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黒い鴉は夜を啄む  作者: 月夜ノ歌
9/12

裁判


             人間が愚かだというなら


        それを生み出した『神』は、もっと愚かなのだろう









私と、元傭兵の魔女の弟子さんは、警察署で事情聴取を受けていた。


殺し屋は引き渡し、被害届を出さなければならない



「目撃者も大勢いますし、あなた方の証言で容疑者の実刑はほぼ確定でしょう

 ドライブスルー型裁判での、AI判定により 今日にも執行出来ますが、どうしますか?」


日本の犯罪率は、わかりやすく増加していた

日本に限った事では無いが、アメリカでは10年以上前から導入されていた

裁判の超簡略化システムを日本でも採用し始めたのは、ごく最近の事だ。


誰の目から見ても明らか、証拠もあり、現行犯なら

その日の内にAIの判断により罪状を決める。


ちなみに、死刑制度について寛容で文化的な我が国では”異能”を用いた殺人は即刻死刑宣告が出るようになっていた。


AIは、その国の特色、国民性にも順応して見せた。


他人の人権を無視して、命を奪ったのだ

加害者の人権を無視して命で償わせるのが妥当、当たり前の話だ。


未だに、反対運動を行う者も国内外に存在したが

どんどん、凶悪化していく異能犯罪を断罪するべきの声は大きかった



「いえ、彼には余罪もあるでしょうし 依頼主が気になります 普通の裁判でお願いします。」


魔女の弟子さんは静かに、そう答えた



ドライブスルー方式では、被害者や裁判所の負担は減らせるが、犯人に余罪があった場合や背景が複雑だった場合、それを見逃してしまう危険性は指摘されていた。


”酔っ払い同士が喧嘩して、はずみで相手が死んでしまった”


この程度のシンプルな事件なら、さっさと刑務所送り、もしくは死刑にするのが一般的だが



裁判を省略するには、やはり リスクも大きかった。



「弁護士費用かかりますよ? 時間もすっごく取られるし…」


聴取をしている婦人警官は、簡略裁判を勧めたいらしい

通常の裁判なら警察もしっかり捜査と証拠固めをしなければならない


新しい事件が次々と舞い込む警察署では慢性的人手不足

負担を減らしたいのだろうが

それが、丸わかりの態度は公務員としてどうなのか?



「弁護士費用は加害者負担を通します、彼の事情聴取 引き続きお願いします。」



「はぁ・・・」


婦警さんは深い溜め息をついた



「それから、この方の警護をお願いします 命を狙われているのは確かですし、奥さんの行方不明事件とも関係があるかもしれません、そちらの調査も」



「えっえっっ!? はぁ~~~~~~・・・」



正当な要求だと思うのだが、警察の方々に申し訳ない気分になる。




「ん?」



「どうしました? 棗先輩、女性見ながら鼻の下伸ばして」


「伸ばしてねえわ、知ってる術使いだ 確か、元傭兵の…」


「確かに、異能者リストにも登録されてますね」


「ふーん」


「早く、ご飯食べに行きましょうよ!もうペコペコです!!」



2人の刑事は警察署の外に出て行った。



私の身の安全を考え、私が警察署に行く事を提案したのは

古書堂の店員さんだ


だが 店員さんは、同行しなかった



警察に状況説明していれば、時間を取られる


異能者の場合は、例え被害者側であっても警察のマークが付く恐れがある。


結果、かなり動きにくくなる、店員さんの判断だった。


1人になって危険では?と、心配したが


敵が、僕一人にはどう対応するのか知りたい、死んだらスミマセン


と、他人事のように言っていた。


色々と準備する必要も出来た、という事だ



「トイレに行っても…?」


私は、残業が確定して どんよりしている婦警さんに質問した




トイレの洗面台で手を洗う、さすが警察署 なかなかに綺麗なトイレだ



鏡を見る


「大丈夫…大丈夫だ…」



自分に言い聞かせる、落ち着いて見れば

殺し屋なんかが差し向けられる状態、大丈夫ではない


急に身体が震えて来た



ガシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン





トイレの外から音がした。




何か、起きている…。



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