表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

馬耳東風

寿司が来る前に、客が集まりきる前に、このチャンネルの説明でも考えておこう。


【遠野とおへんぼく徒然】 唯 ただ創作噺というものをつらつらと淡々と語り、自らの芸を披露していこうと思います。


うん 面白味というのがあれば、全く感じない。

数分噛んだガムのような味しかしないような気がするけれど、確かにガムの香料だけはあって、それらしく感じるような気がしないでもない。


まぁまぁ 少し考えてみれば、未開拓のフロンティアじゃあるまいし、十数年も前に舗装しきった道路を、目新しいですよと宣伝するなんて、詐欺師か頭の思考回路に不具合でも起こった愚かな人間ぐらいなものだろう。


いや、芸人ならば、愚かな人間でないならば、愚かな人間を演じないといけない、欲にまみれないと芸事はダメだとか、欲を欠いたら成長も出来ない、大成も出来ない。


元師匠が酒の席で言ったかどうか、あまり覚えていない、何かタメになるような事は言っていた気もするが、タメになったかは定かではないが、時折思い浮かぶのであれば、師匠もうかばれるだろう。


まぁ死んでないし、先ほどテレビで娘の晴れ姿に感涙しているほどに元気だ、嬉しくてポックリ逝ってない限り、不謹慎にもならないだろう。


怒られるとすれば、面白味のないチャンネルの紹介文を恥ずかしげもなく載せようとしたことぐらいだ。


怒られる筋合いなどどこにもないが、面白味を考えないで、恥ずかしげもなく載せたなどと勘違いされたくもないので、少しは考えるとしよう。


面白味を付け足すとすれば、分かりやすく面白いと感じるような一言だと思うが、そういうのは大抵鉄板ネタをもっているかどうかだが、そんなもの当然あるはずもない。


掴みもないから、箸にも棒にもかからないということを、劇場や舞台のアンケートやネットの感想で貰ったことも一度や二度ではない。


その時に改善しようとも思ったが、掴んだところで引き込めるような実力があるわけでもないから、逃げというか考えてやめてしまった弊害がでるとは、あのときの自分もお釈迦様も思うまい。


しかし、そう考えると、筋を通すならこのままでも良いのではないか?


確かに面白味を追加すれば、目に止まるようなチャンネル紹介文を書いたなら、掴みとして視聴者を得られるかもしれない。


だけども、掴み以上のものがないとしたならば、それはどうなんだってハナシになる。


淡々と噺を語る、自らの芸を披露すると思ってチャンネルの紹介文を書いた以上、掴みなんていらないと言う事が筋ではなかろうか。


テコ入れて、どうにかするような時期でも気分でもないし、門出で慣れぬことをするよりもスムーズに出発する方が、ケチがつかなくて良いのではないか。


元師匠あたりがケチをつけそうだからと言って、自分の一歩を踏み出せないと言うのも、おかしな話である。


才能のない僕が面白味を足そうとアレやコレやと考えたってろくな味にならないだろう。


奈落の底穴があるわけでもあるまいし、ケチケチと理由をつけては悩むより、悩まない方が賢いと言うものだ。


思えば動画配信という、自分にとって新しい事を始めるから、浮き足だって、柄にもない事をやろうとしていた。


極端な話芸人って言うのはキャラ。

一本芯がなくては、様にならない。

売れようが売れまいがまずはそこだ。


売れるキャラなんてのは席が決まっている。

売れないキャラなんて程度がしれている。


ビシッと芯を入れて、自分から芯を受け入れろ。

客に受け入れられる前に、まずは芯を通す。

筋を通す。


なんかその後の事は覚えていないが、中々含蓄のある結構な説教を師匠から、もらったものだ。


糠に釘が刺さったかのような言葉ばかりの師匠と弟子のやり取りで、為になるなら取り入れるのが、教わったものとしての筋というものだ。


こうして面白味のない動画説明分と見映えのしない自己紹介動画をとり、芸人としての道を歩くことにした。















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ