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暴走のその先に 11

「瀬尾くんはずっと『月奈、月奈』で意味分からなかった。ムカついたから偽の噂を伝えてやったし、その後のバスケの試合で、川原くんとの仲を見せつけようとした。そしたら、今度はかっこいい先輩までなぜかあんた目当て」

「偽の噂?」

「三股してるってやつ。スカートを履いて女の武器使ってたじゃん」


『村坂くんとは奴隷として、川原くんとは昨日の告白で、瀬尾くんとはよく一緒にいるところを見かけるっていうので三股してるって噂があるみたい。隣のクラスの子から聞いたんだ』


 あれか。確かに、かもちゃんしか言ってなかった。

 それを聞いたから、お姉ちゃんを階段から突き落とされそうになったのは自分のせいだと思ったんだよな。


「結局、村坂くんも、瀬尾くんも、川原くんも、あたしを見ようとしなかった」

「…川原は見てたよ?」

「見てない。あたしから一度よそ見した。せっかく、川原くんの好み家庭的な女を演じてたのに」

「……そうだったの?」

「念の為に言っておくけど、あたしはあの三人が好きなわけじゃない。反応が見たかっただけなの。川原くんがあたしを好きらしいから、悩みを打ち明けたらどうするかなぁと思ったら、してくれたランキングがまさかの五位。声ファンが九万人の百万再生のシチュボ投稿者の肩書きがある村坂を落とせば、あいつに惚れてる二位の水波なつめとあいつが惚れてる一位の淡成日奈、そしてあんたもあたしに負けるじゃんと思って、最終的には脅した。あんたに一途な瀬尾には、三股の噂を流して引き裂こうとした。最後はあんた。豹変したあたしを見た時は傑作だったわ。最高! 掻き乱して相手の反応見るのが快感だわ」

「……」

「じきに、あんたが今回の犯人じゃないって判明する。そしたら、あたしは『勘違いだったみたい。てへぺろ!』で逃げるつもり」

「…どうして話してくれたの?」

「逃げた男がいるって情報が出ちゃったから仕方なく」

「私のことが嫌いだったら、自分の悪事まで言わなくてもいいのに」

「嫌いなんじゃない。気に食わないの、あんたが」

「あのね、実は…」


 村坂と瀬尾の真実をかもちゃんに話した。かもちゃんはお腹を抱えて笑い、あおってきた。


 私は、初めのかもちゃんとのギャップがすごくて、村坂との時は受け入れられなかったけど、今はブラックかもちゃんの方が仲良くなれた気がして嬉しい気持ちがあった。もう一度、仲良くしていける気がした。


「私はかもちゃんが好きだよ」

「……きも」


 だから、病院に入る前にそう告げたんだ。



 瀬尾のお見舞いに来たけど、瀬尾は私と会っても嬉しくないだろうなという気持ちがあり、かもちゃんだけが病室に入った。

 村坂とは違い、瀬尾は意識があるみたいだ。


 かもちゃんが数分で出てきて、何を言うかと思えば「『月奈』ってうなされてたよ。今起きてるから話してきなよ」と。

 かもちゃんに、瀬尾がお姉ちゃんを好きなことはさっき伝えたから、私がかもちゃんの言葉に騙されるか騙されないか、どんな反応をするのか見たいだけなのだろう。


 狂人、かもちゃん。私は何も反応せず、入室した。


「チッ。つまんない女」


 扉越しに、そんな言葉が聞こえた。

 私は気を取り直し、瀬尾が寝るベッドへ進む。


 しとしとと降る雨が、窓が泣いているように流れていく。止まらない雨。終わりは分からない。


 瀬尾は頭や顔、腕に包帯やガーゼがあった。布団がかかっている部分は見えないけど、見えている部分だけでも相当の怪我を負った事は明白だった。


 私に気づくと優しく微笑む。私は、悟った。瀬尾が見ているのは、私じゃないことを。


「好きだよ。本気で」


 お姉ちゃんが、見舞いに来たと思っている。こんなに柔らかくて温かな表情をお姉ちゃんにはしているんだね。


『日奈っ…日奈っ』


 下条先輩と本当に似てる。

 相手が負傷して寝たきりなら、私でもれるのでは?


 力でねじ伏せられ、泣いても叫んでもやめてくれなかったあのまわしい記憶。瀬尾の首を絞め、息絶える姿を見れば気は晴れるだろうか。

 そして、車椅子のおじさんを仕向けた罪をゆるそうぞ。


『顔や言葉で安心させてから犯行するのだろう。卑怯なやつらだからな』


 お巡りさんの言葉が脳裏に浮かぶ。私は伸ばしかけた手を見て、体が震え、引っ込めた。


 瀬尾には先輩の罪は関係ないのに、瀬尾が似てるからと瀬尾に先輩の罪まで被せようとした。今までそんなことを思ったことないけど、チャンスだと思ったら無意識に手が出ていた。

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