは、戦場とは不釣り合いなほどの透明感を放っている。


彼女の右後方には、双子の兄、玲ヒロキ。緑色の瞳にクールな表情を浮かべているが、その意識の全ては、姉であるノゾミの一挙手一投足に注がれている。


そして左後方には、双子の弟、玲アオイ。礼儀正しい笑みを口元に浮かべているように見えるが、その深い藍色の瞳の奥には、姉以外のすべてを見下すような冷たい光が宿っていた。


3人の間に、言葉はない。

ノゾミがすっと視線を動かすだけで、ヒロキとアオイは即座に意図を理解し、完璧な陣形を維持したまま廃工場の奥へと進んでいく。彼らの連携は、まるで一つの生命体。他者を必要としない、排他的な絆で完結した、三位一体の戦闘ユニットだ。

その時だった。

ガラクタの山が、一斉に蠢いた。


「―――アァ、アア……」


意味をなさない呻き声と共に現れたのは、白灰のローブを纏い、燃え尽きた表情の仮面をつけた異形の集団――アガルタの(ほむら)の一般兵、「残焔信徒ざんえんしんと」。その数は20を超えていた。

だが、玲班の3人に動揺の色はない。


「……ヒロキ、アオイ」


ノゾミが鈴の鳴るような声で弟たちの名を呼ぶ。それが、戦闘開始の合図だった。

次の瞬間、ノゾミの右手に美しい鞘に収められた太刀が物質化される。彼女は、舞うように一歩前に出ると、流れるような動きでその刀身を抜き放った。敵の注意が、その圧倒的な存在感を放つ彼女1人に集中する。


「―――!!」


一体の信徒が、ノゾミのその姿に魅入られたかのように隙を晒した。

その刹那を見逃すほど、玲ヒロキは甘くない。


「オレのノゾミに、その汚れた視線を向けるな」


氷のように冷たい声と共に、ヒロキの両手に二振りの双刀が煌めく。彼は、獣のような俊敏さで敵の懐に潜り込むと、一瞬でその信徒を切り裂いた。


「邪魔、ですよ」


ヒロキの背後を狙おうとした別の信徒の動きを、怜悧な声が制する。アオイがその左手に物質化させた長槍を、的確に突き出していた。槍は信徒の仮面のど真ん中を寸分の狂いもなく貫き、その動きを完全に封じる。

ノゾミが敵を引きつけ、ヒロキがそれを狩り、アオイが死角を埋める。

完璧な円舞ワルツ

誰一人として、ノゾミの領域に踏み込ませない。


わずか数十秒後。

ノゾミが静かに太刀を鞘に納める頃には、切り捨てられた20体以上の信徒たちの骸は、最期の信仰を体現するかのように自らを燃やし尽くし、紅いほむらとなって掻き消えていた。後には、生々しい血の跡ではなく、ただ不気味な黒い灰が薄く残るだけだった。


ノゾミは眼前に広がる光景に目をくれることもなく、ただ、工業都市の曇り空を見上げていた。

その脳裏に浮かぶのは、ただ1人。

戦闘中の星風ノアの姿に心を奪われ、憧れの存在として強く心に惹かれている。


(見ていてください、星風隊長。私も、あなたと同じ場所に立つために……この程度の障害、すべて薙ぎ払ってみせます)


その静かな決意を、弟2人が絶対の忠誠心で見守っている。

玲班の最初の戦いは、その異質さと、底知れない実力だけを静かに示し幕を閉じた。

だが、都市の深奥部で彼らを待ち受ける「本物の敵」の気配を、3人はすでに感じ取っていた。

【現在公開可能なキャラ設定】

▶玲ノゾミ

年齢:18歳(高校3年)

性別:女

期:20期生

身長:163センチ

所属:セカンド部隊6位 玲班 班長リーダー

見た目:まつ毛が長く、繊細で透明感のある整った顔立ち。細くサラサラのロングヘアが凛とした佇まいを強調している。

武器:太刀

特徴:

・訓練校時代から「星風隊に入るのでは」と噂されるほどの風格

・戦闘中の星風ノアの姿に心を奪われ、「美しい」と感じるように

 以来、憧れの存在として星風に強く心惹かれ「星風を支えたい」という一心で入隊



▶玲ヒロキ

年齢:17歳(高校2年)

性別:男

期:21期生

身長:179センチ

所属:セカンド部隊6位 玲班

見た目:ノゾミ譲りの長いまつ毛、細くサラサラのクセのない金髪。前髪は目の下ほどの長さで、7:3に右分け。深い緑色の瞳。右耳には複数のピアスを着用。

特徴:

・豊作の期である21期生の1人

・ノゾミの実弟で、アオイとは双子の兄

・ 少しヤンデレ気質のシスコンで、姉に対して過剰なまでの執着と忠誠心を見せる

・ノゾミが訓練校に入ると聞き、「オレも行く」と当然のように受験して合格


▶玲アオイ

年齢:17歳(高校2年)

性別:男

期:21期生

身長:177センチ

所属:セカンド部隊6位 玲班

見た目:ノゾミと同じく長いまつ毛、細くサラサラな金髪。前髪は目の下あたりで7:3に左分け。深い藍色の瞳。左耳に複数のピアスをつけている。

特徴:

・左利き(左手の人差し指にリングギアを装着)

・豊作の期である21期生の一人

・ノゾミの実弟で、ヒロキとは双子の弟

・ヒロキ同様、姉に強い思い入れがあるヤンデレ系シスコン

・入隊のきっかけはヒロキとまったく同じで、姉のそばにいたいために志願

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