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黒い鴉は夜を啄む  作者: 月夜ノ歌
6/12

拝秘


   血は、闇を求め 闇は死を求める_。





美咲さんの占いが始まる

美咲さんの占いはとてもシンプルだ。

美咲さんの占いは、目を少し瞑り虚空を見るだけ


視たいモノの情報があれば、それに関連する何かが見える


恐ろしい事だ、占いには個人情報もクソもないではないか


占いが嘘か本当かわからない

そんな体裁を取っていなければ、占いを禁止する法律があるべきだ


しかし、この世界には安心な事に占いについての法律はしっかりとあった


占いで得た情報、視る相手の権力によっては

占い師は死刑にされる可能性もあった。


故に、視え過ぎる本物の占い師にはリスクがあった。



「はーっ、ほとんど何も見えねえわ…」




本物の占い師からの第一声はソレだった。



「調子が悪いのか、やる気がないのか、占いでは視えない領域にいるのか、どれですか?」



「全部当てはまるが、まあたぶん 少し面倒な事になってるんだろ コイツの奥様は」



美咲さんはマジメに答えている、本当に視えないようだ



「他の占い師にも言われました、何も視えないと…」



「そいつが本当に視えなかったのかは知らんが、見え辛いとこにいるのは確かだ」


ボリボリと占い師はボサボサの髪と、ダルダルの服から覗く腹を搔いている。



「冥界の第一層までは視たが、そこにもいない…死んでる可能性は低いかもな、5年以内なんだろ?」


冥界? 第一層??


「死後の世界の事です、通常なら死者の魂はそこに行きます。」


「なら、妻は無事なんですね!?」



冥界とやらにいないのなら、生きているということだ!



「いや、魂を何らかの方法で捕らえられていたりしたら話は別だ、しかも第一層から進んでる可能性も充分あるし…」


魂を・・・捕らえる・・・



「死んだ直後ならなぁ、第一の部分でほとんど見つかる しかし、死んだ奴の魂をどう扱うかは あっちが決める事だ 地獄送りにするも、輪廻転生させるも、魂を悪用するも 理は向こうにある。」



「一瞬でそんな…死後の世界を探せるモノなんですか?もっと時間をかければ…!」



「お前らには一瞬に見えただろうが、こっちは精神世界で霊界を視て時間の流れが違うんだよ」


マジ疲れたわぁ… 占い師はうんざりしている



「信じなくてもいい、アタシも全て視える訳じゃない だが、アンタと奥さんの記憶の一部は見たよ、海辺、笑顔、割とグレードの高い家の部屋、家具選びで揉めてるとこも」



「・・・・・!!」



「ありきたりな、誰でも当てはまる記憶か? だが、後はぼやけて見えんかったしなぁ まあ、インチキ扱いで結構さ…」



「美咲さんの言う通りなら、問題が起きてるって事ですよ 魂が囚われているとしても問題、生きていて視えないなら大問題だ」



単なる誘拐ではなく、本物の占い師にも視えない”何かをされている”。



私の顔は青ざめていく…



「怖がらせる事を言ってすみません、簡単な結界の中にいても霊視は躱せますから」


「アタシが生死も掴めない程、強力な結界を用意出来る奴なら厄介だけどな!」


ククク、占い師は不敵に笑った。



「拝、 秘…」



古書堂の店員さんは、手を合わせて呟いた



「送った鳩の情報のアップデートしました」



店員さんは、占い師の後ろの窓を開けて、鳩を迎え入れた



「あんた、私らに隠し事してるだろ」



いきなり、唐突に、急に、占い師の女は私の眼を真っすぐ見て そう言った。



「いいさ、そりゃ他人に隠し事を一つもしないなんて不可能だ 信じる気になったら話すといい、だが探し物をするなら情報は大い方がいいからなぁ それとも、最初から信じる気は無いとか…?」


「あっ・・・う・・・」


私は分かりやすく、動揺し 言いよどむ


「美咲さんは、こう見えて元警察なんですよ 占い師の警官なもんだから鋭い 嫌な人ですが、割と信用は出来ます。」



「つ、妻を探してるのは本当です!嘘じゃない!!」


嘘っぽい主張だ、自分でもそう思う



「んなことはわかってる、私に占わせた本題が全部嘘なら アンタは大物だ 敵わねえよ」



占い師は、何やらゴソゴソ辺りをまさぐっている どうやらタバコを探しているようだ



「美咲さんは警察時代に、いろいろあったっていうお決まりコースの人です、性格がここまでひん曲がる程の体験をしたんでしょう、でも魔女の家系でもある 力も本物です。」


「私は、ずっとこの性格だっ!!!!!!」



元警察、占い師、そして魔女… なるほど、大変な人物のようだ…

占いをしている、ボロボロアパートに住む ちょっと怪しい人物程度ではなかったのだ…。



「魔女は今も、一部では強烈に差別されてますからね 出来るだけご内密に…」



「チッ」



元警官の魔女は、かなりイライラしている 魔女の指摘とヤニ切れ その両方であるのは明確であった。



「まあ、こういう風に 人には底知れぬ秘密があります あえて話さないだけの事を含めて ボクだって貴方に全てを曝け出しません、気にしないでください。」



我々は、占い師の部屋を後にする事にする。



「待った、下の階にいるアタシの弟子を連れてけ 弱いが、使える」



弱いのに、使えるんだ…



「ありがとうございました、やっぱり美咲さんは嫌な人だけど良い人ですよ、これっ」



店員さんは、煙草を一箱投げた



バタン、扉が閉まる



占い師はタバコを咥えて、火をつける 火はライターでなく 勝手に付いた



そんな深い間柄でもない、あいつの紹介だから会っただけだが

煙草の差し入れなんて初めてじゃねえか…





「あのガキ、タバコが見つからないの知ってやがったな…化け物め」



ふーーーーーーっ、紫煙は虚空を満たす






「私より、”視えて”んだろ……」







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