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34話 思い出

 ダンジョンに潜って3時間が経過した。それでも、一行は疲れなんて知らないように――主に前の2人が――子供のように自分達の魔法の腕を競い合っていた。


 ケルヌンノスとエリンが異常なほどやる気になっているのでヒナ達3人は特にやる事もなく後ろでそのやり取りを微笑ましそうに見ているのだが、それだけでも十分だと思えるほど充実していた。

 なにせ、家族以外の生者を相手にするとどこか棘のような物が出るケルヌンノスが、エリン相手には生き生きとしているからだ。


 家族の成長……いや、成長と言って良いのかどうかは諸説あるだろうが、友達が出来たことに関しては嬉しかった。

 エリンはムキになってあれこれ違う魔法を試すも、毎回それを上回る魔法を発動してドヤ顔をするケルヌンノスがどこか微笑ましい。

 まぁ、3時間ぶっ続けで強力な魔法を放っておきながら一向に魔力切れの気配が無い2人がそもそもおかしいのだが……。


「はぁ……はぁ。流石……やるね……」

「そっちこそ。今まで見てきた中でもかなり強い……」

「そう? そりゃ、どうも!」


 エリンは彼女のその言葉に少しだけむくれながら、両手を上げてキラリと光る爪を光らせている目ブラックベア3体を炎の槍で貫く。


 実際、ケルヌンノスが言っている事は正しい。

 エリンは、ラグナロクで当てはめると上位プレイヤーのそれと遜色ない実力を保有していると言っても過言では無かった。

 魔法の威力はそれほどでもないし、使える魔法の数もそこまで多くない。

 だがしかし、その圧倒的とも言える魔力総量はヒナやイシュタルに迫る物がある。装備の1つでも身に着けたら途端に化けるだろう。


 それに、ケルヌンノスだって無尽蔵に魔力がある訳では無い。そのほとんどが死霊系の魔力消費が少ない魔法という事でなんとかなっているだけで、普通の魔法を使っていればとっくに燃料切れになっている。

 魔力の消費は回復魔法や支援魔法の系統が最も激しく、次に攻撃系の魔法や相手に何かしらの状態異常を施す魔法。そして、攻撃系の魔法に分類されない特殊な死霊系の魔法が最も魔力消費が少ない。


 彼女はそういう側面もあり、ヒナやイシュタルが魔力に振っているステータスを体力や俊敏性に振り分けていた。

 まぁ、それでもかなり魔力がある事に変わりはないのだが……。


「も~……これでも結構自信あったんだけどなぁ……」


 右手をプラプラさせながら隣を歩く少女に向かってボヤくと、その本人はフッと不敵に笑った。

 それは別にバカにしている訳では無く、ヒナに貰った自分の力こそ至高だと信じているが故の誇らしさみたいなものだ。


 実際、エリンの使う魔法はそのほとんどがラグナロクに存在する物だが、時々この世界特有の物と思われる魔法も使う。

 その威力は大したことないが、それは自分達から見ればというだけで、この世界基準で考えると破格の物だろう。

 彼女の強さはムラサキなんて優に超えているし、レベルで換算すれば目算でも80以上は堅いはずだ。今回ばかりは相手が悪かったと言うしかない。


「エリンは強い。私のお墨付き」

「ケルヌンノスちゃんに言われても別に嬉しくない~! 嫌味にしか聞こえないもん」

「……そう?」


 少しだけ寂しそうに肩を落とした彼女を見て、慌てて手を振って否定する。

 別に本心から言った言葉ではなく、言葉の綾というか話の流れのような物だ。実際にそう言われるのは嬉しいし、自分を育ててくれた師匠を認めてもらえたようでとても嬉しかったのだから。


「ん、知ってる。いじわるした」

「も~! びっくりさせないでよ!」


 エリンは見た目だけで言えばマッハ達3人とさほど変わらないが、その実100年以上生きているハーフエルフだ。まぁ、エルフと言っても彼女の母がエルフだっただけでその血はかなり薄いのだが……。


 ケルヌンノスが何歳なのかは知らないし聞く気も無い――女の子に年齢を聞くと怒る人が多いと知っているので――が、その見た目で泣かれると心に来るものがある。

 年長者故の心情だろうが、演技だとしてもしゅんとされると心臓がキュッと締め付けられてしまう。


「ねぇヒナ! ヒナの魔法も見たい!」

「……あっ、私? え、えぇ……?」


 話を逸らす為、咄嗟に後ろにいたヒナを振り返ってそう言う。


 実のところ、洞窟に入ってからずっと、出てきたブラックベアは彼女とケルヌンノスが交互に撃破していたのでヒナ達3人の出番はほとんどないに等しかった。

 なので、彼女がヒナの実力を目にすることは未だ無かったし、マッハの実力に至っては全くの未知数だ。腰の刀を見る限り剣士なのだろうという想像は出来るが、その実力は分からない。


 大体、自分も剣は扱えるがそれも兄達と同レベルという非常にレベルが低い物だ。そんなのヒナ達の前で見せたくは無いし、そもそもケルヌンノスがこれだけ強いのに、他の3人が弱いはずがないというのは流石に分かる。

 むしろ、この中ではイシュタルに続いてケルヌンノスが弱い方なのではないか……なんて直感的にそう感じるのだから不思議だ。

 魔法使いの本能としてなのか、ヒナとマッハはまた次元の違う強さだと感じるというのもあるだろうが……。


「ヒナのカッコいいところ、見てみたい! だめ……?」

「う……。わ、分かったよ……」


 あからさまに上目遣いでそう言われれば、ヒナは断れる性格をしていない。

 それに、ケルヌンノス程じゃないにしても、エリンにカッコいい所を見せたいと思っていたのは彼女も同じだ。まぁ、それは自慢したいとかいう訳では無く、単純にラグナロクで培った自分の力を家族以外の誰かに凄いと認めてほしいだけなのだが……。


「ぐらぁぁ!」

「……ちょうど来た。ヒナねぇ、がんばって」


 ブラックベアしか出てこない第一層は退屈でもあるが、別に特別弱いモンスターという訳でもないので油断して良い相手ではない。

 でも、こんな機会だからと、ヒナはエリンが得意としている……というか、よく使う『炎帝槍』をお手本として使うことを決めた。


 暗闇でギロリとした瞳を向けてくるブラックベアに右手を向け、魔力を集中させる。

 メイン武器が手元にないのでその威力は全力とは言えない物の、魅せ方は他にもある。


自動迎撃オートエイム


 自身に備わっているスキルを発動し、魔法が自動的に複数の敵に当たるよう調整する。

 こうする事で、本来は1体しか仕留められない魔法でも、その効果が続く……もしくは一撃で倒せなくなる威力まで減少するまで、近くにいる敵を自動で倒してくれるのだ。

 経験値稼ぎなどで使われる狩場で重宝されるような魔法だが、ヒナにはケルヌンノスという広範囲殲滅を得意とする魔法使いがいるのであまり出番はない。でも、この場においてはかなり有用な物となるはずだ。


「じ、じゃあ行くよ? 炎帝槍!」


 燃え盛る炎の槍が目の前の3体のブラックベアに向かって飛翔する。

 まずそのうちの1体を圧倒的な威力で刺し貫き、その体をボッと焼いていく。

 本来はここで終わる魔法だが、事前に使っていたスキルのおかげで炎の槍はブラックベアの体内を貫通すると、その右隣にいた別の個体の体を刺し貫く。それが終われば、残った1体の体をも貫き、ようやくその役目を終えて燃え尽きる。


 魔法の性質上、広範囲に影響が及ぶような物じゃなく敵単体にしか効果を及ぼさない魔法は、その個体にダメージを与えるとすぐに消滅する。

 仮にヒナが使ったようなスキルを行使した場合には、2体目に与えるダメージ量は1体目のおよそ4分の3程度に減退し、その数が増えるごとにその威力を下げる。

 ソロモンの魔導書が無い今のヒナが使う炎帝槍では、ブラックベア6体を貫く程度が限界だろう。


「えへへ、どう?」

「……え!? なにあれなにあれ! 私が使う奴と全然違うじゃん! 魔法それ自体は同じなのに、挙動というか、性質それ自体が全然違う!」


 瞳をキラキラさせながら迫ってくるエリンが少しだけ愛おしく、ついその頭を優しく撫でてしまう。

 魔法の性質なんてゲーム内で獲得した物を本能に従って半ば機械的に発動している身なのでよく分からないが、それでも好意的な感情を向けられている事は分かる。

 まるで、憧れのスターかなにかを見るような目は少しだけ照れくさいが、それ以上に嬉しかった。この世界で初めて、純粋にその力を認められたような気がしたから。


「当然。ヒナねぇは凄い」

「ちょっとカッコつけるところは子供だけどなぁ~」

「ヒナねぇはそういう所も含めて可愛いから良い。ううん、むしろその方がヒナねぇらしい」

「うん! ヒナ、とっても凄い!」


 4人の幼女――1人は100歳を超えているが――から褒められ、ヒナの低すぎる自己肯定感と承認欲求が急激に満たされる。と同時に、凄まじい羞恥心に襲われてその顔をゆでだこのように真っ赤にする。

 両親以外に褒められたことの無かった……というより褒められる事が無かった人生を送ってきたせいで、褒められる事にはめっぽう弱い。それがよく知らない人ならいざ知らず、唯一の家族と友達に言われて、嬉しくないはずがない。


「ほ、褒めすぎだって~! ま、まぁそれ程でもあるんだけど〜!」

「…………ちょっと調子に乗りそうだからこれくらいで止めとこう」

「だな~。ヒナねぇ、調子に乗ったらすぐやらかすもんな~」

「ん。ちょっと言いすぎたかも」


 呆れたように頭を振る3人がそんな辛辣な言葉を放ってくるので、またしても気分が落ち込みそうになる。しかし、目の前でキラキラとした瞳を向けてくる少女のおかげでなんとか耐える事が出来る。

 だが、そんな楽しい時間もそろそろ終わりにしなければならない。ずっとこのダンジョンにいてはエリンの両親や家族が心配するかもしれないからだ。


 彼女の抱える闇がどこから来ているのか分からないが、ヒナの予想ではそれは家族……というよりも、彼女が日頃身を置いている環境そのものが原因だろう。

 そんな場所に、大切な友達をホイホイ戻したくはないが、それは自分の個人的な感情であってそこまで踏み込んで良いのかは分からない。

 それに、初めて出来た友達なのに余計な事に首を突っ込んでその関係を終わらせたくなかった。


「じゃあ、そろそろ帰ろっか!」

「お~! 待ってました! お腹空いたな~!」

「ん、結局今回も出番なかった……」


 今が何時なのかはダンジョン内にいるので分からないし、太陽の位置すら分からない。だけど、昨日エリンが帰っていない事もあるので、早めに帰した方が良いだろう事は分かる。

 そこは年長者として気を遣わないといけないところだと思うので、複雑そうな顔をしている2人に苦笑を向けつつ、以前帰ったような乱暴な手段……は取らず、腰のポーチからアイテムを取り出す。


「じゃじゃーん! 妖精王の呼び笛~!」


 ヒナが取り出したのは、小さなアメジストの宝石が埋め込まれたオカリナのような笛だった。この場で取り出すという事はもちろん、このダンジョンから即座に脱出できるアイテムという事だ。


 使用方法はその見た目通り、吹き口に息を吹きかけてピューっと音を出すだけだ。それだけで、ゲーム内では妖精王が出現して、その力でダンジョンの入口まで瞬時に導いてくれる代物だ。

 課金ガチャの当たりアイテムという事もあってかなり希少な物だが、彼女は財産のほぼ全てをラグナロクに費やしていたのでこういう貴重な品も腐るほどギルド本部に保管されている。


「え、なになに?」

「……それ、使うんだ」

「前みたいに魔法で穴開けようよ~」

「アイテムの無駄遣いな気もする……」


 妖精王の呼び笛は500円ガチャで排出されるので、その効果は3回までしか使えない。なので、滅多な事では使わないし貧乏性なヒナも、ゲーム内では数回しか使った事が無かった。

 ただ、エリンの前でもっとカッコつけたいという理由だけで、彼女達の反対を押し切って吹き口に息を吹きかける。


『ぴゅーぴろろー』


 リコーダーすらまともに吹けない彼女が、いきなりオカリナなんて吹けばそうなるだろうな……。そんな、ある意味予想通りの情けない音を奏でつつ、妖精王の呼び笛はその効果を発揮する。


 ただ、彼女達がいる場所は正確にはダンジョンではなくダンジョン型のギルド本部だ。

 それに、ゲーム内とは違って妖精という存在そのものが確認されていないこの世界では、妖精王は存在できない。なので、一瞬でダンジョンの入口に戻されるという能力だけが発動し、瞬時に目の前の景色が変わる。


「うわ! ……え? な、なんか戻ってる!?」

「……そういう感じなんだ。ちょっと挙動が違う」

「些細な問題だろ~? それより、早く帰ろうよ~」


 がっくりと肩を落としながら西に沈みゆく太陽を見つめるマッハは、ぐぅぅと可愛くお腹を鳴らす。

 しかし、そんな彼女に追い打ちをかけるようにイシュタルがボソッと呟いた。


「マッハねぇ、走れるの?」

「……あっ!? そうだ、ここからちょっと走らないと帰れないんだ! うぅ……でもあいつに乗りたくないしなぁ……。ヒナねぇ、私も抱っこして!」


 走ると言ってもスキル等を使っている訳では無く、単純な肉体運動なのでそれなりに体力を消費する――ごく微々たるものだが――し、お腹が空いていれば力が弱くなるのは彼女も同じだ。

 なので、両手を広げてヒナにお願いする。


「む、無理だよ……。乗せる場所無いもん」


 彼女の背中にはイシュタルかケルヌンノスが乗るし、おぶるにしてもその席は既にエリンで埋まっている。

 ヒナも超人では無いし、ケルヌンノスのような実体を伴う『死霊の腕』のようなスキルを獲得していない。

 その関係で、一度に運べる人数は2人が限界だった。


「マッハねぇ、私相手なら遠慮はいらない。最高速度で飛ばしても大丈夫。流石に、もう帰り道は分かるでしょ? 先にご飯を食べに行ってもいい」


 イシュタルがボソッとそう言うと、マッハはえぇと複雑そうな顔をしつつも、分かったと頷いた。

 この距離なら霊龍に乗るよりも彼女が全速力で走った方が早く王都には辿り着けるし、先にご飯を食べに行けるというメリットも捨てがたかった。なにせ、持ってきているお金に限りのある彼女達の食事は、毎度戦争のようにみにく……可愛らしい奪い合いが発生するからだ。


「じゃあ先行くな! エリン、また遊ぼうな!」

「エリン、また来れる時に来ると良い。私達は、まだしばらくこの国にいるつもり。仮に出る時が来たら、その時はあのギルマスに伝言を頼んでおく」

「っ! そ、そっか……そうだよね、この国、何もないもんね……。分かった、また、近いうちに遊びに行く」


 その言葉に満足したのか、イシュタルとマッハは満面の笑みを浮かべると軽い衝撃波を起こしながらその場を去った。

 その反動で周囲の民家に笑えないような被害が出ているのだが、その尻拭いに奔走するのはこの国の支部全てのギルドマスターを務めているペインだ。無論、その事が彼女達に伝わる事は無い。


 マッハに遅れる事数秒、ヒナ達3人もその場を出発した。

 その速度はマッハには負けるとも音速の数倍という物で、ダンジョンがあった小さな村の村長が翌日、近くの街のギルドへ『突然突風が吹いて村が壊滅しかけた』と調査を依頼する事になるのだが、今はまだ誰も知らない。


「はっや……。ヒナも凄いね……。あっという間に街に戻って来た……」

「でしょ? ちょっと頑張っちゃった!」

「エリン、あんまりヒナねぇを褒めると調子に乗る。ほどほどにするべき」


 ヒナの背中から降りてふぅと息をついたケルヌンノスは、自慢げに薄い胸を張っている姉を見つめながらそう言う。

 しかし、エリンは不思議そうに首を傾げる。


「そうなの……? でも、そういう所も可愛くない?」

「……やっぱり、エリンは見る目がある。そう、その通り。ヒナねぇは、そういう子供っぽいとこも含めて、可愛い」

「ね、ねぇ、褒められてる気がしないんだけど……」

「それはそう。だって、褒めてない」


 そんな彼女の言葉にえぇと涙目になるヒナを他所に、エリンは「羨ましいなぁ」と小さく呟く。

 家族の間でそんな軽口を叩き合うなんて、自分では考えられない。

 そもそもそんなに仲良くないというのもそうなのだが、兄達は冗談が通じない。仮に今と同じような事を言えば物凄い剣幕で怒り散らすだろうことは想像に難くない。

 そういう所は、無駄にプライドの高い貴族の連中と大差ないのだ。


「エリン、また来ると良い。たるも言ってたけど、私達はまだしばらくこの国にいるつもり。基本は冒険者ギルドに居るし、いなければさっき行ったダンジョンに潜ってる。馬車を手配すれば、数時間で行けると思う。ギルドマスターの人に話はしておく」

「わ、悪いよそこまでしてもらうのは……。それに……私ね? 実は、一度行った場所なら魔法で移動できるんだ~。だから、あそこにも行こうと思えば一瞬で行けるの!」

「転移魔法? それは凄い。私もヒナねぇも、そういう魔法は使えない」

「ほんと!? やった~! まぁ、転移魔法って言っても私だけしか移動できないから、誰かを連れて移動とかは出来ないんだけどね」


 苦笑しつつそう言ったエリンは、今の事は内緒にしてとお願いすると、お別れを告げて昨日と同じように転移魔法を使って帰っていった。


 転移魔法に関してだが、現時点で使用できるのはこの世界に彼女だけなのだが、それが世間に広まると非常に面倒な事になるので彼女自身も今まで誰にも話してこなかった。

 師匠にはもちろん伝えていたが、その時でさえ口止めされたほどだ。

 なのにそれを破ってしまうほど、エリンはヒナ達の事を気に入っていた。彼女達に対して隠している事と言えば、自分の出自と家庭環境くらいだろう。


 ただ、その唯一の隠し事に関しても、明かしてしまうと迷惑が掛かってしまう可能性があるので言えないというのが実情だった。

 誰が好き好んで、唯一の友達に王家の厄介ごとや、自分の唯一の汚点を話したいと思うだろうか。


 それに、優しいヒナ達ならそれを真摯すぎるほど受け止めてくれるだろうことは容易に想像できる。

 この国からいずれ去っていく人達に……唯一の大切だと思える人達に、そんな心配はかけたくなかった。


「楽しかったな……」


 真っ暗な自室へと帰ってきた彼女は、先程の明るさがまるで嘘だったかのようにベッドにしゃがみこんで膝を抱える。そして、その瞳の端から大粒の涙をポロリと零した。

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