表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/70

第7話 戦端、再び

 ――暁ヒカルと詩カグヤの前期最終試験から、1年半後。


 2人は、予科・本科の課程を修了し、それぞれが選んだ道で、正式な戦士としての一歩を踏み出した頃。


 世界は、緩やかに、しかし確実に、再び「ほむら」の脅威に侵食され始めていた。


 ◆


 境界防衛機構レヴナント・コード本部、司令室。


 張り詰めた沈黙の中、壁一面に投影された巨大な戦略マップが、冷たい光を放っていた。マップ上のいくつかの防衛都市が不気味な赤色で染め上げられている。


 それは、アガルタの焔によって陥落、あるいはその支配下に置かれ、機能不全に陥ったことを示す色だった。


「――以上が、東部方面、ヴァンネス都市群における、ここ3ヶ月の被害報告です」


 漆黒のスーツに身を包んだ天辰あまたつジュンイチが、冷静な口調で報告を締めくくった。


「敵の戦術が明らかに変化しています。以前のような無差別な侵攻ではなく、都市のインフラや行政中枢に、潜伏させた信徒を送り込み、内部から崩壊させる手法に切り替わっている。もはや、単なる境界防衛だけでは、この侵食は止められません」


 彼の報告を受け、司令室の円卓を囲む最高幹部たちの表情が一層厳しさを増す。


 寡黙な歴戦の指揮官、伊坂ヒデキ司令。


 その右腕として、技術と戦略を統括する日並カツキ副司令。


 それから、ファースト部隊を率いる3人の隊長――知の天辰、美の星風、そして……


「……つまり、連中は俺たちの庭先で、こそこそと火遊びを始めたってことか。上等じゃねえか」


 黒髪を逆立て、鍛え上げられた肉体を誇示するかのように腕を組んだ望月トモヤが、低い声で言った。


「これ以上、好きにはさせられねぇ。こっちから殴り込みをかける時だ、ヒデさん」


「……同感です」


 ミルクティー色の髪を、美しいシニヨンにまとめた星風ノアが静かに続けた。


「これ以上の潜伏と侵攻を許せば、いずれ、このフェルゼス防衛都市も標的となる。そうなる前に膿は出し切るべきです」


 三者三様の意見。だが、その根底にある「反撃」の意志は一つだった。


 全ての報告を聞き終えた伊坂司令が重々しく顔を上げる。


「――決断の時は、来たようだな」


 その声は、司令室の空気を震わせた。


「これより、コードネーム『都市奪還作戦』を発動する。全セカンド部隊、及びファースト部隊に通達。全部隊、第一種戦闘態勢に移行せよ」


 戦端は、再び開かれた。


 ◆


 その決定は、即座に機構の全部門へと伝達された。


 戦いの気配が要塞都市全体を満たしていく。


 天辰隊の作戦司令室では、漆黒の隊服に身を包んだ聖乃ミユが、班員たちにタブレットを配布していた。


「――というわけで、いよいよ大きな作戦が始まるみたい。これは私たちの班に割り振られた、担当区域の敵性データね」


 そのタブレットを、13歳になった暁月ヒカルが無言で受け取る。


 彼は、天辰隊の一員として、漆黒のベストとハーフパンツという、少年隊員用の特注隊服を端正に着こなしていた 。その表情からは、やはり感情は読み取れない。



 同時刻、星風隊の優雅なラウンジでは、詩カグヤが純白のレースの手袋をその華奢な指にゆっくりと嵌めていた。


 同じく13歳になった彼女は、星風隊の隊服である軍服風のドレスを、まさにお人形のように着こなしている。


 その傍らで、隊長である星風ノアが満足そうに頷いていた。


「よく似合っているわ、詩ちゃん。その手袋は、あなたの『聖紋級 (ホーリー・クレスト)』の力を、より精密に制御するための補助礼装。大事になさい」


「……はい、ノア隊長」


 詩の返事は、憧れの全てを込めた祈りのようだった。



 そして、望月隊のトレーニングルームでは、


「うおおおおお! やってやろうじゃねえか、三崎、岩本! でっけぇ花火の打ち上げ時だぜ!」


 朝日リュウの雄叫びが、響き渡っていた。

 1年半の時を経て、彼らはそれぞれの場所で戦士としての顔つきになっていた。


 ◆


 機構内の緊張が最高潮に達した頃、各部隊の待機室に、具体的な出撃命令が下る。


 モニターに、次々とミッションの詳細が表示されていった。


【作戦任務概要】

 任務コード:RC-O-01

 任務ランク:B+

 対象区域:工業都市 オルガン・シティ

 投入部隊:セカンドユニット・ランク06【玲班】


 静かな待機室で、玲ノゾミ、ヒロキ、アオイの3人が無言で立ち上がる。


 彼らに与えられたのは、この大作戦の先陣を切る第一波の任務だった。


 3人は表情一つ変えず、静かに転送ゲートへと向かう。

 その先にあるのが、鋼鉄と焔の戦場だと知りながら。


 物語は、再び戦いの渦の中へとその駒を進める。


【現在公開可能なキャラ設定】

▶伊坂ヒデキ

年齢:59歳

性別:男

身長:179センチ

役職:司令(組織のトップ)

見た目:キリッとした目、年相応のシワ、白髪混じりの髪をジェルで整えている。きちんと着られたスーツ姿から、鍛えられた体とスタイルの良さを想像できる。

特徴:

・組織創設メンバーの1人

・29歳の若さで第一次境界大戦の総指揮を取り、勝利に導いた実績を持つ


▶日並カツキ

年齢:54歳

性別:男

身長:177センチ

役職:副司令(伊坂の右腕)

見た目:少しウェーブのかかったグレイヘアで髭も白髪混じり。チャコール色のシャツに黒のベストを着用。シャツの第一ボタンを外し、袖は肘のあたりまで捲っている。

特徴:

・創設メンバーではないが、ブレーンとして伊坂が勧誘した初期メンバー

・技術部部長・日並リュウヘイの兄


▶望月トモヤ

年齢:48歳

性別:男

身長:179センチ

所属:ファースト部隊 望月隊隊長

見た目:黒髪で前髪を立ち上げ、両サイドは刈り上げたショートスタイル。鍛え抜かれた筋肉質な体格。無駄のない戦闘的な体型。

特徴:

・組織創設メンバーの1人

・「派手にいったれ」が口癖


▶星風ノア

年齢:42歳

性別:女

身長:166センチ

所属:ファースト部隊 星風隊隊長

見た目:ミルクティー色の髪を、ゆるく小慣れたシニヨン(まとめ髪)にしている。瞳はベージュ寄りの茶色。柔らかく穏やかな印象。

特徴:

・組織創設メンバーの1人

・汚れるのが嫌・顔に傷がつくのが嫌という強い美意識を持ち、戦闘中でも常に気品と美しさを保とうとする



▶天辰ジュンイチ

年齢:45歳

性別:男

身長:177センチ

所属:ファースト部隊 天辰隊隊長

見た目:暗めのグレーの髪色で、瞳の色も黒寄りのグレー、髪は濡れ感のあるスパイラルパーマでイケオジとして若い女子隊員から人気

特徴:

・組織創設メンバーの1人

・星風姉妹とは兄弟のように育ち、ひっそりと星風セラに恋心があった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ