4話 見知らぬ街
翌日、朝食を食べ終えたヒナとイシュタルは、いつものようにソファで寝そべりながらぐうたらしているマッハと、流しに食器を運んで洗い物をしているケルヌンノスに夕方には戻ると言い残して家を後にした。
家を出るとそこは周囲を背の高い緑に囲まれた森の中で、木々の間から漏れる優しい日の光が2人を優しく包み込む。
数日ぶりに太陽の光を浴びる2人にとってその明かりは眩しすぎて、一瞬だけ目を眩ませる。
「ま、眩しいねぇ……」
「最近ずっと引きこもってたから仕方ない。ヒナねぇがどこにも行かないなら、私達もどこにも行かない」
苦笑を漏らしながら太陽に手をかざすヒナに、イシュタルは少しばかり不満そうな顔をしてそう言った。
彼女達の役目は基本的にはヒナの警護や手伝いであって、自分から何かをすることはあまりない。そのせいで、ここ数日ずっと家の中でヒナがダラダラしていたので彼女達も必然的に家の中でダラダラしていただけに過ぎないのだ。
ラグナロク内では毎日……というか、ギルドの本部にいた時の方が短かったせいもあり、束の間の休息と言えば聞こえはいいが、体が訛ってしまうので少しくらいは体を動かしたいと思っていたのも事実だった。
約1名、唯一の前衛なのにも関わらず戦わないなら外に出たくないと言い出す人がいる事はさておいて、彼女の面倒を見るという仕事が無ければ着いて来ただろう姉について思案する。
(今度出掛ける時があったら、その時はけるねぇに譲ろ……)
イシュタルがうっすらとそう思いつつ隣を歩くヒナに目を向けると、その目は困惑を映しながらも久しぶりの外出だからかとても楽しそうだった。
それで手に持っている赤く鋭い槍に似た槌の武器が無ければ、夏休みに山へ虫取りに向かう少女のように微笑ましい目で見れるのだが……。
「ヒナねぇ、それなに……?」
「ん~? あ、これ? これはねぇ、トールって神様を倒すイベントで上位入賞した時の景品で貰った武器なんだ~。私がいつも持ってる子より性能は低いんだけど、一応護身用に持っておこうって思ってさ」
ニコッと微笑んだヒナは、5年前に初めて参加したイベントの事を脳裏に思い浮かべる。
あれは、まだマッハを作って間もない頃で今と違いケルヌンノスもイシュタルも作る前の事だ。
たった2人でイベントボスを何百回と倒しに行く行為はまさに狂人のそれであり、いくつもの掲示板やSNSでそのスクショが出回って一気に名が売れたのだ。
通常は5人パーティーでようやく勝てるようなイベントボスなのに、NPC含め2人だけで挑み、それも難なくボスを蹂躙していくその様から、彼女に最初につけられた異名は『荒れ狂う魔女』という大変不名誉な物だった。
ヒナが普段使っている武器は2年ほど前の個人イベントで首位を取った時に与えられた自分の専用武器だ。
もちろん貰ったのはその武器を作るためのレシピと必要素材のリストだったが、それがまた滅茶苦茶に大変で、素材集めだけで数日がまるまる吹き飛んだのはいい思い出だ。
その代わりに性能はハチャメチャで、ヒナがその武器を使うようになってからついた異名が『魔王』だったのだ。
この環境になって初めての外出は何があるか分からない。ゲーム通りのギルドとアイテム、設定どおりのNPC……いや、家族が傍にいてくれるとは言っても、不安な物は不安だった。
街やそこに住む人々もゲーム通りであれば話は早いのだが、念のために自分の相棒を盗まれるなんてことがあってはならないので、別の武器で代用しているのだ。
戦うなんて事はもちろん考慮していないけれど、何かしらのモンスターが出てくれば自分が魔法を使えるのかとか色々試したいとも思っていたので、心境は複雑な物だった。
「ふーん。でも、街に何しに行くの? マッハねぇも言ってたけど、家にはなんでもあるよ?」
「ん~? いや、特に決めてないよ? 強いて言えば、久しぶりに街を見たくなったって言うだけだから」
「そうなの?」
急に街を見たいなんて変なの……。とでも言いたげな困惑の表情を向けられ、ヒナはその口の端を困ったように歪める。
実際その通りなのだから仕方ないのかもしれないが、イシュタルや他の2人は街の景色なんて見慣れているのでなんで改めて街を見たいなんて言い出すのかが本気で分からなかったのだ。
ただ、その思いは数分後に見えた森の外の景色を瞳に移した瞬間、綺麗にどこか遠くへと吹き飛んでいた。
「……ねぇたるちゃん。私の記憶が正しかったらさ、私達が住んでたアールヴヘイムって、エルフと木で溢れた自然豊かな国だったよね?」
「ヒナねぇ、合ってる。アールヴヘイムほど自然豊かで温かい場所を、私は知らない」
「だよね……。じゃあさ、あのいかにも厳つい城壁はなんだろうね?」
ヒナが震えながら指さした先には、石で出来た頑丈そうな城壁がガッシリと腰を下ろしてその先の視界を遮っていた。
その継ぎ目は城壁のどこを見ても見つからず、のっぺりとしつつもその存在感をしっかりと誇示し、唯一大口を開けている正面の門を見ると人だかりができており、その先頭では鎧を着込んだ屈強な男2人が中へ入ろうとしている人へ何事か話しかけている所だった。
彼女達の記憶が正しければ、アールヴヘイムの辺境の地にあったはずのギルド『ユグドラシル』の本部は、森の中にポツンと佇む小さな丸太小屋だった。
ただ、丸太小屋から出て森の中を少し進んだ先にあったはずの街であるミリシオンには目の前に広がるような厳つい城壁は無かった。それどころか、藁や草で編まれた素朴な家屋が立ち並ぶ、のどかな田舎町という言葉がピッタリの場所だった。
ヒナが求めたのはまさにそういう場所での暮らしであり、ほとんど戻らなかったとは言ってもギルドの本部に選ぶだけあってそれなりに気に入っていた場所だった。
街の小さな広場には申し訳程度にあった小さな噴水とそれを囲む綺麗な花々。それらを眺めながらエルフの子供達が水浴びをしている所を眺めるのが彼女の密かな楽しみでもあったのだが……。
(ここ、どこ……?)
それが失われたばかりか、目の前に広がる光景に見覚えが無さ過ぎて困惑を通り過ぎて不気味な笑いが出そうになる。
一方のイシュタルもそれは同じで、ヒナだけで行かせなくて良かったと心底安心しつつも、ここはどこだろうと必死で頭を回転させる。
「……並んでる人にでも、聞いてみる?」
乾いた笑いを漏らしながら城壁の中に入るために並んでいるのだろう長蛇の列を指さし、ヒナは言った。
並んでいる人達は、鎧を着こんで刃を紫色の液体を滴らせた長剣を持っていたり、ローブを羽織って杖らしきものを持っていたり、反対に大量の荷物を荷馬車のような物に載せて運んでいたりと様々だった。
だがその全員に共通している事は、全員が普通の人間であり、エルフやドワーフなんかの亜人ではないという事だ。
彼女達が以前までいたアールヴヘイムにはエルフ族以外の住人はおらず、プレイヤーもそこまで多く拠点を構えている訳では無かったのでこの光景は異常というしかなかった。
「……それも良い。だけど、一度戻ってマッハねぇ達に話すのもありだと思う。ここがアールヴヘイムじゃないって事だけは確か。私達が知らない間に、知らない土地に家ごと転移してる可能性の方が高い」
イシュタルに真剣な顔でそう言われると、ヒナ自身も少しだけ躊躇いの気持ちが出てくる。
少しだけではあるけれど、これが夢じゃなく現実なのではないかと思い始めているせいで判断を容易に間違える訳にはいかないのだ。
現実であってほしいというのは自分の願望がかなり上乗せされているだけなので、実際にはそんな事あるはずないだろうと心のどこかで思ってはいる。それでも、夢だからとなんでも適当に済ませられる次元の話ではない事も確かだ。
それに……聞くと言ったはいい物の、自分が家族以外とまともに話せるビジョンが全く見えないというのも問題だった。そうなると必然的にイシュタルに聞いてもらうことになるのだが……
(この子、こんな見た目だからなぁ……。根はとっても可愛くて良い子だけど、魔人だとか言われて騒ぎになったら面倒だよね)
種族的な話をするなら、イシュタルはデーモンであって人族でもエルフなんかの亜人でもない。
デーモンはデーモンでも、始祖の悪魔というラグナロク内でもかなり希少なモンスターで、それを人型にカスタムし、手に入れた回復系のスキルを全て託してヒーラーの役割を担ってもらっているのがイシュタルだ。
ついでに言うと、マッハは鬼族という亜人。ケルヌンノスは上位ゴーストを媒体にしたボスモンスターをカスタムしている。
その角や見た目、服装なんかは全部ヒナが自分でカスタムして可愛らしくアレンジしたものだが、イシュタルを含め3姉妹全員、ヒナと同じ人間であると押し通すにはかなり無理がある。
その上、まったく知らない土地なら、彼女達がどのような扱いを受けるのか想像がつかないというのも怖い点だ。もし異分子として排除しようなんて言われれば目も当てられない。
「……ちょっとここで待ってて。私が、聞いてくるから……」
他の姉妹達に相談したところで、亜人や魔人の扱いがどうなっているのか分からなければ、結局自分が誰かに聞くしかない。
であれば、ここで先に聞いておいて情報を仕入れておいた方が良い。コミュ障でも、家族の為なら頑張れる……いや、頑張らないといけないのだ。
自分には、もう何もない。なら、夢でも現実でも良いから、唯一家族と思える人達の為に自分の命を使おうではないか。どうせ、この幸せな夢から覚めるような事があれば死ぬだけの人生なのだから。
「だ、大丈夫……? ヒナねぇがまともに人と話すとこ、そんなに見たことないけど……」
「う゛……。だ、大丈夫……。お姉ちゃんに任せて……」
心臓の部分をギュッと抑え、イシュタルの心配そうな眼差しを背中に受けつつ、1人だけ森を出たヒナは、列の最後尾に並ぶ。
数秒もしないうちに列が1人分前に進み、彼女はビクッと背筋を震わせながらもなんとか一歩踏み出す。
そしてふーっと小さく深呼吸すると、前に並んでいるローブを羽織って細長い木の棒のような杖を握っている男へ「すみません……」と声をかける。
「んぁ? なんだ、嬢ちゃん」
振り返ったその男はもじゃもじゃの髭を大量に生やし、その引き締まった上腕にはもさもさの腕毛がこれでもかと生えていた。
その姿に生理的な嫌悪感を覚えつつも、なんとかこの場所の事や亜人なんかの事を聞こうとヒナは口を開く。
「え……あぅ……。そ、その……ここは、ど――」
「あ? なんだって?」
やはり、家族以外の誰かと会話をするというのは、ヒナにとってイベントボスをたった1人で攻略するよりもよほど高難易度の事だった。上手く口が開かず、家族と話す時のような声量が自然と出せない。
そればかりか、顔を歪めながら聞き返されただけで背筋をブルっと震わせて恐怖で足がすくみそうになる。
「す、すみません!」
気付けば、彼女は男に頭を下げて一目散にイシュタルが待つ森の中へと逃げ帰っていた。
いくら決心を固め、誰かの為に頑張ろうと思っても現実はそう甘くは無かった。なにせ、ギルドに勧誘される時は大抵ゲーム内のチャットであって相手と顔を合わせての会話ではない。
それに、両親を亡くしているヒナは、不登校で引きこもりという事もあって誰かと顔を合わせて会話をする機会なんてここ数年はまったく無かった。その初めての相手がゲーム内で長年苦楽を共にしたNPC……家族であったから良かったものの、急に赤の他人に話しかけるとなっては到底無理だと言わざるを得なかった。
「ほら、やっぱり無理だった。慣れない事しようとするからそんなことになる」
「うぅ……。だってぇ……頑張らなきゃって思うじゃん……」
イシュタルの薄く小さな胸にヒナが抱かれてその瞳からうっすら涙を滲ませる。その情けない小さな姉の背中をポンポンと優しく撫でるイシュタルは、「別に」とニコッと微笑む。
「そこまで無理しなくても良いじゃん。やっぱりマッハねぇに頼んで――」
そこまで言って、目の前に人の気配を感じてバッと視線を上げる。その黄色の瞳に映ったのは、先程ヒナが話しかけようとして失敗したローブを羽織った男だった。
その視線はイシュタルに抱かれて泣きじゃくっている少女へ向けられ、次いでその異様とも言える姿をしているイシュタルへ向けられる。
「……なにか用? 今は、ちょっと取り込み中」
「あ、あぁ……悪い。そっちの嬢ちゃんがなにか言いたそうだったからよ、気になってちょっと見に来ただけなんだわ。大丈夫か?」
イシュタルは自分に向けられる好奇の視線に少しだけ居心地の悪さを感じつつ、その男の不潔さに嫌悪感を隠そうともせず顔をしかめる。
しかし、男はそんなイシュタルの視線に気付くことなくその胸元で小さく嗚咽している少女を見る。
「……ヒナねぇはちょっと、今は話せない。代わりに私が聞く。ここは、どこ?」
「んぁ? どこって……おめぇさん、どこから来たんだ? ミザリア共和国の方じゃねぇのか?」
「ミザリア……。いや、私とヒナねぇはもっと遠い所から来た。だから、ここがどこだか知らない」
「あ~、旅のもんか。だからここらじゃ見ねぇ恰好してんだな、嬢ちゃんも娘っ子も」
イシュタルは自分の事を娘っ子と呼んだこの男に少しばかり殺意を覚えるが、生憎自分は攻撃系の魔法やスキルを習得しておらず、体術もマッハと違って得意では無いためその拳を握り締めるだけで我慢する。
自分の見た目をどうこう言って良いのは姉妹達だけだ。それ以外の人間や動物、知性のあるモンスターに言われる事を、イシュタルは激しく嫌っていた。
そんな彼女の内心の怒りを知るよしもなく、男は顎に手を当てて合点がいったとばかりにコクコクと頷く。
そして城壁を指さすと、腹に響くようなガラガラ声で「えっと~」と口にする。
「あっこはロアっていう街でな、ガルヴァン帝国の帝都だ。で、そこに並んでる奴らは冒険者やってる奴だったり、帝都で商売したいって連中だな。見たところ、今並んでる奴らは冒険者が多いみたいだが……」
「……そう。じゃあ、亜人とか魔族って、ここではどんな扱いを受けてるの。私達がいたところには、ほとんど人間はいなかった」
アールヴヘイム含め、全ての国をヒナと共に行き来してきたイシュタルでさえ聞いたことの無い国や街の名前。それに加え、冒険者という職業。聞きたい事は色々あったが、その前に最も重要な事を聞いておく。
もしもこのロアとかいう街で亜人や魔人がモンスターとか、討伐しなければならない外敵として認識されているのなら、すぐにでもこの場を離れなければマズイからだ。それに、姉2人にも危害が及ぶ可能性だってある。
まぁ、あの2人が簡単にどうこうされる存在じゃない事はよく知っているが、ここがどこだか分からず相手の実力が不明瞭なうちは油断などできない。
ヒナが使い物にならないせいで、イシュタルは今までの人生で一番脳みそをフル回転させる。
もしもの場合はどうするか、この先どうすれば良いのか。そんな不安が頭の中を駆け巡るが、男から返ってきた答えは幸いというか、最悪な物では無かった。
「おめぇさんら、亜人の国から来たのか。まぁ亜人とか魔族に関しちゃ、未だ差別のあるとこはあるからなぁ……。でも、ロアは冒険者の街だ。そういう心配はしなくて良いぞ。来る者拒まず、去る者追わずってな!」
「……そう。聞きたい事は、それだけ」
「ん、そうか。なら、俺からも質問して良いか?」
イシュタルとしては亜人も魔人も、このどことも知れぬ場所で無条件に敵として認知されている事は無いらしいと知れただけで満足なのだが、男はそうでは無かった。
というよりも、男はそれが聞きたくてわざわざヒナを追いかけてきたのだ。
「嬢ちゃん、つえぇだろ。名前だけでも教えてくんねぇか?」
「……なんで? なんでヒナねぇが、強いって分かる?」
「なんでって……。そりゃ、鎧も着てねぇのに杖を持ってるわけでも無い。そのくせ、走る速度は異様に早くて立ち姿も軸がキッチリしてたかんな。ただの嬢ちゃんじゃねぇって事くらい、誰でも見りゃ分かる」
そう言われて、イシュタルはヒナが履いているブーツの効果を思い出していた。
俊敏性をかなり上げる防具で、魔術師であるヒナにとっては運動能力を高めるためだけの物だ。
マッハはこの防具が無くともそれ以上に早く動けるし、ケルヌンノスに関しても同じような速度で走る事くらいは造作もないだろう。
この防具は、俊敏性のパラメータをあまり育てず、魔力と攻撃力に振り切っているようなヒナだからこそ有用な物なのだ。
言い換えれば、トッププレイヤーや自身の姉でも出せるような速度を『異様に早い』なんて言うのはこの男がそこまで強くないことの証明に他ならない。
目の前の相手が自分よりも弱い存在だと分かれば、警戒心で埋め尽くされていたイシュタルの心にもわずかながら余裕ができる。
「……そう、ヒナねぇは強い。だから、変な事はしない方が良い。怒らせたら、とても怖い」
「ふぇ!? ちょ、ちょっとたるちゃん、変な事言わないでよ……」
「ヒナねぇは黙ってる。怒らせると怖いヒナねぇの名前、ほんとに知りたい?」
「……そうかい。まぁ、そこまで言うならここで深入りすんのは止めとくわ。不躾にすまなかったな。俺はガイル。もし冒険者ギルドに寄る事があれば声をかけてくれ。力になれる事があれば手を貸すぜ。これでも、あの街じゃ結構な有名人なんでな」
白い歯をキラリと見せて笑った男――ガイルは、じゃあなと手を振りながら列の元居た場所に戻っていった。
その場に残った2人のうち、知らぬ間に怒ると怖いという設定を付けられたヒナはイシュタルの胸で静かにいじけていた。
「私……別に怒らないもん……。怒っても、そんなに怖くないもん……」
「ああいうのは事実より舐められない事の方が大事。舐められるより恐れられた方が良いと、前にマッハねぇが言っていた」
「なに教えてるのあの子ぉ……」
ヒナの脳裏に、ソファでだらけながら満面の笑みでしてやったりと両手でピースをするマッハの姿が思い浮かぶ。
無論、その後逃げるように帰宅したヒナによってマッハが事情聴取を受ける事になったのだが、それはまた別の話だ。
そして、イシュタルがヒナねぇと連呼していたことによってガイルにヒナの名前がバレているのではないかと心配し始めたのは、その日の夜の事だ。