それぞれの思惑 11
お姉ちゃんとは違う雰囲気の、天宇。終始、ムスッとしているクール系不機嫌男子で、ネガティブな発言をすることが多い、眉目秀麗な少年だ。周りを暗くさせたり、イライラさせることもある。でも、優しい面がちらちら見えるから、嫌いになれないタイプだ。
「必要ない」
「モテそうなのにね」
「モテるっていいことだけじゃねーだろ」
「確かに」
お姉ちゃんは、その美しさの代わりに男に絡まれることが多いし、同性からは、陰でこそこそ言われている。それだけでなく、取り巻きの一人にしようとしてくるやつや嫁にしようなんてやつも現れた。
容姿が優れていると、思い通りになることもあるけど、その逆も多い。モテるということが負担になることもあるのだろう。
「今日も役に立てた…ぐっすり寝れそう!」
「…姉ちゃんが大好きだな。他に何が生きがい?」
「うーん」
「……」
「うーん…」
「……」
「うーん………?」
「うぜ」
「天宇、知ってる? 月は、太陽の光がないと輝けないんだよ」
「質問に答えろよ」
「答えたつもりなのだが」
「答えになってねぇ」
「うーん……生きがいとは違うかもだけど…天宇とのこの時間は好きかも?」
「俺は嫌い」
「ふーん」
「この時間に、この場所にいたいだけ」
「………」
「は? お前のためにいるわけじゃねーから。自惚れんな」
「何も言ってないのだけど」
天宇が嫌いでも、私は好きだからそれでいい。気を使わない空間で、体温が下がったから、眠くなってきて。パタリと意識を手放した私に、天宇は「ここで寝んなよ…」と迷惑そうな声を落とし、ふわりと私にブランケットをかける。
ツンデレとは、天宇のことだ。
ーーー…
次の朝、ハッとして上体を起こすと、ひらりと白い布が膝の上に落ちる。白い…布?触ってみると若干湿ってて、肩幅より長い面積のそれには見覚えがあった。
顔に乗せられてたのであろう、湿気のせいか顔が痒い気がする。白い布を顔にかけるだけでも失礼なのに、自分の髪の毛を乾かしていた白いタオルを乗せるなんて。
「天宇の野郎……てめええぇぇ!」
「うるさいんだけど。近所迷惑」
「私がお前をあの世に送ってやるううぅぅぅ!!」
クソ生意気な天宇だった。
ーーー…
宇園高校の防犯カメラにて、とある女ととある男が話をしているところが映し出される。
「順調に仲を深めてるんでしょうね?」
「もちろん。甘く見てもらっちゃ困る」
「そう。悪かったわ」
「悪いなんて微塵も思ってなさそう」
「ええ。本音を言えば、あなたのことなんてなんとも思ってないわ。無、よ」
「いや〜ハッキリ言いますね〜」
「いい? あの子が弱音を吐けるくらい、仲良くなるの。それが、あなたの存在意義よ」
「…何が目的で?」
「あなたに教える義理はないわ」
「そんなことおっしゃらず!」
「…あの子が逃げ出したくなるくらいまで追い込むこと。側にいることなんて、許さない」
「あなたのその願いが、叶うといいね」