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72話 姉

 マッハが泣き止むまでに要した時間はヒナが新たに展開させた防御魔法の効果がちょうど切れる程で、ケルヌンノスと交代するようにその腕の中でスヤスヤと寝息を立て始めた。

 自身の姉がなぜ急に気持ちよく眠っていた所を叩き起こし、そっと地面に置いて魔法を発動させたのか分かっていなかったケルヌンノスは、その光景を見てようやく少しだけ機嫌を治した。


「……たる、ヒナねぇって未来視的なスキル使えたっけ?」

「……あれじゃない? いつもボス戦で使ってたやつ。それか、マッハねぇの様子がおかしいっていうのに気付いて、ほぼ勘で防御魔法あれ使ったかのどっちかじゃない?」

「マッハねぇがおかしい? 何かあったの?」


 可愛らしく首を傾げたケルヌンノスに、寝ていたので状況が分からないのかと思って説明しようと口を開きかけたイシュタルだったが、なにかマズイ事になると察したヒナが一旦ストップをかける。

 それはかつてないほどのファインプレーであり、もしも彼女の口から事の真相が語られればケルヌンノスもマッハと同じような行動を起こし、彼女以上に怒り狂った事だろう。その場合、武器を持っていないヒナでは止めきれたかどうか怪しい。


「ちょ、ちょっとあの……一旦相手の話、聞いてみない……? その……私、昔お世話になったし……」

「……そんなことあったの?」

「お、お世話になったというかその……ほら、ギルドに誘ってもらったって話したじゃん? あれ」


 それはお世話になったというのだろうか。そう疑問に思ったイシュタルだったが、自身の姉がそう言うのであれば何も言うまいと口を噤んだ。


 その様子を察したのか、ヒナはホッと一息つくとマッハを抱きかかえながらヨイショと立ち上がり、その頬に伝う涙を優しく拭う。


「それにしても……ま~ちゃんはどうしたんだろうね? 精神支配でも受けたみたい」

「…………マッハねぇの耐性ってどうなってたっけ?」


 ヒナが何気なく言い放ったその言葉に、イシュタルは嫌な予感を覚えてそう尋ねた。

 流石の彼女も姉が常時身に着けている装備の特殊効果を全て知っている訳では無いので、それを唯一知っているであろうヒナに尋ねたのだ。


 本人はゆっくり歩きながらうーんと唸り、マッハの身なりを確認してそれが彼女がいつも着ている装備と同じものであると確認すると、その効果をスラスラ呪文の詠唱でもするかのように口にする。


「まず物理防御増大でしょ? HP回復と状態異常無効……攻撃力超上昇と物理防御貫通効果付与……だったかな?」

「……状態異常の中に精神支配って入ってた?」

「ん~? いや、精神支配とかいう状態異常がそもそも無かったはずだよ? 混乱とかそれらしい物はあったけど、そういうのは状態異常とはまた別個で、魔法かスキルでしか対策できない部類のやつだから」


 その後、彼女は懐かしいなぁなんてのんきな事を考えながら「その手の攻撃ってボスモンスターが多用してくるから、装備じゃどうやっても防げないんだよね」と苦笑しながら言った。

 その手の回復スキルもイシュタルが所持しているので彼女が困った事は無いのだが、それを聞いたイシュタルの頭には、魚の小骨が喉にひっかかったような違和感が残る事になった。


 だがしかし、その違和感の正体に辿り着く前に、状況が落ち着いてようやく話が出来ると安堵したマーリンが口を開いた。


「とりあえず、こっちの話を聞いてくれるって理解で……良いのかな? ヒナちゃんには、感謝してもしきれないね」

「えっ!? あ、いや……あ、あの……はい。えっと……私もその……ギルドに、さそっ……誘って貰えて、その……嬉しかった、です……し……」


 肩を竦めながらも軽く頭を下げたマーリンに、あからさまに動揺しながらそう言うヒナをジト目で見つつ、イシュタルとケルヌンノスははぁと呆れたようにため息を吐いた。

 そして、代表としてイシュタルがちょこんと前に出て、ヒナを後ろに庇うような形をとる。


「……ヒナねぇ、無理しないで」

「うぇぇぇん。けるちゃん、私やっぱり人と話すのムリみたい!」

「…………せっかく、ちょっとカッコいいと思ったのに」

「え!? そ、そんなぁぁ……」


 まだどこかマーリン達を胡散臭げに見つめているケルヌンノスに涙目で縋り付きながらも、腕の中で眠るマッハを起こさぬよう細心の注意を払ってちょこんと座りなおす。

 その様子をどこか呆れながら見ていたマーリンは、あははと乾いた笑いを漏らしながらシャトリーヌとエリンを伴ってイシュタルの傍へと歩みを進めた。


「……ヒナねぇがあんなだから、私が話を聞く」

「そ、そうかい……。できた妹さんだことで……」

「ん。ヒナねぇはあんなだけど、私の……私達の、自慢のお姉ちゃん」


 逞しいような微笑ましいようなその姿に思わず頬が緩みそうになるが、まだ状況が飲み込めていないのは後ろの2人もそうだろう。

 マーリンとしては、この2人にゆっくり説明をした後にこの話し合いの場を設けたかった。

 それは出来れば2日後か3日後が望ましく、それだけの時間があれば今まで起こった事のあらかたの説明は出来るだろうし、自分がいなかった130年間の事も色々分かるだろう。

 だがしかし――


「怒ってるのがマッハねぇだけだと思ってるなら大間違い。私は、攻撃手段が無いから落ち着いてるようにみえるだけ」

「……うん、ちゃんと説明はするさ。どこから話せば良いのか、ちょっと探り探りになるけどね」

「横から悪いけど、その話、私も混ぜてくれないかい? どうやら、私の知らない話も聞けそうだしね」


 苦笑しながら言ったマーリンの言葉に割り込んだのは、狐の面をズラしながら微笑んだムラサキだった。彼女はその美しい顔を晒しつつ、今回の件はすまなかったとイシュタルへ謝罪を口にした。

 本来はヒナにも謝罪するべきだろうがとあらかじめ断り、冒険者ギルドとしての初見を始めに告げておく。そうする事で、シャトリーヌとエリンが今回の件について少しでも分かるのではないかという配慮からだ。無論、そこにはマーリンも含まれるがこの際どうでも良いだろう。


 イシュタルもなぜマッハ達の救援が遅れたのかについては気になっていたので、ムラサキが語った自分達の家に冒険者が押し寄せていた件や、この国が敵に回すと面倒だったという事を聞いてなるほど……と、思わざるを得なかった。

 無論、マッハやケルヌンノスがそこら辺の兵士達には傷すら付けられない存在だというのは、この場の全員が今回の件で改めて思い知っただろうが。


「だから、まぁ言いにくいんだけど今回の件の発端……というか、ヒナ達が巻き込まれたのはエリン王女が原因なんじゃないかなって、私……というか、冒険者ギルドとしては思うんだけど……そこのところ、王女様はどうかな?」


 気まずそうに問われたエリンは、一瞬マーリンを不安そうに見つめつつ、その顔が以前見た時と同じようにぐちゃぐちゃに塗りつぶされていない事に気付いて目を見開く。

 物は試しだとシャトリーヌやイシュタルの顔も見てみるが、やはり彼女達の顔はまだ確認する事が出来なかった。その事に少しばかり落胆しつつ、静かに「ごめんなさい」と告げた。


「王女ってその……身分を隠してたのは、ヒナ達が余計な気を遣うんじゃないかって心配したの……。この国の王族って良く思われてないから、それで敬遠されても……嫌だなって、思ったから……」

「……別に、私達は生まれがどうとか気にしない。エリンはエリン。ヒナねぇを心から褒めてくれたし、私達の事も気に入ってくれた。それに、一緒に冒険もした。あれは、楽しかった」

「マッハにも……マッハにも、おんなじこと、言われた……」

「ん、マッハねぇが言った事が正しい。エリンはエリンだから、別に生まれがどうとか気にしなくていい。家柄がどうのなんて、そんなの粗末な問題」


 エリンがなぜ王家の血筋を嫌っているのか知っている身としては彼女達の言葉は大いに嬉しい物だった。それだけに、なんでエリンが彼女達と出会いこんなにも親しくなれたのか、マーリンは非常に気になるところではあった。

 しかし、今回の件の発端がエリンであろうとも、それはあくまできっかけに過ぎなかったのだろう。なにせ、この国を裏で操っていたのは全く別の人物なのだから。


「さっきの、あなたがヒナねぇを使って追い払おうとしてた人?」

「使ってって……いやまぁその通りなんだけど、言い方悪くない?」

「知らない。事実を言ったまで」

「あ、そう……。でも、まぁそう。言い訳をするつもりはないんだけど、そもそもこの国を内側からおかしくしてたのは、王族の人間ってよりはサンって陰険な魔法使い」


 そう言った途端、動揺したのはシャトリーヌだ。なにせ、彼女は自身が操られているなんて自覚は全くなく、それにサンという名の魔法使いにも全く心当たりが無かったからだ。

 無論、王城内に力のある魔法使いが居たという事実はあるが、彼女が直接政治に口を出したことは無かったはずだ。それどころか、自分と共にエリンを王座に据えようと裏で画策していた1人のはずだ。そう口にする。


 ヒナを脅した彼女が次々に口にする言い訳に怒りを覚えそうになるイシュタルだったが、ヒナが決めた以上は相手の話を聞くことに専念する。

 まぁ、ここで怒って殴りかかろうとも肉体的な能力ではこの場の誰より劣る自分では何もできないだろうという歯がゆい気持ちもあったのだが……。


「そいつさぁ、なんて名前か知らないけど、いつもベース……ってか、茶色のなんか変な物持ってなかった?」

「……? なんでご存じなんですか? 確かにメルヴィ様は、いつも肩から不思議な音の出る物を持っておいででしたが……」

「はぁ……」


 シャトリーヌがそう言うと、これは話が長くなりそうだなと察し、とりあえずその件は後で話そうと口にする。

 イシュタルにはとりあえず、そいつが事の黒幕だと簡単に説明し、ヒナには『悪いPK集団の親玉みたいなやつ』と説明してほしいと頼む。

 彼女も我ながら酷い説明だなと思わなくもないのだが、幼い少女である魔王様はそれだけでなぜか納得してくれるだろうという変な信頼があった。


 イシュタルも、その言葉の意味は分からなかったが『悪い奴の親玉に相手が操られていた』と説明すれば、自身の姉が深く考えずに「なら仕方ない!」と頷く姿が容易に想像出来た。

 それを素直に言って良い物か少しだけ迷うが、確かにあの魔法使いがヒナに攻撃をした事は事実だ。それを考えれば、マーリンの言葉には信じるに値する根拠がある事になる。


 少なくとも、シャトリーヌはその刃をヒナの首元にめがけて振るっただけで、正確にはその体に傷を付けた訳では無い。

 しかし、あの魔法使いは違うのだ。

 あの魔法使いはヒナの体に傷を付けたばかりか、ヒナに向けて悪態を吐いた。両者にはそれしか違いが無いのだが、イシュタルにとっては“それだけ”の違いがあった。


「……まぁ、信じる。ヒナねぇを傷付けようとしたことに関しては誤解だったって」

「助かるよ。だけど、誤解とはいえこっちも非が無いわけじゃない。2人の弟子……いや、私の子供達が、悪かったね」

「ん。2度目はない。今度同じことが起きたら、問答無用で反撃するようヒナねぇにキツく言っておく」


 その言葉に笑みを引きつらせながら頷いたマーリンは、背後の2人が勝手に子供扱いされた事に困惑しているのを意志の力で無視しつつ、ムラサキに対しても頭を下げる。冒険者ギルドに関しての知識は興味が無かったのでほとんど持っていないのだが、アーサーがこの国の支部をヒナ達のギルドに似せて作った事くらいは知っている。

 なので、今回の件で迷惑をかけてしまった事と、今まで苦労を掛けたことを同時に謝罪する。


「まぁ、苦労云々に関しては私よりも間違いなく後ろの2人の方が大変だっただろうし、そこら辺は後々話し合ってもらってだね……」

「うん、そのつもりだよ。ごめんね、2人とも」

『……』


 シャトリーヌとエリンはお互いを見合わせ、苦労云々の前に子供がどうしたという件について聞き正したかったのだが、そんなことを言える雰囲気でもないので大人しく口を噤んでおく。

 シャトリーヌだけは、マーリンの素の性格を知っているのでカッコつけたかっただけだろうと当たりを付けているのだが、それがバレていたと彼女が悶絶する事になるのはもう少し先だ。


「……今回の件は、どう収集を付けるの。ていうかすっかり忘れてたけど、あそこで気絶してる人達は誰?」

「あぇ? あぁ……まぁ、あいつらは置いといて良いよ。で……今回の収集に関しては、正直まだ分からない。それこそ政治とか国の問題に直結するから、数日じゃ決まらないさ。でも、君達やヒナに危害が及ばないように死力を尽くす事は約束するよ。私も、あなた達と敵対するのは避けたいし、エリンもそれは望まないだろうから」

「ん。私達は……というか、ヒナねぇは、間違いなく面倒ごとに巻き込まれるのは望まない。間違ってもこの国の政治に巻き込まないで」


 密かにイシュタル達NPCの頭脳を借りられないかなとか思っていたマーリンの思惑は、先手を打った彼女のファインプレーによって防がれた。


 マーリンとしては、ヒナが所持しているはずのエルフクイーンの政治に関する知識だけでも貸してくれないかと頼みたかったのだが、頼める雰囲気でもないので”この場では”大人しく諦める事にする。

 その件に関しては、130年のうちにシャトリーヌが力を付けている事に期待しようと心のメモ帳に書き込む。


 こういう時、なんでNPCを制作しておかなかったのかと深い後悔に襲われるのだが、今更そんなことを思っても仕方がない。

 それに、まだ全てが解決したわけじゃないのだからゆったり構えている暇はないのだ。


 今回の件を含め、何度油断から命を落としかけた事か。

 まずは、事態の収拾をつける事も大切だが、勝負勘を取り戻しておかなければ本当にいつか命を落としてしまうと思い知らされた。後でシャトリーヌと手合わせでもやってみよう。のんきにそんなことを考えてしまうのは、もうそういう性格なので仕方がない。


「とりあえず、話す内容はこれで終わったはず。後はそっちで整合性を取らないと話が進まない気がする」

「……そうだね。ギルドとしても、まずはあなたが生きていた事の説明をしてもらわないと、そもそも事態を正確に把握できそうにない」


 腕を組みながら気まずそうに笑っているマーリンに視線をやったムラサキは、明後日の方を見ながら下手くそな口笛を吹いている英雄に呆れながら頭を振った。


「ちゃんと説明してもらいますよ?」

「あぁ……やっぱり? いやぁ……話すと長くなるから、まずは2人に話そうかなって思ってたんだけど……」

「今回の件で世界の勢力図がガラッと変わる事くらい分かってますよね? ヒナ達の事をどうやって隠すのか、マーリン生存という大ニュースをどう公表するのか、その他各国の対応……その辺のことを全てあなたに任せて良いなら、私はここで帰らせていただきますが?」

「……ねぇ、このお姉さん怖いんだけど! ほんとにあのバカの弟子なの!? もう少し気楽にいかない!?」

「人の師匠をバカにしないでいただきたいですね。あの人にそういう一面があった事は否定しませんが」


 目の奥にわずかな怒りを込めた笑みを浮かべたムラサキを見てその場の3人に助けを求めるマーリンだったが、イシュタルは話が終わったと分かった瞬間にヒナの元へ歩き出しており、残る2人も説明しろと言わんばかりの視線を彼女に送っていた。


 事実、彼女の生存はある意味でこの世界で一番の重大事件とも言える。なにせ、死んでいたと思われていた英雄が生きていたなんて、各国に良くも悪くも多大な影響を与えるニュースなのだから。


「あぁぁぁぁ! 誰か助けてよぉぉぉぉ!」


………………

…………

……


 マーリンの悲痛とも言える叫び声を聞いて天国でふふっと笑った■■は、隣で同じ光景を見ていた仲間達を見回して相変わらずだねと口にした。

 これから彼女が送る寂しさとは無縁だろう人生を想像し、生前彼女の親友だったランスロットの中に眠るもう1人の少女は、良かったと安堵の吐息を漏らした。


『もうマーリンお姉ちゃんは、寂しがらずに済むって事だよね? ■■が説得してくれたおかげだね!』

『そう言ってくれるのは嬉しいけどね……。結局、あの無理難題な任務を引き受けて、絶望的とも呼べる状況から脱したのは彼女の力であり、彼女自身の意志さ。僕は、何もしてないよ』

『そうなの? でも、これから寂しい思いしないといいね、マーリンお姉ちゃん。いつもみんなの為に頑張ってくれてたんだから、このくらいのご褒美は、もらうべきだよね?』


 少女のどこか祈るようなその言葉に反対の意を示す声なんて、上がるはずがなかった。

 その場で彼女の様子を見守っていた9人は、マーリンがこの先幸せな人生を送る事を願った。


『にしても、あいつの計画性のなさはどうにかした方が良いと思うけどな』

『あはは……まぁそれは否定できないけど……。止めてあげなよ、パーシヴァル。彼女、傷付くよ?』

『子供に泣かされてんだぜ? まったく、俺としちゃ情けねぇぜ……。あいつは成長しないのか?』


 生前の夫だった男だけは、複雑そうな顔で弁明に追われている彼女を見ていた。

 まぁ、その様子も含めていつもの円卓の騎士の光景だったのだが、彼女がそんな天国の様子を知るのは、まだまだ先の事だ。

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