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姉妹の正体 9

「でも、こんな状況じゃあたしたちは思うように行動できなくなる。せっかく、位置情報を共有したのにタイミングが悪いな〜」

「位置情報?」

「今日、月奈の場所が分かったのは瀬尾くんからのプレゼントのおかげなの。途中まで追跡できてたからSuiが助けに行けたわけ」

「モバイルバッテリーじゃなかったのか…」

「お揃いだったら身につけるんじゃないかっていう瀬尾くんの案よ。彼もあたしたちの身の安全が気がかりだったみたいだから」


 凄い洞察力だな、瀬尾よ。私も同じことを思ったよ。


「…怒ってる?」


 私を不安げに見上げてくるお姉ちゃん。私なんぞに気を遣わなくていいのに。


「怒ってません。お姉ちゃんを怒らなきゃいけない理由が分かりません」


 ホッとしたように穏やかな笑みを浮かべると、椅子に戻っていった。お姉ちゃんを支える椅子は、役目を果たし嬉しそうだ。


「Suiはね、殺し屋の仕事を流してもらう代わりに月奈を引き取れって条件を突きつけられたの。交換条件っていうのかな」

「………」

「自分たちで面倒をみるのが大変だったか、Suiを試してたのか、都合よく使われたのかは分からない。あたしのことでお金に余裕はなかったけど、Suiは月奈を受け入れたわ」


 クライアントとして私を買ったのではなく、引き取ってくれたのか。でも、そこまでしてくれる理由が思い当たらない。Suiにメリットはないはず。


「Suiはね、すごく優しいの。自分のためじゃなくて、他人のために行動を起こす人なの」



 お姉ちゃんはSuiとの過去を語り始めた。


 出会いはお姉ちゃんがゼロ歳、Suiが十二歳の時。同じ職場で仲が良かったお姉ちゃんの父親とSuiの父親はよく飲みに出かけていた。

 酔っ払いながらSuiの父親は「息子がモテないから結婚できるか不安」と口にしたことがきっかけで「「結婚させましょう」」と約束を結んだ。


 その後、バーベキューなどで家族での交流が続いた。大家族のような仲の良さに周りも羨ましがるほどだった。


 しかし、お姉ちゃんが八歳、Suiが二十の時に事件が起きた。Suiが父親を殺害したのだ。


「Suiのお父さんは口が上手くて、周りから好かれるタイプだったの。みんなに優しくて暗い顔の人を見つけたら元気させちゃったり、お土産やプレゼントをよく配ったりして気も遣えてた。だけど、それはあたしから見た喜四郎きしろうさんであって、Suiには違ったみたい」


 返事はするけどやらなかったり、息子を下げて周りの機嫌取りをしたり、「お前のお母さんが出て行ったのはお前のせいだ」など責める発言も頻繁にされていたと言う。Suiにとってはよく思わない部分もあったようだ。


 そして、不満が積もりに積もっていた事件の直前、父親から衝撃の発言を受けたそうだ。


「その時八歳だったけど、あたしに手を出そうとしたんだって。Suiの婚約者ってことになってるから手を出す前にSuiに言ったみたい」


 女を取っ替え引っ替えしてた様子を見ていたSuiがそれを指摘すると、「日奈の母親と不倫をしていることを日奈にバラして傷つけたり、日奈の父親にバラして淡成家をめちゃくちゃにすることもできるんだぜ」とSuiを脅し始めたようだ。


「野荒家と淡成家の交流の最中、Suiのお父さんとあたしのお母さんの密会があったみたい。あたしのお母さんは依存体質で、お父さんが趣味多彩で自分に興味を向けてくれないことで不安定だったんだって。そんな時に、頻繁に連絡くれたり褒めてくれる喜四郎さんに惹かれてしまった」


 父親に我慢できなくなったSuiは刃物で殺害。


 その後、交際相手が発見者という報道から他の交際相手が殺到し父親の十三股が発覚したり、不倫を知ったお姉ちゃんの父親と母親は喧嘩し父親が出て行った後、依存先を求めて母親も淡成家を出ていった。


「お父さんは、世間体を気にして結婚し子どもを作った。お母さんは、お父さんを自分のものにしたくて結婚と出産をした。二人とも、求めるものがなくなったの」


 学校がそれに気づき児童相談所へ通告し、一時保護所へと移ったお姉ちゃんは学校帰りに新たな罪を犯して逃亡中のSuiに出会でくわす。


「強盗致傷罪だった。生きていくために、罪を重ねていたの。でも、元はと言えばあたしのせい。あたしはSuiの人生を変えてしまった」

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