112話 反逆者の救援要請
レベリオは、メリーナの姿を始めてその瞳に映した時、雷に打たれたような感覚に襲われた。
長年の経験でそれを態度や顔に表す事は無かったが、それでもわずかに心臓の鼓動が早くなり、ヒナに会った時と同じ……だが、その時よりもいくらかマシなレベルで発情する。
メリーナを前にした途端下腹部が熱くなり、今すぐにでも始めてしまいたい衝動に駆られるがなんとか我慢する。
話し合いの最中も、言葉では作戦を進めつつも頭の中ではまったく別の事を考えていた。
半ば反射的に早まっていた心臓の鼓動は今は落ち着きを取り戻し、熱くなっていた下腹部も今は鳴りを潜めて大人しくしている。
その理由は、女がメリーナの正体に気付いて自分の心の整理を付け始めていたからだ。
彼女にとって、目の前の女はこの世界で……いや、それは正しくない。
正確に言えば前生きていた退屈なあの世界で唯一同じ人物に救われ、それでいて彼女の事をほぼ同じタイミングで好きになった少女だ。
なぜそう感じるのか、それは女にも分からない。
だが、これまた本能の部分が女にそうに違いないと囁きつつ、この女が書いたとされる小説の内容がそれを裏付ける手伝いを無意識化で行っていた。
レベリオにとって、少女の事はヒナやその妹達に次ぐほどに愛している存在だ。
その理由はひとえに、あの退屈な物で溢れている世界の中で自主的にそこから抜け出そうとし、あまつさえ自分と同じ人を好きになったという共通点があったからだ。
あの退屈な世界では、皆が皆その退屈な事態に気付いておらず、日々を惰性的に生きていた。
特に理由もなく、ただ仕事があるからという理由だけで週5で働きに出る。
朝から夜まで働いて、帰ると数時間ダラダラするだけ。たまの休みにも、日頃の疲れで家の外に出られない事も多く、旅行なんて行けるのは一部の余裕のある者達だけ。
しかし、その余裕のある者達もその人生の大部分は無意味で退屈な労働という物に費やして死んでいく。
そんな退屈極まりない世界から自主的に抜け出した少女の事をレベリオが高く評価し、ヒナほどとは言わないまでもそれなりに“愛して”いたのはそんな理由があったからだ。
そもそもヒナに決定的に恋に落ち、愛し、崇拝したのは、レベリオが始めてラグナロクにログインして彼女のアバターを見た時からだ。
それを考えれば、広告の時点でヒナに惚れていた彼女の勝ちという見方も出来る。
(信じられない……。この世界に、私が愛する人達が全員来てるなんて……)
またも早まりそうになる心臓の鼓動を筋肉を圧縮させることで無理やりに押し込め、上気しそうになる頬は口腔内を少し嚙み千切る事で態度に出さぬよう心がける。
程なくして潜入任務の最初のステージに立てることが決定してフィーネの部屋へと向かった後も、彼女はその事だけを考えていた。
だがしかし、予想外にもメリーナの殺害とヒナの殺害に関する話が出て来たので一時思考を中断し、その場での話に真剣に耳を傾け始めた。
ヒナはもちろんのこと、今やメリーナの事を愛していると自覚した以上、メリーナだって目の前の3人に殺させる訳にはいかなかった。なら、彼女を守るために自分が出来る事は何か。
レベリオは、彼女達に悟られぬよう最大限の注意を払いつつ話し合いに参加し、メリーナ暗殺がほぼ確定的になった段階で部屋を出た。
その後、実家に引き継ぎに行かなければならないという嘘を吐いてメリーナの傍から離れると、その足ですぐさまヒナに会ったダンジョンへと駆け抜ける。
「はぁ……はぁ……。ようやく着いた……」
ブリタニア王国から走り抜ければ、彼女の身体能力だと30分もせずに到着出来るそのダンジョンは、メイシア人類共和国から走り抜けると半日はかかる。
それでも休みなく走り続け、彼女はふぅと一息ついてからすぐさまダンジョンの中へと足を踏み入れた。
「お姉ちゃん~。お姉ちゃん~。おねえちゃんは~、どっこだろな~」
前回入った時は最初から存在隠蔽スキルを使っていたのでモンスターは彼女に気付くことなくほとんど素通りが出来ていた。
そもそも行く先々にケルヌンノスが倒したのだろうモンスターの死骸が無数に転がっていたのでそんな心配は無かったのだが、面倒だったのでそれを使っていたのだ。そこには、マッハの索敵スキルに引っ掛かるかもしれないという懸念もあったが……。
しかし、今回女はそのクラス固有スキルを使わず、正面から堂々とダンジョンに侵入していた。
頭の上で手を組んでまるでピクニックにでも行くかのように気楽に、それでいて目の前に出てくるブラックベアの群れの命を指先一つでほいっと葬っていく。
本来ならマッハに矛を向け、ヒナに対し殺意を仄めかすようなことを言い残した彼女がこんな無防備な姿を晒す事は命取りにしかならない。
しかし、彼女は物理的な攻撃ではほぼ倒せないに等しいし、圧倒的な火力を持っているヒナだろうが、なんの話し合いもせずいきなりぶっ放してくることは無いとしっかり理解していた。
ヒナはたとえ自分に矛が向けられようとも、NPCの面々が近くにいれば絶対に安全だと分かっている。
一見驕り、油断の類に聞こえるその見解が当たっているのがディアボロスの面々でも気軽に手が出せなかった証拠なのだが、今回の場合はそれが手伝って、ヒナがすぐさま攻勢に出てくることは無いだろうと彼女は考えていたのだ。
いやむしろ、ヒナの身を第一に考えているNPC達ならば――
「おいお前、止まれ」
「……なんでまた来た?」
そう。彼女の身を第一に考えるマッハ達ならば、ヒナを安全な場所に置いて自分達だけで立ち向かってくるだろうと読んでいた。
普段はここまで頭を使う事は無いのだが、今は愛する者が命の危機に瀕している。
そんな事を言っている場合では無いし、段々と熱くなってくる下腹部の熱を慰めている暇もない。
「マッハちゃんとイシュタルちゃんか~! ケルヌンノスちゃんはお姉ちゃんの護衛かなっ?」
ダンジョンに侵入してわずか20分程度で迎えに来てくれたことを嬉しく思いつつ、ここに唯一自分を殺せるかもしれないケルヌンノスがいない事に内心で安堵する。
無論即死魔法に関して耐性は整えているが、マッハは剣士でケルヌンノスは魔法使いだ。
物理的な攻撃に対してはほぼ絶対的な防御を誇る時間凍結も、魔法には若干弱い性質を持つ。なので、ここに火力の出せる魔法使いが居ないのは好都合だった。
「ん~? あれれっ? マッハちゃん、お洋服洗濯できたんだね! 前会った時はなんか汚れてたけど、ちゃんと綺麗になってるじゃん! うん、似合ってるにあってる!」
「……ヒナねぇに牙剥いたお前に言われても嬉しくない」
「……なんで来たってさっき聞いた。それに答えて」
ヒナに嫌われたいわけではないので、彼女はヒナや話の内容が伝わる可能性の高いマッハ達の前では極力本心から物を言うようにしている。
以前ヒナを前にした時に語った赤裸々な告白についてもそうだし、今言った称賛の言葉についても嘘偽りない本心からの称賛だった。
しかしながら、マッハは嬉しいという気持ちよりも先に胡散臭い・気持ち悪いという感情を抱いたようで、警戒心を剥き出しにしながら刀を抜く。
同時にイシュタルも身体能力を上げる魔法を複数唱え、マッハの動きに対応する為なのか2歩ほど下がって距離を取る。戦闘に突入すれば、どこからかこの光景を見ているヒナが未来視のスキルを発動して、その光景がパーティーメンバー扱いされている彼女達にも伝わるはずだ。
この世界ではプレイヤー間ではパーティーと認識されないが、NPCではその限りではないというのは確認済みだ。
これがもしもマッハ達が全員プレイヤーだったなら、誰か1人が未来視のスキルを発動してもその光景は口頭で伝えるくらいしか共有する方法がない。
(こういう所はNPCの特権だよねぇ……。お姉ちゃんが見てる景色をそのまま見られるなんて羨ましい……。私もその恩恵に預かりたいなぁ……。なんならそのままお姉ちゃんの隣で一緒にご飯食べたり、寝たり、抱き合ったり、それでいてキスしたりあんなことやこんなこともして……朝起きたら恥ずかしそうに笑って顔を背けるお姉ちゃんの頭を撫でたりするんだ……。あぁ……ヤバ、ちょっとマズイ)
夢のようなその光景を想像して下半身が大洪水に陥る前に思考を中断し、少しだけ恥ずかしそうにごほんと一度咳き込む。
それから腰に差していた刀を投げ捨て、降伏するかのように両手を上げて戦う意志が無い事をアピールする。
「……? なんのつもり?」
「今回は戦いに来たわけじゃないんだ~。前回はほら、私もちょっと冷静じゃなかったというかさ。これでも反省してるんだよ? もう少し上手くやってたらお姉ちゃんに気に入ってもらえたかも~とか、もっと確実に殺せたかも~とか思ってるんだから。私にとっての愛って、その人の事を全て愛する事だからさっ! 死んだ途端にその人の存在忘れちゃったり、すぐさま新しい人に行こうとする人って何考えてんの?って思う人なの私。真に愛するんだったら死んだ後も、死んだ後のその姿も、そして死してなお抱き合って、キスして、あんなことやこんなことをして交わって……一緒にたくさん楽しいことをするのが、本当の愛だと思うんだ? だから、愛した人は殺してあげるのが、私なりの愛なんだ~」
『……』
レベリオの発言を聞いて、マッハとイシュタルは頭の中に流れ込んでくる数秒後の世界で女からの攻撃が来ないのを確認しつつ、お互いの顔を見合わせる。
目の前の女が何を言っているのか、いい意味でも悪い意味でも子供の彼女達には何一つ理解できず、自分達の愛の形とは随分違うんだなという事しか分からなかった。
彼女達がヒナを愛しているというのはそうだが、別にキスがしたいだとか殺したいだとかを思うはずがなかった。
一緒に寝たりご飯を食べたいと思うのはあくまで親愛というジャンルであって、女の語っている愛とは全くの別物なのだろう。
数秒後、2人が導き出した結論はそれだった。
「男だったら不快……って言ってた奴か?」
「多分そう。私達とは、好きとか愛の基準が違う。だから、考えるだけ無駄」
「あ~ん、悲しい。でもま、妹ちゃん達はそのままでいてくれた方がお姉ちゃんも嬉しいかな? 子供の良いところは純粋なところだからねっ!」
『私達を子供扱いするな!』
ほぼ同時に叫ばれたその言葉に一瞬ポカンとするも、レベリオは深く考えずにふふっと面白そうに笑うだけだった。
マッハも攻撃して良い物なのか決めかねており、以前と同様、仮に斬りかかって首を落したとしても絶命しないだろうと剣士としての直感が囁いていた。
それもあって、イライラしつつも中々攻められないでいたのだ。
その事をしっかりと理解して彼女達をからかって遊んでいたレベリオは、数分して遊びは終わりだとばかりに本題を切り出した。
「でね、今日来たのはお願いがあるからなんだ~。ちょっと、人助けを頼みたくてね?」
「やだ。断る」
「マッハねぇに同意。胡散臭い」
有無を言わせず。そんな言葉が相応しいほどあまりにもピシャリと言い放った彼女達に思わず苦笑を漏らしつつ、拒否を示す彼女達に構うことなくレベリオは続ける。
「あと数時間……もしかすると数十分後くらいに、ここから南の方角で助けを求めるなんらかの魔法が発動される。もしくは声かもね。ほら『助けてくれー!』みたいな、そんな感じの声が聞こえてくると思うんだ?」
「だからなんだよ。なんで私達が、そんな顔も名前も知らない奴を助けなきゃいけないんだ? それも、ヒナねぇに刃向けたお前の頼みで」
マッハのその言葉はもっともだ。
なので、レベリオは前もって用意していた物を懐から取り出すと、地面を滑らせるようにしてその本をマッハの方へ投げる。
おかげで表紙がビリビリと少しだけ破れてしまうが、中身の方が無事ならそこまで問題にはならないだろう。最後の方が読めなくなろうとも、最悪最初の数ページだけ読めば、彼女達ならそれがなんであるか理解するはずだ。
「……なんだ、これ?」
「ちょっと読んでみてよ。私は何もしないから」
怪訝そうにしつつもその本を手に取ったマッハは、警戒しながらも素直にその本をパラパラとめくってみる。
すると、そこには難しそうな言葉がずらずら並んでおり、この世界の文字が読めないマッハにとって、それは暗号文かなにかのようにも思えた。
「……あ、そうだそうだ。それ、この世界の文字だったね。ごめん、ちょっと待ってね?」
まるで、姉が妹に消しゴムか何かを貸す時のようにおおらかに笑ってそう言ったレベリオは、腰のポーチから彼女達も見覚えのある魔道具を取り出すと、イシュタルへと向かってポイっと投げた。
ヒナの未来視でそれが自分達に悪影響を与える事は無いとしっかり確認した後、宙を舞っているそれをパシッとキャッチしてマッハへと手渡す。
「ん、ありがと。えっと……? 『彼女は魔王と呼ばれていた……』」
それから数分間、音読するかのようなマッハの声がその静かな空間に響き渡った。
改めてその本の内容を聞いていて鼻息と心臓の鼓動を早めたレベリオは、今にも達してしまいそうなほど頬を上気させてマッハの手をギュッと握る。
「ねっねっ!? そこに書いてあるの、“私達”のお姉ちゃんでしょ!? 残念だけどその本にイシュタルちゃんは出てこないけど、マッハちゃんとケルヌンノスちゃんは出て来たよ! その本の作者、気にならない!?」
未来視のスキルでしっかり確認していたはずなのに一瞬で距離を詰められたことに内心驚愕しつつ、マッハはまたしても素直にコクリと頷いた。
前回会った時と同様、レベリオからは一切敵意を感じず、今回に限っては未来視という絶対的な予測の手段がある。
それに、ヒナの話では彼女の持っている武器は神の名を冠していないので、自分にダメージを与える事は出来ない。念のためにイシュタルにも来てもらっているので、彼女の装備が変わっていたとしても問題は無い。
あまりにも熱心にその本について解説するレベリオをどこか可哀想な目で見つつ、隣で不思議そうな顔をしているイシュタルへと視線を向ける。
そこには「この本、資料室で見たのと同じだよな?」という意志が宿っていた。
「トライソン、その本の作者って、もしかしてメリーナとか言わない? だったら私達は、その人を知ってる」
「トラ……あ、あぁそうだよね! 皆にはそう言ってたもんね! うんうん、覚えててくれて嬉しいよっ! で、本題に戻すけど……その人、知ってるんだ?」
本当に意外そうにそう言ったレベリオに少しだけ疑問を覚えつつ、2人は小さくコクリと頷いた。
この時、最下層のモニター室で様子を伺っていた雛鳥がかなり取り乱しているのだが、それを知るはずもないレベリオはその先を続ける。
「そうそう~メリーナ。その子がこの本を書いて出版したんだけど、ちょっと厄介な連中に付きまとわれててね。あなた達に助けてほしいんだっ! 私じゃ力不足だし!」
『……』
マッハから2歩ほど離れてにこやかな笑みを浮かべながらそう言ったレベリオに、今度は別の理由で2人は沈黙する。
資料室ことメリーナの自室で読んだ資料と、冒頭の数ページしか読んでいないが小説の内容はかなり酷似している。作者が同じと言われても、それが嘘だとは思えないほどそっくりだ。
その文面からはヒナに対する愛や尊敬、畏怖の気持ちがよく伝わってくるし、事情を知る者が見ればラブレターっぽいなという印象を受けるのもまた事実だ。
2人は……いや、ケルヌンノスを含めた3人はメリーナの事を既にエリンよりも高く評価しており、一度会って話してみたいと強く思うほどにここ数日ヒナに対する彼女の想いを調べていた。
喋る事が叶ったなら、必ずエリンと同様親友になれるだろうと思っていた。
そんな人の命が危ないと言われれば、それは当然考える間もなく助けに行くと即答する。そう、即答するのだ。
ただ、その話を持ってきたのが他ならぬトライソンという事で、どうすれば良いか決めかねていた。
ハッキリ言えば、信用できなかった。
「じゃあ、私は妹ちゃん達の前には“極力”現れないようにするし、お姉ちゃんはこのダンジョンからでなくても良いよっ! 多分、ここってラグナロク関係のダンジョンでしょ? 私、どっかのギルドの拠点じゃないかって思ってるんだよね! どう、当たってる?」
「……ん、当たってる。私達の拠点じゃないけど、ここはギルドの拠点」
「だよね~! なら、お姉ちゃんは今みたいに安全な場所にいれば良いよ! 最悪マッハちゃんかケルヌンノスちゃんだけでも、多分対処は出来るからっ!」
正確には五分五分だろうが、それでも用心深いフィーネやイラの性格なら、ここは仕方ないと引く可能性が高いのも事実だった。
それに、いくら彼女達が強いとは言っても姉妹の誰かを1人で行動させるとは思えない。なら、十中八九2人で挑むことになるだろう。
ヒナ程ではないにしても火力がおかしい魔法使いであるケルヌンノスはもちろん、上位プレイヤーにも迫るだろう性能を誇っているマッハが居れば、とりあえずメリーナを彼女達から守る事は叶うはずだ。
「私はね、愛する人を他の誰かには奪われたくないんだ~。もちろん私はお姉ちゃん一筋だし、お姉ちゃんが私の気持ちを受け入れてくれるならそのまま添い遂げるつもりだし、今後一切他の奴には興味の欠片も湧かないって約束できる。それくらいに私は、お姉ちゃんの事を大好きでだいすきで、この世の誰より愛してる。それこそ何を言われようが、何をされようがこの気持ちは二度と変わらない。でも、私は妹ちゃん達と同じように、そのメリーナも愛してるんだっ! だから、協力してくれない?」
「……マッハねぇ、どうする?」
軽い調子で顔の前で両の掌を合わせてお願いのポーズを取るレベリオを怪しい目で見つつも、イシュタルは最初の時のように不信感から即否定することはなく、判断を姉へと任せた。
そこには、彼女の言う事がデタラメには思えないという無言の意志があった。
「……お前、もう私達やヒナねぇには手を出さないんだな?」
「うんうん、お姉ちゃんや妹ちゃん達には、今回は手を出さないよ! でも、今度会う時は……ちょっと約束できないかも! ごめんね、お姉ちゃんの顔見ちゃうとどうしても自分の気持ちが抑えられずに、大好き!ってなる気がするんだ? だから、約束はできない。でも、今回は絶対手を出さないって約束するよ!」
「……じゃあ、良い。やる」
レベリオがここで、今後も含めて彼女達に手を出さないと言ったのなら、マッハが彼女を信用する事は無く、ここで否を突き付けていただろう。
もしかすれば雛鳥から同じような事を言われて承諾する可能性はあったが、そこにレベリオの意志は介在しなかったに違いない。
だが、正直に今後の事については約束できないと口にした彼女を見て、マッハは今回に限ってはレベリオを信用する事にしたのだ。
それは果たして正解か否か。それは、遥か上空に打ち上げられた花火の魔法をその目に見た時に確信に変わった。