未練がましく愚鈍な芸人
動画の再生回数をみると合計で200回前後であるが、まぁまぁこんなものだろう。
今人気芸人のコントやアイドル達のコスメ事情に、女性が身体を使った再生数稼ぎのサムネ、ゆっくり実況や解説動画、大学教授の面白実験、スポーツの名場面や、武術などの達人技、海千山千の猛者やありふれるカリスマの素人達が魑魅魍魎 百鬼夜行の混沌模様で日々投稿されているんだから。
むしろこんなものが合計とはいえ、良く200回も再生されたものだと感心する。
コメントはみない方が良いなんて訳知り顔の後輩から聞いてはいたけれど、コメントが、かかれてからそういう手合いの心配をすることにしよう。
大山鳴動して鼠一匹。
あ いや とらぬ狸の皮算用。
案ずるより産むが易し。
ピンとこない言葉が浮かんでは消える泡のように、それらを脳裏の片隅に追いやっていく。
何かの小噺のネタにでもすることにしよう。
さてさて、動画作成のために何度か試行錯誤してきたけれど、手応えというのがわからない。
暖簾に腕押し、糠に釘、幽霊の服を掴むような感触とでも称しておこう。
見られてナンボというのは、ある意味正しくて、どれをウリにしていいのか、どんな風に笑っているのか、売れるために何が足りないのか、そういった情報が全くもって今回の投稿では得られない。
準備して、撮って、公開して、そこから得られる事は、 三文の得にもなりやしない現実である。
売れていない=面白くない
面白くない=売れていない
簡単に結びつけることのできる芸人の公式めいたものだが、概ねあっていて、そこそこまちがっている。
売れてないのは、需要がないから、もう既に上位互換がいるから、求められていないから売れてないだけであって、面白くないとは言いきれない。
売れていなかった奴が何かの拍子にパーンともち上げられて、売れることもある。
面白くないなんて、それこそ感性の問題だ、万人受けするかしないか、逆張りで通ぶっている、何かにハマれば面白いとおもうし、時代によってはなんでこんなので笑っているのと思う事もある。
観客にみられるということは、売れる算段をつけるということ。
観客の反応を見れるというのは、感性の答え合わせのようなもの。
商売人でもあり、商品でもあり、発掘人でもあり、鑑定人でもあり、批評家でもあるようなものだ。
世間知らずがウケ、インテリがウけ、毒舌がウケ、いじめられっこがウケ、不良がウケ、優等生がスベり、貧乏がウケ、金持ちがウケ、政治的な活動がスベり、オタクがウケる。
鉱脈は入り乱れ、世間の風はどこまで吹いているのかさっぱりわからない。
感性がズレることで笑いが生まれ、笑いが死ぬ。
何を考えていたのかさっぱりわからぬ迷路いや迷宮入りさせたい問題ではあるけれど、常々考えておかねば、芸人として迷い続けたい訳でもない。
このまま売れないまま終わりたいわけではないし、お笑いを続けたいだけ。
一門に在籍していれば、売れずとも笑わせずとも芸人と言う道が確かにあった。
「なるほど 未練がましい」
そう呟きたくもなる。
バキバキと背骨がなる。
背筋を伸ばしただけで思考を振り払う音にも聞こえる。
パソコン作業ばかりで、鈍っていたらしい。
袋小路に入り込む前に切り上げる。
苦労してネタを打ち込んで、練習して披露して、疲労する。
とりあえず数本動画を編集したら知り合いの後輩にライブの計画の誘いでも立てるとしよう。
芸人と言う道を進むために。