表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

影武者として 10

 家に着くと、さっそく一欠片ひとかけの希望を掴んだあいつからメッセージが来ていた。


「本当に助けてくれるんですか?」

「君はおとりだよ、っと」


 軽快に笑いながら返信をした。情報を話したあいつを狙いに来た偽陣東らが、待ち構えていたSuiと抗争して潰し合ってくれたら一石二鳥だ。


 私はバックグラウンドアプリを閉じ、電話アプリを開く。キーパッドに警察相談専用電話の番号を入力し、相手の応答を待った。


「あ、相談があって電話したんですけど」


 電話を終えたスマホの画面に村坂《鬼》からのメッセージが来ていた。今日はなし、といったドタキャンだった。

 気分屋かよと思ったけど、ホッとした。呪縛じゅばくから解放されたと思い、スキップを始め、足を止める。


 これは、飽きる前触れなのではないか。一回体を許せば態度が激変するやつもいると聞く…あ、村坂は初めから、最低なやつだった。


「月奈、これを瀬尾くんに渡してくれる? 借りたから返さないと」


 お風呂上がりに、お姉ちゃんに差し出されたのはポータブル充電器のような黒い四角い物だった。


「分かりました」


 そのままソファに移動し、忘れないように太ももに置いた。既にソファに身を沈め、髪があちこちに跳ねて乱れている天宇そらが注視する。


「臭いやつの?」

「違うよ」

「何それ?」

「さぁ?」

「ふーん。明日渡すやつ?」

「うん」

「……」

「なに?」

「は? 話しかけんな」

「話しかけて欲しそうな顔だったじゃん…」

「勝手に勘違いしてんなよ」

「はいはい。さーせん」


 面倒なやつは放置し、スマホで男を興奮させるコスプレを調べる。ナースやメイド、スクール水着、ミニスカポリス、バニーガールなど比較的露出が高そうな物が出てきた。

 次に下着を調べると、柄が華やかな物や面積の少ない物が出てくる。こういうもので、興奮するのだろうか。


「ねぇ、天宇」

「っんだよ」

「これ、どう思う?」


 透視パンツの穴あきエレガントTバックの画像を見せた。数秒眺めた後、「なにこれ?髪飾り?」と期待外れな返答をした。


「ああ…なんでもない」

「人に聞いといて、その態度はなんだよ?」


 気を取り直して、男をもだえさせるやり方を調べていると、画面見られた。


「な…なにを調べて……」


 動揺する天宇。こんな姿をあまり見ないから、悪戯いたずら心が湧いてきた。

 天宇の肩に手を置いて、顔を近づかせ誘うように言う。


「練習させて?」


 その後、散々怒られた。冗談じゃんか。



ーーー…


「お姉ちゃん、行ってきます」

「いってらっしゃい。夕方、Suiと話し合うことを忘れないで」

「はい」


 大量の荷物を背負い、大きめのパーカーと黒のスキニー、黒のスニーカーというラフな格好で出かけた。

 万が一、お姉ちゃんに何かあった際には戻れるように、ウィッグやお姉ちゃんが着るような服も入っている。スマホのチェックも、欠かさないようにしよう。


 今日は、川原のバスケの試合だ。試合はお昼にあり、その前にかもちゃん家に集合することになった。

 会場に向かう時間を除いても、二時間ぐらいあるのに何をするんだろうと思ったけど、かもちゃんがどうしてもと言うので足を運ぶ。


 カモちゃん家は電車で三駅、そこから徒歩十分の場所にあった。車の通りが多い、道路のすぐそばの綺麗なマンションの一室で、清掃が行き届き、防犯対策もされているため家賃も結構するだろう。

 通ってきた道に、スーパーや病院や郵便局など便利で住みやすそうなところだった。


 事前に言われた部屋番号を鳴らすと、かもちゃんの声で返事があり、自動ドアが開く。エレベーターで上がり、部屋の前のインターフォンを押そうとするとガチャッと扉が開いた。


「いらっしゃ〜い!」


 マイナスイオンが流れているのか、一瞬で癒される。そして、カモちゃんのおしゃれさに再び癒された。

 くるっとした前髪にふわふわの髪、白の花柄ブラウスにデニム風ミニワンピースで、いつも以上にかもちゃんの魅力が表現されていた。


 かわいい、そして、綺麗。私が男だったら、その可愛さに抱きしめたい気持ちと汚したくない気持ちで、葛藤するかもしれない。

 制服もいいけど、私服だといろんなバリエーションがあるので、ガラッと雰囲気が変わるものだ。


「迷わなかった?」

「うん。一本道だったし、分かりやすかったよ」

「そっか、よかった。そういえば、ツッキーと遊ぶのは初めてだよね」

「そうだね。学校で毎日会ってるから、休日まで遊ぼうってならないよね」


 雑談をしながら部屋に通してもらうと、シンプルで開放的なリビングが広がっていた。白や黒やダークブラウンなど高級感がありつつ落ち着く空間で、かもちゃんがここで生活していることをイメージするのは簡単だった。

 両親は、仕事でいないらしい。「だから、楽にして!」と言われつつリビングを素通りし、奥の部屋に入ると、また別の空間が広がっていた。


「うわ〜すごい!」


 ピンクや白を基調としたラブリーな部屋で、木とガラスのショーケースには自作のあみぐるみがたくさん飾られていた。本棚には、料理本や雑誌、恋愛小説などが並ぶ。

 かもちゃんの好きな物で溢れた部屋で、かもちゃんの世界に飛び込んだような気分だった。


「飲み物持ってくるから、適当に座ってて」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ